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リスルド王城に到着すると、アキ達はすぐイル達がいる謁見の間へと案内された。人払いもしてあり、完全に顔パス、VIP待遇だ。まあベルを連れていたからかもしれないが、とにかく変に拘束されないのは助かる。
そして謁見の間にはイルだけでなく当然王妃のミリアと王女のステラもおり・・・
「ベルさーん!」
ベルに飛び掛かるように抱き着いてくるステラ。
きっとイルはこうなるのを見越して人払いをしていたのだろう。
「ア、アキさん!」
それを華麗に避け、アキの背後に隠れるベル。
「アキさん、何故私とベルさんの逢瀬を邪魔をするのですか。」
何故今の一連の流れでアキが怒られるのだろうか。そもそも逢瀬の使い方が激しく間違っている気がする。
「俺はなんもしてないんだが?」
「とにかく早くベルさんを私に差し出してください。」
ベルの事になると相変わらず話しが通じないステラ。
「どうぞ。」
もう面倒なので背中に隠れているベルを引っ張り出し、ステラに差し出す。
「ちょ、ちょっとアキさん!なんで差し出すんですか!?」
ベルが慌ててまた隠れようとするが、もう遅い。にじり寄っていたステラが一気にベルに抱き着く。
「うへへ・・・ベルさん・・・今日も可愛いです・・・!」
「ひぃ・・・!」
ベルが涙目になりながらアキに助けを求めてくるが・・・無視しておく。ステラはベルを与えておけば静かになるからな。今のうちにイルに挨拶をしてしまおう。
「イル陛下、先日はお世話になりました。」
「いえ、こちらこそ世話になりました。あとうちの娘がいつもすいませんね・・・」
ステラの暴走を一応は謝罪するイル。ただ止める気がないのは丸分かりだ。
まあ多分イルとしては、娘の大好きな友人がいるのだから好きにさせてやりたいといったところだろう。ただベルは他国の王女だ。外交的にはどうなのだろうと思わなくもないが・・・まあそれも今更か。
「いえいえ、ベルが友人と仲良くしているのは私も嬉しいです。」
「アキさん!?これのどこが仲良くしているように見えるんですか・・・!襲われてます!私、襲われてますよ!早くなんとかしてくださいー!」
ベルが何か叫んでいるが、何も見えないし、聞こえない。ベルという尊い犠牲のおかげでこっちは平和に話を進められるのだ。
「イル陛下、本日お伺いさせて頂いたのは・・・」
「先日会議でおしゃっていた婚約者さんの故郷へ行かれるのですね?」
「ええ、その通りです。ミスティアが故郷らしいのですが・・・イル陛下に場所をお伺いしようかと。」
何故それを本人に聞かないのかとイルは聞いてこない。まあベルを連れてサルマリアを勝手にうろちょろするのは外交的によろしくないし、どこどこへ行きますと報告しているとでも思ってくれているのだろう。実際はソフィーの案内が信用ならないからだが・・・それは身内の恥なので黙っておく。
「なるほど・・・ミスティアですか。」
「ええ。」
「ミスティアはリスルドから馬車で2日ほどですね。ただあそこは本当に小さな町・・・というか村で、森の中にあるのでわかりづらいですよ?まあアキさんの場合は婚約者さんの故郷ですし迷う事もないでしょうが。」
イル曰く、ミスティアは案内なしでは絶対に辿り着けないような入り組んだ場所にあるらしい。大森林の奥にひっそりとある小さな村、そこがソフィーの故郷、ミスティアらしい。だがそこまでわかりにくいのは不味いな。これは完全にソフィーの案内なしでは辿り着けないやつだろう。
「大体の場所だけでも一応教えていただけますか?」
「はい、もちろんです。アキさんが帰られる際に地図をお渡ししますね。森まではその地図があれば問題ないでしょう。ただ森に入ってからは婚約者さんの案内が必要かと・・・」
「わかりました。」
これはソフィーをなんとか説得して案内させないとダメだ。まあおもいっきり甘やかすとか、にんじんでもぶら下げておけば大丈夫だろう。
とりあえずイルとの話もすんなり終わった。これであとはミスティアに向けて出発するだけだ。
ただその前に・・・
「アキさん!無視!無視しないでください!早く!早くー!」
ステラからベルを助けなければいけない。
「ベルさん、そんなつれない事言わないでください。2人でいい事しましょう・・・クンクン・・・はぁベルさんはやっぱりいい匂いです・・・はぁはぁ・・・」
「ひ、ひぃ・・・!アキさん!アキさーん!」
正直あれにあまり関わりたくないんだが・・・どうしよう。