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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十二章 故郷巡り②
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「よ、ようこそいらっしゃいました・・・王女殿下にシノミヤ侯爵・・・!」

「あー、はい。ありがとうございます。」


 深々と頭を下げるソフィーの両親、そしてミスティアの村長。


 というか・・・どうしてこうなった。


 とりあえず最初から整理しよう。


 アキ達を乗せた馬車はソフィーの案内で無事にミスティアへ到着した。


 そもそもこれがいけなかった。


 アキ達の馬車は王族御用達の馬車だ。いくらベルが豪華絢爛ではない普段使いの馬車を用意してくれたとはいえ、普通の馬車に比べてしまうと雲泥の差。貴族か王族が乗っているのは誰が見ても一目瞭然だ。


 そしてそんな馬車が森の中にある小さな町にやってきたらどうなるかは容易に想像つくだろう。当然大騒ぎになる。「誰が来たのか!」「村長を呼んで来い!」など、アキが馬車を降りる前からそんな状態だった。


 この状況をなんとかしようと、ソフィーに先に降りてもらい、なんとか場を収めようとしようと試みたのだが、これも悪手だった。ソフィーはどうやら村長やら両親に「王女様を連れてきたです!」「あと私の婚約者もいます!侯爵ですー!」と誇らしげに言いふらしたらしく、さらに大騒ぎになった。あの駄エルフ、何やってんだ・・・と頭を抱えたが、よくよく考えればこれがソフィーの作戦だったのだろう。


 ミルナ同様、親の反対を押し切り、町を飛び出したソフィー。まあ親と喧嘩別れしたわけではないが・・・家出と大差ないだろう。だから両親に怒られる前にベルやアキの名前を出し、権力を振りかざしたというわけだ。


 無駄に頭の回るエルフで困る。まあ今回はアキが少々短絡的だった。いつもこの馬車で旅をしていて、ここまで大騒ぎになった事がないので、気づかなかった。だがアキ達は王都など、大きな街にしか行っていなかったからそれも当然なのだ。大都市であれば貴族もいるし、このくらいの馬車で騒ぎになる事はない。だが田舎町に来たら大騒ぎになる事くらいは少し考えればわかったはず。


 完全にアキのミスだ。というかミルナ達は全員こうなる事に気付いていたようだ。それなら言えよと思ったが、どうやらこの子達はアキがVIP扱いされるのが嬉しいらしい。村長に丁重に扱われるのを見て満足そうにしていた。アキとしては仰々しいのは嫌だったので出来れば言って欲しかった。それにミルナ達ならアキがこれを嫌がるのは絶対にわかっていたはず。まあそれをわかった上でこの子達は何も言わなかったのだろう。ミルナ達はアキの不利になる事は絶対しないし、なりそうなら注意してくれる。だが今回の場合はただ丁重にもてなされるだけ。アキの精神的疲労以外、なんら不利益はない。いつも弄られているから偶にはやり返そうという魂胆でもあるのだろう。


 とりあえずそんな事があったわけだ。


 そして現在、アキ達は村長宅へと案内され、歓待を受けている。


「アイリーンベル・エスぺラルド王女殿下・・・本日は一体どのようなご用件で・・・」


 おそらく初老くらいであろう白髪の男性がおそるおそるベルにお伺いを立てる。彼がミスティアの町の村長、ヤクラドル、通称ヤック村長らしい。


「あ、そんな畏まらなくて大丈夫です。そもそも王女として来ているわけではありません。私はこちらのアキさんの婚約者でして・・・アキさんの用事に同行しているだけです。」


 そう言って隣に座っていたベルがしな垂れかかってくる。


 一応言っておくが、これは別にイチャイチャしているわけではない。あくまでベルは付き添いで、アキに全権があるとアピールする為にしている事だ。つまりアキの言葉=ベルの言葉だと相手に分からせる為、取っている行動・・・らしい。ベルにはそう説明されたが、本当かどうかはわからない。ベルフィオーレの文化、というか王族の礼儀作法なんて知らないし、ベルの言う通りにしているだけ。


「そうなんですね・・・ではシノミヤ侯爵、申し訳ありませんがご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか。」


 ヤック村長が改めてアキに聞いてくる。


 そんなヤック村長の隣にはソフィーの両親が座っている。最初は村長だけで応対すると言われたのでアキがお願いして同席してもらったのだ。


 そしてベルがアキに発言権を譲ってくれたので、あとはアキがソフィーとの婚約の話をするだけだ。大騒ぎになった事を除けば、まあ予定調和といえよう。


「今日はソフィーさんのご両親にご挨拶にお伺いしました。」

「はいー!そう言う事ですー!」


 ソフィーが嬉しそうに叫ぶ。


 当然ソフィーにも同席してもらっている。


 ちなみに他の子達は馬車で待機だ。大勢で押しかけて圧をかけたくはなかったし、これ以上の騒ぎにしたくなかった。まあ話し合いがどうなるのかミルナやエレンは興味津々で、同席したがってはいたが、アキがお願いすると素直に引き下がってくれた。


「こ、こら!ソフィアルナ!」


 ヤック村長が許可もなく発言したソフィーを叱責しようとしたので、アキは構いませんと村長を諫める。


「いいんです。ソフィーさんはベルと同じく私の婚約者でして・・・そのご挨拶をさせていただきたく、本日こうして足を運んだんです。」


「な、なるほど・・・それでは私ではなく・・・ソフィアルナの両親とお話した方がいいですね。2人共、前に出なさい。」

「「・・・は、はい。」」」


 ヤック村長と入れ替わるように、男女のエルフがアキ達の前に座る。


 この2人がソフィーの両親だ。


「初めまして、アキ・シノミヤと申します。」


 とりあえずソフィーの両親に自己紹介をする。

挿絵(By みてみん)

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