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「それでなんで今それを俺に教えたんだ?」
ベルの言いたい事はわかったが、何故急に教えようと思ったのだろう。
「はい。ソフィーさんはアキさんに絶対言わないでしょう。彼女はアキさんが大好きですからね。アキさんが何を言っても拗ねるかちょっと怒るくらいです。」
「まあ・・・そうだな。」
エルフが森と共存しているというのはエルフに対して禁句。それなのにアキがそれをソフィーに言った時、彼女はアキを咎めたりはしなかった。ちょっと拗ねて怒っただけだ。
「これからアキさんはソフィーさんの故郷に行きます。そこには彼女の両親、そして知り合いにエルフの方々がいらっしゃるでしょう。」
なるほど、ベルの言いたい事はわかった。もしこれがエルフに対する禁句なのだとしたら、アキが口を滑らす可能性はある。変な揉め事を起こさない為にも話題には気を付けろと言いたいのだろう。さっき「なんでエルフは森と共存してないんだ!」とソフィーに詰め寄っていたくらいだからベルの懸念も頷ける。
「わかった。気を付ける。」
「はい。」
「でもなんでもっと早く教えてくれなかったんだ?ベルだけじゃなくミルナやエレン達もこの事は知っていたんだろ?」
そう言ってミルナ達の方見ると、全員が「まあ一応」と頷いている。
「ソフィーさんが言ってないのにエルフでない私達が言う事ではないと思いまして・・・」
「ああ、それは確かに。」
言われてみればそうかもしれない。エルフであるソフィーの前で「森って言葉はエルフに禁句なんですよ」って言うのはある意味失礼だ。下手したら種族差別と言われかねない。
「身内だから大丈夫だと思うけどね。」
「そうですね。別にソフィーさんは怒ったりはしないでしょう。でも私はソフィーさんの親友ではありません。ミルナさんやエレンさんとは違います。それに何を言っても許されるのは・・・結局のところアキさんだけですよ?」
「そんなことは・・・」
「あります。アキさんが言う事ならソフィーさんはなんでも許すでしょう。そもそもエルフに森は禁句と言いますが、アキさんがどうしてもとそれを主張したら、ソフィーさんは最終的にはアキさんの味方になるはずです。」
「そんな事はないだろ。」
さすがにそこまでは許されない気がする。いくらなんでも限度があると思う。
「ありますよ。だって私がそうですから。」
ベルが当然の事ですと真顔で言う。
「えー?」
「アキさんがエスぺラルドを滅ぼすと言うなら喜んでお手伝いします。」
物騒な事を言い始めたベル。
「いや言わないから・・・」
「わかってます。例え話です。でもそのくらいの覚悟で私はアキさんと一緒にいると言う事なのです。そしてソフィーさんも同じはずですから。」
嬉しいが、さすがにアキを甘やかしすぎではないだろうか。
「好きにしていいんだぞ?」
「はい。ですから好きにしてるんです。」
「そうか・・・」
そう言われると言い返す言葉がない。
「まあ・・・つまりアキさんが世界を敵にしても、ここにいる私達だけは絶対にアキさんの味方です。そう言う事です。」
「だから俺が何を言っても許されると?」
「ええ。貶されたりしたら拗ねますし、怒ったりはしますが・・・そもそもアキさんがそれを本気で言う訳がないのはわかっていますので。」
ベルが優しく微笑む。
どうやらアキは何をしてもいいらしい。
それならアレを主張しても許されるに違いない。
「もふもふ帝国を・・・」
「それだけは駄目です。全力で潰します。」
ベルは笑顔だが、目が笑っていない。そんな事したらわかってますよねと本気で睨んでくる。そしてミルナ達からも突き刺さるような視線を感じる。
「なんでだよ!なんでも許してくれるって言っただろ!」
「なんでそこで怒るんですか!おかしいでしょう!むしろこっちが何でですか言いたいですが!大体なんでそれに関しては常に全力なんですか!頭おかしいんですか!」
「いいだろ!リオナやセシルみたいなもふもふが俺は大好きなんだ!!!」
それだけは譲れない。
「アキ、嬉しいけど・・・私は悲しいよ?」
「アキさんいい加減少しは自重しましょうね?馬鹿なんです?」
リオナとセシルに呆れ顔で文句を言われた。
「酷い。何でも許してくれるって言ったのに・・・」
「すいません、訂正します。アキさんのその異常性癖の事以外であれば何でも許してあげます。ですのでその夢は叶う事ありませんし、早々にポイしてください。」
余計に酷い。