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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十一章 故郷巡り
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 あれから数日、アキ達はレインバース領をたっぷり満喫した。


「よし、みんな・・・準備はいいか?」

「「「「はい!」」」」


 そして今日、アキ達は次の目的地であるソフィーの実家に向けて出発する。


「ミルナ、色々ありがとな。」


 結局、レインバース領に滞在している間、アキ達はこの海辺の屋敷で過ごした。本当は貸し切りは1日だけだったらしいのだが、アキがここを気に入ったのを知ったミルナが無理して数日貸し切りにしてくれたのだ。


「うふふ、頑張りましたの!わたくし!」


 もっと褒めてと言わんばかりに満面の笑顔を見せるミルナ。


 その表情はちょっと鬱陶しいが、今回ばかりは確実にミルナの功績だ。レインバース領をしっかり観光できたのもミルナの案内があったからだし、プライベートビーチで海を満喫できたのもミルナが領主の娘という権力を使ってくれたからだ。


「まあミルナにしては頑張ったな・・・」

「なんですの、それ!アキさん!ちゃんと褒めてくださいませ!!!」


 ミルナが頬を膨らませて文句を言ってくる。


 まあアキとしても素直に褒めたいところではある・・・が時折ふざけた事をするからミルナを大絶賛するにはどうしても躊躇してしまうのだ。


 例えば風呂。ミルナが手配してくれた海辺のコテージというか屋敷には、最高の露天風呂が設置されていた。星空と夜の海を眺めながら入れる素晴らしい風呂だ。アキとしてはそれをのんびり楽しみたかったのに、ミルナ達が「アキさんと一緒にはいりますわ!」と突撃してきたせいで、まったくのんびり出来なかった。


 それも当然毎日だ。


「風呂くらいのんびり入らせろ。」

「い、いいではないですの!偶には一緒にはいっても!」


 それはもちろん構わない。マリミアの温泉でも一緒に入ったし、うちの可愛い婚約者達と風呂に入る事自体は大歓迎だ。美少女に絶景、最高のシチュエーションだと男なら誰もが思うだろう。


 だがここは温泉ではない。ただの風呂だ。マリミアの温泉は白く濁っており、首まで浸かってしまえば目のやり場に困る事もなかったが、普通の風呂だとそうはいかない。お湯は普通に無色透明なのでミルナ達の全てが丸見えになる。そしてミルナ達もさすがにそれは恥ずかしかったらしく、アキに目隠しするよう要求してきたのだ。


「目隠しがなければな。」


 目隠しさせられるなら星空も海も当然見えない。おかげで絶景が台無しだ。もう普通に風呂に入っているのと変わらない・・・というかむしろ余計にのんびり出来なかった。


「だってそれでは色々・・・丸見えではないですの!アキさんの変態!!」


 酷い言われようだ。風呂に乱入したのがアキなら変態と言われても仕方ないが、そもそも突撃してきたのはミルナ達だ。むしろアキは被害者だろう。


「じゃあ来るなよ・・・」

「一緒に入りたかったんですもの!」

「じゃあ裸を見られるのは諦めろよ。」

「へ、変態ですわ!アキさんの変態!!」


 うん、相変わらず理不尽な言い分だな。


「というか婚約者なんだから見てもいいだろ・・・」


 アキも恥ずかしいといえば恥ずかしいが、別に問題はないはずだ。


「そ、それはそうですけど・・・心の準備がまだですもの!」

「だったら一緒に入らなくてもいいだろうが!」

「一緒に入りたかったんですもの!」


 なんだこの堂々巡りの押し問答。


「俺は風呂でのんびりしたかったんだよ!目隠しのせいでのんびり出来なかっただろうが!せっかくの絶景だったのに!」

「安心してくださいませ!それはもう素晴らしい星空でしたわ!」

「だからそれを見れなかったっていってんだろうが!このアホミルナ!」


 ――スパーン!


 ふざけた事ばかり言っているミルナの後頭部をおもいっきり引っ叩いてやる。


「いたっ・・・!酷いですわ!叩かないでくださいませ!!」

「うるさい、黙ってろ。あとそこで自分は関係ないって顔をしてるエレンにリオナ・・・2人も同罪だぞ。一発いっとくか?」


 風呂に突撃すると決めたのが誰なのかは知らないが、普通にエレンやリオナもいた。というか全員いた。


「い、いやよ!それに・・・だって・・・せっかくの綺麗な夜空だったし・・・アキと見たかったのよ!」


 うん、その気持ちは嬉しい。


「だからそれが見れなかったんだけど?」


 顔を真っ赤にして、「こっちみたら殺すわよ!」と目隠しを真っ先に要求してのはエレンだった気がする。


「し、しょうがないじゃない!リオナ!」

「あはは・・・アキ、ごめんね?」


 リオナが獣耳をペタンと垂れ下げながら上目遣いで謝ってくる。


 あざとい。この狼、あざとい。こういう謝り方をすればアキが怒れない事をわかっていてやっているのだろう。


「うん・・・許す。」


 まあわかっていてもリオナは可愛いから許してしまうんだが。


「えへへ・・・ありがと。」

「「ちょっと!?不公平よ(ですわ)!!」」


 エレンとミルナが同時に叫ぶ


 だがこれは仕方ないのだ。当然のことなのだ。


「この世は不公平なのだ。公平に扱って欲しかったらミルナとエレンも尻尾と獣耳を生やしてから出直してこい。そして俺にもふもふさせろ。」

「「それは無理!この変態!!!」」


 余計な一言を言ったらしい。おかげでアキが説教してたはずが、アキが説教される羽目になってしまった。

挿絵(By みてみん)

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