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「アキさん、ちょっと出歩く度に女性を連れてこないでください。」
「なんですぐ女の子落としてくるんですかー!」
「僕達では不満ってことなのかな?」
「あんたはいつもいつも!どういうつもりなの!」
既に30分くらい同じような事を言われ続けている。いつも通りうちの子達が満足するまでは話を聞いてやることにする。基本アキはこういう時は聞いているだけで、何か言う事はない。彼女達は文句を言いたいだけでスッキリしたら満足してくれるからだ。
「アキさん、黙ってないで何か言ってくださいです!」
ただ今日に限ってはソフィーがアキに意見を求めてくる。
「ソフィーは今日も可愛いね。」
「えへへ……って誤魔化さないでください!」
今日は騙されてくれないようだ。
「大体、アキさんは人に仕草や言動を注意しろとか、勘違いされるから気をつけろとか言うくせに、人の事言えるんですか!外を歩く度に綺麗な女性を見つけては口説いて、落として。わざとなんですか?何がしたいんですか?世界中の女性を手に入れないと気が済まないんですか?そうなんですか?わかっていますか、アキさん。そもそもアキさんには自覚が足りないんです。ちゃんと私の事考えてくれているんですか?いつまでも私が優しいと思わないでください。嫌いになっちゃいますよ?いいんですかー!」
ソフィーがいつも以上にねちねちと攻め立ててくる。このモードに入ると当分止まらない。平均的に1時間くらいはかかる。しかもその間、ソフィーは自分で言っている事を半分くらいはわかってない。多分勢いだけで言っているんだと思う。ただ今日は意見を求められたので言い返しておく。いい機会だしうちの子達にアキも「お話」しておこう。
「そっか、ソフィーに嫌われちゃったか……。」
寂しい雰囲気を装ってソフィーに呟く。
「ち、ちがいます!今のは違うんです!嫌いになるなんて絶対にないです!」
とりあえずソフィーの頭に一撃落として黙らせる。
「あぅ……だからなんで叩くんですかー!」
ソフィーの文句はスルーして、アキは立ち上がり全員に宣言する。
「よし、今度は俺の番だ。お前らそこに座れ。アリアとセシルもだ。」
早くしろとアキが言うと素直に座るミルナ達。何故かエリスも座っている……が丁度いい。
「エリスの事は悪かった。それは謝ろう。でも1つだけ言わせてくれ。皆チョロすぎるんだよ。なんでだよ、ほんとに。なんで何もしてないのにすぐ懐いたり慕ったりしてくれるんだよ。」
アキは最近の悩みの種であった皆のチョロさについて説教する。
「ミルナ。」
「は、はい。」
「ミルナは男に優しくされたら惚れるのか?」
「そ、そんなことはないですわ!」
「エレンは構ってくれたら好きになるのか?レオは女の子扱いされたら懐くのか?アリアは相談にのったらメイドになってくれるのか?エリスは互角に戦える男ならだれでもいいのか?セシルは耳を優しく撫でられるだけでいいのか?」
みんなそんなわけないと否定する。
「そしてソフィー。」
「はい……。」
「ソフィーは下心なしに可愛いって言われただけで惚れるのか?」
「ち、ちがいます……!」
改めてアキは溜息をつく。
「本当に最近の悩みでな。俺の世界だと、別に俺がしている事は普通なんだよ。女性に対しての扱いはこれが普通なんだ。特殊な事は何もしてないし、むしろ下手なほうだ。」
エリスにも迷い人の事は伝えた。どんどんアキの秘密が拡散している気がするが、全員信用できる人物なので問題ないだろう。
「でもだからと言ってこの世界の男のような乱雑な扱いは出来ない。そういう風に両親に、世界に育てられたから。だから俺はいつも通りに接しているだけなんだ。勿論皆みたいな可愛い女の子に好かれて嬉しくないわけがない。でも普通にしているだけで何もしてない、する気がないのに慕われる俺の困惑がわかるか?」
皆は黙って聞いていてくれる。皆に言ってもどうしようもない事だけど、それでもここ数日悩んでいた事を言えたので少しスッキリした。
「あー、スッキリした。風呂入ろう。」
アキは軽く伸びをして話を切り上げる。
「アキさん、なに1人でスッキリして終わらそうとしているんですの?」
そんなアキにミルナが待ったをかける。綺麗なアクアブルーの髪の毛を靡かせながらアキに近づいてくる。
「え、なに?」
「つまりアキさんは『俺が女性を落としてしまうのは仕方無い事だ、俺は悪くない』そうおっしゃっているんですね?」
ミルナがアキを押さえつけながら優しく微笑む。
「いや、そういう意味じゃないんだけど。」
「なるほど。『これからもどんどん女の子を落としてくから、諦めろ』ということですね。」
アリアがさらにミルナの解釈を補足する。そしていつの間にか再度ソファーに座らされて押さえつけられている。
「アキさん、今からもう1度お話ですねー。」
ソフィー含め他の皆もにこにこしている。エリスだけはよくわからない顔をしているが。
「あれ?おかしいな。俺の話で丸く終わる予定だったのに。」
そんなことを呟いていると、ミルナとアリアが耳元でそっと囁いてくる。先ほどの威圧感が嘘のように優しい声色で。
「大丈夫です、皆ちゃんとわかっていますわ。」
「少し文句言いたいだけなんですよ。言えば満足するので。付き合ってください。」
しょうがないか。それになんだかんだ理解のあるいい子達だ。
「アキさんで普通以下とか……私達が向こうの世界に行ったら大変なことになりますね?」
アリアが呟く。
「行かさないけどね。」
「ふふ、行きませんわ。それに多分その世界に行ってもきっと私達はアキさんを慕います。さすがにそこまでチョロくはないですわよ?」
そう思う事が一番幸せだろうな。たらればを考えてもしょうがない。しかしこの世界だと、気軽に女性と接するだけで予想外の事が起きすぎる。エリスの事も軽口に乗ってやらかしてしまったわけだし、少しは気を付けよう。




