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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十二章 故郷巡り②
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6

 それからほどなくしてルティアがミルナ達を連れて戻ってきた。本当にどうやってルティアがミルナ達の場所を把握していたのかはわからない。しかもミルナ達の話によると、ミルナとソフィー、エレンとリオナ、そしてエリスと全員別行動していたらしい。それなのにルティアは難なく全員を回収してきた。もう凄いとしか言えない。


「これから出発ですの?」


 買い物を終えて馬車に乗り込んだミルナが尋ねてくる。


「ああ、無事ミスティアへの地図も貰ったしな。」

「それはよかったですわ。」

「ミルナ達は買い物楽しめたか?」

「はい!サルマリアは工芸品が素敵ですのでいい買い物が出来ましたわ。さすが職人さんの国と言われているだけありますわ。」


 以前サルマリアに来た時も、確かに家具などのクオリティには脅かされた。あまりにも繊細で気品ある装飾に目を奪われたのを覚えている。うちの屋敷の家具をすべて買い替えてやろうとしたくらいだ。まあミルナ達に全力で止められたわけだが。


「ちなみに何を買ったんだ?」

「アキさんへのお土産ですわ!」


 嬉しそうにミルナが叫ぶ。


「・・・そうか。」


 ただアキとしては手放しには喜べない。勿論気持ちは嬉しい。わざわざアキへのお土産を選んで買ってきてくれたのだから嬉しくないわけはない。だが・・・


「はい!こちら!よくわからない人形ですわ!」


 ・・・といつもこんな感じだ。土産をくれるのはいいが、変な物しか買って来ない。気持ちは嬉しい。ただミルナのセンスが非常に疑問だ。おかげでアキの部屋が気味の悪い土産で溢れかえり始めている。そもそもミルナ自身が「よくわからない」と言ってる時点でそんなもの買うなと言いたい。


「これは・・・なんの人形なんだ・・・?」


 一応ミルナから人形を受け取ってよく見てみるが、全くわからない。白と赤い服を着た女の子の人形のようだが・・・顔がグロテスクで滅茶苦茶怖い。というかこれ、絶対ホラー映画に出て人を殺しまくる動く人形だろう。


「・・・ミルナは俺が嫌いなのか?」

「何故そうなるんですの!大好きですわよ!!!」


 ミルナが頬を膨らませながら言ってくるが、これを土産として選ぶなんて相当嫌われていると思ってしまう。そんなレベルで不気味な人形だ。


「で・・・これは何の人形なんだ?」

「呪いの人形ですわ!」

「やっぱりミルナ、俺の事嫌いだろ。」

「何故ですの!?こんなに愛していますのに!」


 愛する人に呪いの人形を買ってくる時点で頭がおかしい事に気付いて欲しい。


「これ、ミルナの部屋に飾っていい?」

「アキさん!酷いですわ!そんな気味の悪い人形を私のお部屋に飾ろうとしないでくださいませ!それは呪いの人形ですのよ!もし私が呪われたらどうするんですの!」


 そうか、こいつは喧嘩を売ってるのか。


「おい、俺の部屋に飾って俺が呪われるのはいいのか。」

「ア、アキさんならきっと大丈夫かと・・・」


 目を逸らしながら呟くミルナ。


 やはりわかっていて買ってきやがったのか。ミルナの土産センスはいつも壊滅的だが、今日のは特に酷かった。どうやら完全に嫌がらせしたかっただけらしい。レインバースでミルナを無理矢理両親に引き合わせたから、その仕返しのつもりなのかもしれないな。


「じゃあいいよ、俺の部屋に飾ってやる。」

「・・・え、あ、はい。ありがとうございますわ?」


 ミルナが目を丸くする。アキが本当に飾ると言うとは思わなかったのだろう。


「俺のベッドの右側のナイトスタンドにおいてやる。朝目覚める時・・・ちゃんと目が合うようにな。」


 ミルナがアキの部屋で一緒に寝る時、いつもミルナはベッドの右側で寝るからな。


「・・・アキさん。」

「なんだ。」

「そちらの人形をちょっと貸していただけませんでしょうか。」

「ああ。」


 何をする気なのかわからないが、とりあえず土産の人形をミルナに返す。


 するとミルナは馬車の窓を開け・・・


「ふんっ!!!」


 全力で人形を窓の外に投げ捨てがった。


「ふぅ・・・これで安心ですわ。」


 いい仕事しましたわと満足気な表情のミルナ。


「おい、俺の土産を捨てるな。」

「うるさいですわ!あんなのはアキさんに嫌がらせする為だけに買ってきただけですもの!もういりませんわ!これでいいんですわ!」


 これは酷い。


「人形を捨てたミルナが呪われるかもな・・・?」


 意味深な雰囲気で呟いてみる。


 少し苛めてやる。あんな人形を買ってきた仕返しだ。


「・・・アキさん!馬車を!馬車を今すぐ止めてくださいませ!!お人形を回収してきますわ!!!」


 ミルナが涙目になりながら必死に叫ぶ。


「ああ・・・冗談だから落ち着け。うん、俺が悪かった。」


 本当はもう少し虐めたかったのだが、ミルナが馬車から飛び降りていきそうな勢いだったのでこれ以上はやめておく。というかそんなに気持ち悪いと思っているならそもそも買ってこなければよかったのに。


「うぅ・・・酷いですわ・・・!」


 ミルナが恨めしそうな目で見てくるが、酷いのはお互い様だと思う。

挿絵(By みてみん)

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