31
「ソフィー、少しいいか?」
ミスティアについて話したい事はまだある。まあミスティアについてというより、ソフィーの家族についてだ。ソフィーもすっかり元気になった事だし、そろそろ話を振ってもいい頃合いだろう。
「はいー?なんですー?」
「ユフィはいつもあんな感じなのか?」
アルやソングの事も聞いておきたいが、まずはユフィについてだ。双子の妹だと聞いていたので、ソフィーと似ているとは思っていたのだが・・・あそこまでのぶっとんだ性格の持ち主だとは想像してなかった。
「そーですよー。」
「・・・そっくりだな?」
「はぁ!?どこがですか!?」
「あと仲良しなんだな?」
「だからどこがですか!!!アキさんは目が腐ってるんですー!?」
酷い言われようだ。
だがユフィに会って、そう感じたのだからしょうがないだろう。確かに2人は全然違うように見える。ソフィーは猪突猛進の暴走エルフ。ユフィは大人しくて物腰の柔らかい美少女エルフ。表と裏、明と暗。一見そんな感じがしなくもないが・・・実際はそっくりだと思う。
まず見た目。これは言うまでもなく瓜二つ。まあ双子なのだから当然だろう。そして性格。ソフィーは天真爛漫、ユフィは物静かで奥ゆかしい雰囲気だが、正直ユフィがあそこまで腹黒く、計算高いとは思わなかった。欲望に忠実と言う意味ではソフィーにそっくりだ。
「自分の欲望に忠実なところとかソフィーそのままだろ。」
ここぞとばかりにソフィーに仕返ししたり、アキやミルナ達を「お兄様・お姉様」としていいように扱おうとしたり、腹の中がコールタールのように真っ黒だ。
「それはユフィだけです!私は純粋でぴゅあぴゅあな美少女エルフですー!」
「どの口が言っているんだ、この駄エルフが。引っ叩くぞ。」
「むー!暴力は反対ですー!」
ソフィーが栗鼠のように頬を膨らませて叫ぶ。
「そういう自分の信じたことに一直線なところは純粋だとは思うけどな。」
「そうですよ!私は清廉潔白なソフィーさんですー!」
うん、それはない。
清廉潔白は欲がなく、行いが清く正しいと言う意味だ。この欲望まみれの駄エルフが清廉潔白なのだとしたら世も末。辞書で意味を調べて来い。
「もうそれでいいよ。」
ただ反論するのも面倒になってきた。もうソフィーは清廉潔白と言う事にして、とりあえず話を進めよう。
「それで・・・ユフィとは昔からあんな感じなのか?」
「そーですよ。いつもユフィは虐めてくるのです。私はおねーさんで偉いはずなのに全然おねーさん扱いしてくれないのです。なんでなんですかね?」
不満そうに首を傾げるソフィー。
「それは日頃の行いだろ。ユフィが言っていたが、ソフィー一体どれだけ悪さをしていたんだ?」
ユフィの話だと、ソフィーは性格を変えてから周囲に迷惑をかけてばかりだったと言う。だがソフィーはそこまで悪戯や悪さをするような子ではない。確かに猪のように暴走するし、鬱陶しいが、それは心を許しているアキやミルナ達に対してだけ。普段は静かで大人しい。だから街の男達からは絶大なる人気があり、滅茶苦茶モテる。アキと出会う前もよくナンパされていたようだし、そんなソフィーが悪さをするなんて想像がつかない。
「してないですー!あれはユフィの言いがかりです!」
ソフィーがぷりぷりと怒る。
ちょっと可愛い。
だが本当にソフィーが何もしていないのなら、ユフィがあそこまで必死に仕返ししようとするだろうか。つまりソフィーは無意識に何かをやっていた可能性が高い。ちなみにソフィーに何をされたのか、ユフィ―は教えてくれなかった。ソフィーの痴態がわかる色んなところへ案内してくれたのはいいが、肝心の被害については話さなかった。だからどちらの言っている事が本当なのか判断つかないのだ。
「でもソフィーの代わりに色々と怒られたと言っていたぞ。」
それにユフィは嘘を言っているような口ぶりではなかった。
「そ、それは・・・なんといいますか・・・」
「とりあえずソフィーがした事を1つ言って見ろ。俺が判断してやる。」
ソフィーの言い訳をあーだこーだ聞いても仕方ない。ここはソフィーの話を聞いて客観的に判断するのが一番だろう。
「えーっと・・・」
ソフィーが言い辛そうに口籠る。
もうその反応だけでわかる。多分、いや間違いなくソフィーは何かやらかしている気がする。まあソフィーだしな・・・