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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十二章 故郷巡り②
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 その後、アキはミルナ達を呼んできて、ソフィーの両親に紹介した。本来ならソフィーが紹介するべきところなのだろうが、両親に怒られたソフィーは部屋の隅で不貞腐れていたので、しょうがなくアキが紹介する事になったのだ。


 そしてミルナ達を紹介した後、ミルナがソフィーとの出会いについて、そして今まで何をしていたのかを、アルとソングに説明した。ソフィーはアルやソングに何の連絡もしていなかったので、娘がミスティアを飛び出し冒険者になっていた事なんて知らなかったらしく、滅茶苦茶驚いていた。まあ自分の娘が冒険者になるとはさすがに思わなかったのだろう。ただミスティアのような田舎町には冒険者協会の支部などなく、冒険者もいない。だからアル達は「そのSランク冒険者・・・?というのは凄いのでしょうか?」と首を傾げていた。冒険者が危険な職業だとは知っていたようだが、冒険者のランク制度まではさすがに知らなかったらしい。


「Sランクともなれば一生安泰ですわ。依頼がは・・・稼ぎが・・・」


 Sランクの冒険者がどれだけ凄いのか、アル達に一生懸命説明するミルナ。


「そ、そうなんですね・・・!」

「凄いですね・・・」


 その話を聞いて驚きを隠せない様子のアルとソング。


「へー、そうなのか。」


 だがミルナの説明はわかりやすい。Sランク冒険者が凄いとアキにもわかる。


「何故アキさんまで感心しているんですの!?」

「だって知らなかったし。」

「知っていてくださいませ!アキさんもSランクでしょう!」


 ミルナが「何故ですの!」と怒るが、そんな事を言われても困る。知らないものは知らない。


 確かにアキもSランク冒険者だ。ただSランクになったのはついで。ミルナ達にイリアを探して欲しいと言われ、Sランクになった方が色々と情報収集が捗るからなっただけで、別にどうしてもなりたかったというわけではない。まあ冒険者自体は面白そうだったのでミルナ達と出会わなくてもなっていた可能性が高いが。


 Sランクは冒険者の最高位。当然凄いのはわかる。ただSランク冒険者の稼ぎがどれ程なのかなんて正直知らない。金は爺さんの商会経由でいくらでも稼げるからSランクの稼ぎを気にする必要がない。それにアキにはベルという婚約者がいる。つまり社会的地位の頂点である王女が側にいるのだ。よってSランクの地位がどの程度のものかもイマイチわからない。


「だって知らないもーん。」

「『もーん』ではありませんわ!今更何を言ってるんですの!!」

「大丈夫だ。今ミルナが説明してくれたからばっちりだ。」


 ちなみにミルナの説明によると、Sランク冒険者の社会的地位は男爵と同じくらいらしい。そして稼ぎは、依頼を受ける頻度にもよるが、一般的な平民の月収の数百倍なのだとか。


 だがそれを聞いても正直「ふーん」くらいだ。今のアキは侯爵。つまりSランク冒険者より地位は高いと言える。それにいくらSランク冒険者が稼ぐと言っても、エスタートの爺さん程は稼げないだろう。あのレベルの金持ちが知り合いにいると、「稼ぎが一般的な月収の数百倍ですよ!」とか言われてもさほど感動はない。あの爺さん、一般的な平民の月収の数千倍以上はゆうに稼いでいるはずだからな。


「あの・・・私、前にアキさんに説明したとおもうんですが・・・・」


 近くにいたセシルが兎耳をしょんぼりさせながら呟く。


「あれ、そうだっけ・・・?」


 冒険者協会の受付嬢だったセシルなら、この辺は当然知っている知識。そして確かにアキがSランクになった際、セシルにそんな説明を受けた気がしなくもない。


「悪い。覚えてない。」


 だがあの頃はイリアを探したり、ベルと出会ったり・・・で色々とばたばたしていた。細かい事は正直あまり覚えていない。


「説明しました!何で忘れるんですかー!」


 頬を膨らませて拗ねるセシル。


「ごめんごめん。」

「むー・・・」

「でも覚えていなくても俺にはセシルがいるからいいかなって思って。」


 言い訳と言われるかもしれないが、これは本心だ。アキは結構記憶力は良い方なので、一度聞いた事や大事な事は基本的に忘れない。だが覚えなくていい事は覚えない性格だ。そもそも脳にはキャパシティがあるのだから、余計な事で埋めたくない。まあ冒険者の事は余計な事とは言えないが、いつでも聞けるセシルが側にいるのだから覚える必要性がなかった。知りたくなったらセシルに聞けばいいだけだしな。


「なるほど・・・そ、それなら・・・ゆるします・・・えへへ。」


 セシルが嬉しそうにはにかむ。


「あの、すいません。それでソフィアルナの事なんですが・・・」


 アルが話の続きをお願いしたいのですがと申し訳なさそうに言ってくる。


「すいません、脱線してしまいました。」


 アルに軽く頭を下げる。


 ここはミルナにビシっと言ってやるとしよう。


「ミルナ、話を脱線させちゃダメだろ。早く続きを話してあげなさい。」

「なんで私が悪いみたいになってるんですの!!!アキさんせいですわ!!!」


 何故かわからないがミルナに怒られた。


挿絵(By みてみん)

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