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ソフィーが凹んだ振りをしていた事でミルナ達が激怒した。せっかく慰めたのにどういう事なのだと、アキの目の前でソフィーへの説教が繰り広げられた。まあソフィーに関しては完全に自業自得なので同情の余地はない。ミルナ達が怒るのも当然と言えるだろう。
ただソフィー、そしてミルナ達に対してアキは1つだけ言いたい事がある。
「おい、お前ら・・・いい加減自分の部屋に帰れ。」
そう、ミルナ達は何故かアキの部屋で騒いでいるのだ。何故自分達の部屋でやってくれないのか。非常に迷惑だ。
普段なら宿に泊まる時は大部屋を取って全員で一部屋に泊まるのだが、ミスティアの宿でそれは難しかった。民宿のようなこぢんまりとした宿にアキ達全員が泊まれるような部屋はさすがに無かったのだ。そもそもこの宿には15部屋くらいしかなく、アキ達の貸し切り状態・・・というか全部貸し切った。その方が余計な面倒事が起こらないと思ったし、宿の主人も貴族であるアキや王女であるベルを宿泊させると言う事で、快く承諾してくれたのだ。
まあ顔を引き攣らせていたから快くとはちょっと違うかもしれないが・・・とりあえずアキ達は宿を貸し切り、部屋割りを決め、各自部屋でのんびりしていた。そしたら5分も立たずとしてソフィー、そしてミルナやエレン達が突撃してきて・・・今に至ると言う訳だ。
「いやですわ!!!」
ミルナがはっきりと言い切る。
「なんでだよ。狭いんだから帰れよ。」
さすがに1人用の部屋に12人もいるのは息苦しい。しかもその状態で騒ぐのだからたまったものではない。
「まあアリアだけは居てくれ。」
「はい。」
アリアはアキのメイドだから例外だ。紅茶を淹れてくれたり、軽食を用意してくれたりするので、いてもらった方が何かと助かるしな。
「あ、セシルもいいぞ。」
「え?私もですか?何か用事でもありましたっけ?」
セシルが不思議そうに首を傾げる。
「ないぞ。」
「え・・・じゃあなんで居ていいですか・・・?」
セシルは何かを察したのか、頬をひくつかせながら聞いてくる。
「当然もふもふ要因だ。」
「や、やっぱりですかああああ!!!」
自分の兎耳をギュっと掴みながら叫ぶセシル。
「まあ嫌ならエリザかリオナに・・・」
今日は兎の気分だったからセシルに声をかけただけで、正直もふもふするのはリオナやエリザでも構わない。1日1モフはアキの大事な日課だ。
「ちょっとアキさん!嫌とはいっていません!」
「お、おう、そうか・・・」
セシルがもの凄い剣幕で詰め寄ってきたのでちょっとたじろいでしまった。口で嫌とは言いつつも、ちゃんともふもふさせてくれるらしい。
「じゃあとりあえずミルナ達は自分の部屋へ戻れ。」
「だからそれは嫌ですわ。」
「なんでだよ。」
「アキさんとごろごろするのが私達の日課だからですわ!」
胸を張ってドヤ顔で宣言するミルナ。
「・・・理不尽だ。」
「あら、アキさんこそ『日課のもふもふ』とか変態な事言っているではありませんか。もし私達にお部屋へ戻れというのであれば、アキさんも日課のもふもふは無しですわよ?」
「何故だ・・・!」
「当然ですわ。」
酷過ぎる。何故ミルナはアキの1日の楽しみを奪うのか。あと変態とか暴言が過ぎるだろう。
「この残虐非道おっぱいおばけ!!!」
「ちょっと!?どっちがですの!?アキさん!暴言!暴言はやめてくださいませ!!!」
「俺の日課を奪うのは理不尽だろ!このおっぱいモンスター!!」
「私達の日課をさせてくれないのですからお互い様ではないですの!!あと私はおっぱいおばけでもおっぱいモンスターでもありませんわ!ミルナです!いい加減にしてくださいませ!!!」
そして何故かミルナにがっつり怒られた。おかしい。ソフィーが説教されていたはずなのに、いつの間にかアキが怒られる羽目になっているではないか。
「何故だ・・・おかしい・・・」
「おかしくありませんわ!!!」