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「うぅ・・・アキさん・・・負けましたー・・・」
「・・・なんでだよ。」
ユフィとソフィーの姉妹喧嘩は何故かユフィが勝ったらしい。というかソフィーはSランク冒険者のはずなんだが・・・何で冒険者でもないユフィに負けているんだ。
「ユフィは精神攻撃が強いのです・・・」
「その前に腕力でねじ伏せればいいだろ。」
「無理ですー、私の精神力はもう0なのです・・・」
おかしい、ソフィーは鋼の精神力を持っているはずだ。いつもアキがどれだけ説教しても、秒で復活するのがソフィーなのに。
「ユフィ、どんな手を使ったんだ?」
一体何をすればソフィーをここまで凹ませる事が出来るのだろう。
「ふふ、いくらお兄様でもそれはお教えできません。」
「なんでだよ。」
「姉さんの名誉の為です。」
ここまでおねしょだとかお漏らしだとか、散々ソフィーの痴態を暴露して辱めて来たユフィなのに、これ以上何があるというのか。余計に気になってきた。
「おねしょ以上の逸話があるのか?」
「ええ、それはもう。」
「それは是非教えてくれ。」
今後ソフィーを説教するのに使えそうだ。
「アキさん!それ以上は駄目ですー!聞いてはいけません!!もしそれを知られたらアキさんを殺して私も死にます!!!」
ソフィーの秘密を聞き出そうとしたら、ソフィーが慌てて止めに入ってきた。
しかし無理心中はさすがに大袈裟すぎるだろう。
「いやいやそんな大袈裟な・・・」
「本気です!私は本気ですー!!」
ソフィーの目が笑っていない。
「そこまでか・・・?小さい頃の失敗談なんて誰でもあるだろ。」
むしろソフィーのような美少女の失敗談なんて微笑ましいものだろう。小さい頃におねしょしましたとか言われても可愛いとしか思えない。
「絶対ダメですー!!!」
「もし知ってしまったら?」
「アキさん、私と一緒に死にましょう・・・!!」
どうやら本気らしい。
「・・・わかった。諦める。」
「ほんとです・・・!?」
「ああ。」
さすがに命を差し出してまで知りたくはない。対価が重すぎる。
「よかったですね、姉さん。」
「はいですー・・・」
ソフィーが心底安心した表情を浮かべる。
「それで姉さん?次はどこに案内すればいいんでしたっけ?」
ユフィが悪魔的な微笑みを浮かべながらソフィーに尋ねる。
「アキさん!次は私がはじめてお漏らしした場所を案内しますです!」
ソフィーが涙目になりながら宣言する。
「お前・・・悪魔か。」
「酷いです、お兄様。こんな美少女に悪魔なんて・・・しくしく・・・」
「いや、悪魔だろ。美少女なのは認めるがな。」
まあソフィーの双子の妹なのだから美少女なのは当然だ。
「ふふ、ありがとうございます。それではソフィアルナ姉さん、いきましょうか?」
「はいですー!ユフィ、案内よろしくお願いしますです!」
しかしあのソフィーがありえないくらいに従順だ。さっきまであれだけ騒いでいたのにこの変わりようはなんなんだ。怖い。というかあっさりとソフィーの手綱を握り、手の平でころころ転がすユフィが恐ろしい。
「ソフィー、無理しなくていいぞ?」
さすがにソフィーが可哀そうになってきたので、そっと頭を撫でてやる。
「うぅ・・・アキさーん・・・」
こんなに意気消沈したソフィーを見るのは初めてだ。もしかしてソフィーが実家へ帰りたくなかった理由は、両親に顔を合わせ辛かったとかではなく、ユフィがいるからだったのかもしれない。
「ユフィ、うちのソフィーをあんまり苛めないでくれ。」
「お兄様?私にはそんなつもりはないんですが・・・?」
悲しいですと目を伏せるユフィ。
「見え見えの嘘はやめろ。そんなつもりにしか見えないんだが?」
あの暴走エルフのソフィーがこれだけ従順になっている事自体、あり得ない事なのだ。ミルナ達も「どういうことですの・・・」と頬を引き攣らせ、ユフィに恐怖を感じているくらいだしな。
「あら、バレました?」
くすくすと笑うユフィ。
「何を今更・・・というかなんでそこまでソフィーを目の敵にするんだよ・・・」
ソフィーとユフィは見た目もそっくりの双子。そして双子は仲良しだとよく聞く。だから2人もてっきり仲睦まじい姉妹だと思っていたのだが・・・今までのやり取りを見る限り、犬猿の仲にしか見えない。
「まあ・・・姉さんには昔、色々と酷い目に遭わされたので仕返しです。」
「・・・ほう?」
「気になります?」
「そりゃ気になる。ソフィーに何をされたんだ?」
「ふふ、姉さんの秘密は教えられませんが・・・私が姉さんに何をされたかはお教えしましょう。」
そしてユフィが昔話を話し始める。