26
「お兄様、私達は双子です。」
ユフィが改めて宣言する。
「うん、・・・そっくりだもんな。」
「はい、性格は全然違いますが、見た目はそっくり・・・らしいです。」
どうやらユフィにしてみたら、見た目も全然違うらしい。確かソフィーも同じような事を言っていたな。アキからしてみれば2人はそっくりだし、性格もなんだかんだで似ているところがあるのにと思ってしまうのだが。
「結構似てると思うけど・・・」
「「全然違います。」」
ユフィとソフィーが同時に声を揃えて言う。
「ほら。」
「姉さん、真似しないでください。」
「ユフィが真似したんですー!!」
「まあ落ち着け。」
また姉妹喧嘩が始まりそうだったので、アキが間に入って止める。
「それでユフィ、一体何をされたんだ?」
「はい・・・つまり周囲の人にしてみれば、私達は似ているらしいです。そしてそれをいい事に姉さんは私に酷い仕打ちをしたのです。お兄様、姉さんが昔は引っ込み思案だった事は知っていますか?」
「それは聞いた。」
「はい。その頃は私の方が活発な少女だったんです。ですがある時を機に・・・姉さんは『アレ』になりました。そして色々悪さをしたり、迷惑をかけたり・・・それはもう自由奔放な馬鹿エルフになってしまい・・・」
それが今のソフィー、つまり駄エルフの誕生と言う訳だ。
「ただ姉さんが急に変わったので、誰もそれが姉さんだと気付かなかったのです。」
なるほど、ユフィの話が見えてきた。
「つまりソフィーの悪さを全部ユフィのせいにされたと・・・?」
「ええ。何もしてないのに怒られる毎日でした・・・しくしく・・・」
わざとらしく泣くユフィは鬱陶しいが、これはさすがに可哀そうだとユフィに同情してしまう。というかソフィーは何をやっているんだ。ある意味仕返しされるのも自業自得だろう。
「ソフィーは『やったのは自分です』って言わなかったのか?」
「はい・・・姉さんは『ラッキーですー!』とさらに調子に乗るだけでした。」
「ソフィ、それは・・・どうかと思うぞ?」
「し、仕方ないのです!だって怒られるのは嫌だったのですー!」
私は悪くないのですと必死に言い訳するソフィーだが、どう考えてもソフィーが悪い。
「姉さん?そのせいで私が酷い目に遭うのはいいと?」
ユフィが氷のような目でソフィーを睨む。
「ひっ・・・そ、それは私の意図したところではないといいますか・・・」
「でも姉さんは私の事を助けてくれませんでしたよね?その辺はどうお考えで?」
「私の代わりに怒られてくれる優しい妹だなーって・・・」
この駄エルフ、手遅れだとは思っていたが・・・そんな昔から既に手遅れだったのか。どおりでアキの手には負えないわけだ。
「はい、優しい妹です。だからその時の『お礼』としてお兄様に姉さんの昔話をしてあげているのですよ。わかりますか?わかりますよね?」
「ひっ・・・」
ソフィーが抱き着くようにアキの背中に隠れる。
「姉さん?わ・か・り・ま・す・よ・ね?」
「は、はぃ・・・わかりますですー・・・」
「よろしい。それではお兄様、次に行きましょう。次もとても面白い場所ですよ。期待してくださいね?」
そう言ってユフィは踵を返し、こちらですと歩き始める。
「ソフィー、自業自得だから今回は諦めろ。」
そんなユフィの後姿を見つめながら、ソフィーを慰める。
「うー・・・だから来たくなかったのですー・・・」
「まあ何を見てもソフィーの可愛い失敗談くらいにしか思わないから大丈夫だ。」
「それなら・・・いいですけど・・・嫌いにならないです?」
「ならない。何があっても俺はソフィーの味方だぞ。」
アキがそう言うと、ソフィーは嬉しそうにはにかんでギュッと抱き着いて来る。
「えへへ・・・ならいいです。アキさんでよかったです。」
なんとかソフィーを慰める事が出来たとホッとしていたら、アキ達が後をついてきていないと気付いたユフィがもの凄い勢いで戻って来た。そして・・・
「こらっ!姉さん!何お兄様とイチャイチャしているんですか!いきますよ!そんなに『あの秘密』までばらされたいんですか!!!」
ソフィーの耳を摘まみ上げ、強制的に連行していった。
「ひっ・・・い、痛いですー!!アキさーん!!!」
どうやら姉妹カーストはユフィの方が絶対的に上らしい。
「まあ・・・俺達もいくか・・・」
連れ去れていくソフィーを眺めながらミルナ達に声を掛ける。
「そ、そうですわね・・・」
「ええ・・・」
ミルナやベル達は相変わらず頬を引き攣らせている。やはりミルナ達もアレに口を挟む勇気はないらしい。