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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十二章 故郷巡り②
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19

「ミルナさん達のおかげでソフィアルナがここ数年どこで何をしていたかわかりました。いつもうちの娘がご迷惑をおかけしてすいません。」


 ミルナとの話を終えたソングがお礼と謝罪をしている。


「そんな事ありませんわ。私もソフィーには迷惑をかけていますのでお互い様です。彼女は素晴らしい仲間ですわ。」


 誇らしげな顔のミルナ。


「・・・ミルナは迷惑しかかけてないけどな。」


 確かにミルナの言っている事は正しい。正しいんだが・・・ミルナが良い事を言っているのはなんかムカつく。何故だかわからないが、なんか癪に障る。


「アキさん!なんでそう言う事を言うんですの!それに今、私は良い事言っていたんですのよ!変な茶々を入れないでくださいませ!!!」


 アキの呟きを聞き漏らさず、的確に突っ込んでくるミルナ。


「ほら、ミルナが良い事を言ってるのはなんか嫌だろ?」

「意味が分かりませんわ!?嫌ってなんですの!嫌って!!!」


 カッと目を見開き、アキに詰め寄ってくるミルナ。ソフィーの両親の前だと言う事は忘れているらしい。だがミルナはこうでないとミルナじゃない。


「ふふ、みなさん、ほんとうに仲良しなんですね。」


 楽しそうに笑うソング。


「あ・・・え、こ、これは違うんですの!いつもの私は物静かで無口なんですわ!」


 ソフィーの両親の前で取り乱した事に気付き、必死に言い訳を始めるミルナ。だが今更それは無理のある言い訳だ。しかもソフィーの両親に淑女アピールをしてもしょうがないだろうに。


「それは嘘です。」

「ちょ、ちょっと!アキさんはいったい誰の味方なんですの!!!」

「うーん、しいて言うなら・・・リオナかな?」


 理由はない。丁度目の前にリオナがいたので適当にリオナを名指ししただけだ。


「リオナ!どういうことですの!!」


 そしてミルナの怒りの矛先がリオナに飛び火する。


「知らないよ!?アキ!変な事に巻き込まないでよ!私は悲しいよ!!!」


 そんなギャーギャーとじゃれ合うミルナやリオナ達を穏やかな表情で見守るアルやソング。きっとミルナ達の様子を見て安心したのだろう。ソフィーは元気にやっていたのだと。まあアキもミルナ達の馬鹿騒ぎを見ると癒されるからその気持ちはわかる。この子達は見ているだけで楽しい。これもある意味彼女達の才能だ。


「シノミヤ侯爵、今後もソフィアルナを宜しくお願いします。」


 アルが何度目かわからない頭を下げてくる。


「いえ、こちらこそです。それにこれからはお二人はお義父さん、お義母さんになるのですからシノミヤ侯爵なんて堅苦しい呼び方はしないでください。」


 シノミヤ侯爵なんて呼び方はさすがに遠慮したい。あまり呼ばれ慣れていないというのもあるし、なんか偉そうに聞こえるから嫌だ。


「そうですか・・・ではアキさん・・・でいかがでしょう。」


 アルがおそるおそる聞いてくる。


「はい、是非それでお願いします。」


 アキが頷くと、どこか安堵の表情を浮かべるアル。やはりいざ貴族の名前を呼ぶとなると勇気がいるのだろう。もしアキが性格の悪い貴族だとしたら、これが罠の可能性もあるからな。まあそんな貴族がエスぺラルドにいたらベルがとっくに粛清しているだろうが。


「それではアキさん、そろそろお宿へご案内しますか?」


 ソングがこれからどうしますかと尋ねてくる。


「そうですね・・・それでもいいですが、まだミスティアの町を見られてないので、少し見てみたいのです。」


 一旦宿に向かうのも悪くはないが、まだ昼過ぎだし、少しミスティアの町を散策してみたい。ソフィーが生まれ育った故郷がどんな町なのか気になる。


「では町を案内しつつ、お宿へ案内しましょう。」

「はい、是非お願いします。あ、その前に・・・ソフィーには双子の妹がいると聞いたんですが?」


 そう言えばまだ妹のユフィルナを見かけていない。ここにいるのはソフィーの両親と村長だけ。もしソフィーの妹がいるのであればさすがに挨拶はしておきたい。


「そういえばそうでした・・・アキさんに失礼がないよう家で留守番させていたんですが、アキさんはソフィアルナの婚約者ですし紹介はするべきですね・・・」


 思い出したかのように言うソング。


「ソング、呼んで来たらどうだ?」


 アルがソングに言う。


 よかった、どうやら呼んできてくれるようだ。


「はい。ここはユフィルナに町を案内させましょう。若い人達でわいわいしてもらった方がいいでしょう?」

「おお、それもそうだな。ソフィアルナもユフィルナに会いたいだろうしな。」


 この2人も十分若く見えるのだが、一体幾つなのだろう。


 ちなみに妹のユフィルナに会えると聞いたソフィーだが・・・


「えー、べつにいいですー」


 相変らず部屋の隅で不貞腐れながらどこかめんどくさそうな表情を浮かべている。


 それにしてもソフィーが中々復活しない。アキが説教してもまったく凹まないのに、何故だ。やはり両親に怒られると精神的にくるのだろうか。


「お義母さん、あとでソフィーに効果的な説教の仕方を教えてください。」

「あ・・・確かに、それは教えておくべきですね。わかりました。」


 ソングが快諾してくれた。きっと何かコツでもあるのだろう。


「ま、待ってくださいですー!アキさんー!そんな余計な事は教わらないでくださいですー!!!お願いします!!!」


 不貞腐れていたのが嘘のように、慌てて懇願してくるソフィー。


 やはりアキに何か知られたくないコツあるのだろう。これは是非習得したい。

挿絵(By みてみん)

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