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「まじか・・・あれが全部無くなるとはさすがに思わなかったぞ。」
用意した肉や魚介類は綺麗さっぱりミルナ達の胃に収まった。うちの子達が食いしん坊なのはわかっていたので、100人前はアリアに用意してもらったはずだ。それなのに全てなくなるとはさすがに思わなかった。
「お腹いっぱいですー!」
ソフィーが満足気にぽんぽんとお腹を叩く。
「お腹は八分目がいいと良いと言いますし、私もそろそろごちそうまですわ。」
「うむ、それがいいのだ。」
「ん、今日はこのくらいにしておく。」
あれだけ食べてその感想なのか。普通なら苦しくて動けなくなりそうなものなのに、ミルナ、ソフィー、エリス、ルティアはまだまだ余裕そうだ。しかもアキはずっと焼いていたからほとんど食べていない。アリアが肉を持ってきてくれたから、多少は食べたが、それでも1人前程度だろう。つまり99人分をうちの子達だけで平らげた事になる。
「エレンやベルもお腹いっぱいか?」
「そうね・・・まあ十分よ?」
「はい、もう少し食べられますが・・・大丈夫です。」
2人はまだ食べたりないらしい。
「セシルとエリザは?」
「お魚さん美味しかったです。」
「そうね。でももうちょっと欲しいわね。」
「ですね。」
この2人もまだまだいけそうだ。
どうやら自分達で肉や魚を焼いていた組は焼くのに一生懸命で十分に食べられなかったのかもしれない。となるとエレン達は多分、3~4人前ずつくらいしか食べていない。つまりミルナ、ソフィー、エリス、ルティアの4人でほとんどを食べたことになる。ざっと計算しても、1人あたり20人前近く。さすがに食い過ぎだろう。
「ミルナ・・・太ってもしらないからな。」
「だ、大丈夫ですわ!今日だけ!今日だけですわ!」
そう言いつつも、毎日もの凄い量を食べているのを知っている。ただ彼女らが太る事は今後もないだろう。毎日あれだけ食べていても、体系の変化は一切見られないからな。
「まあみんなの食べっぷりが好きだからいいけどな。」
「そうなんですの?」
「あれだけ美味そうに食べてくれるなら作り甲斐がある。」
アキ自身料理が好きというのもあるが、毎日飽きずに料理を作れるのは、ミルナ達が美味しそうに食べてくれるからだ。「アキさんのご飯がいいです!」「アキのご飯じゃないと嫌!」と言ってくれるからこっちとしても嬉しくなる。もしここまで好評じゃなかったら、きっとうちのメイド達に料理を任せていただろう。ナギやシャル達も料理は普通に出来る。それに今はユーフレインの事で色々と忙しい。毎日料理するのは面倒になっていたに違いない。
「さて・・・ミルナ、そろそろ宿に戻った方がいいか?」
バーベキューも終わった。いつの間にか日もすっかり落ち、空には満天の星空が広がっている。今夜はこの星空を眺めながら過ごしたいところではあるが、そろそろ宿に戻らなければならないだろう。
「そうですわね。戻ってもいいですが・・・ここに泊まっても大丈夫ですわよ?」
ミルナ曰く、この海辺の屋敷は明日までの貸し切りらしい。宿に戻るもよし、ここに泊まるもよし。アキの好きにしていいとのこと。
それなら答えは一つだ。
「じゃあせっかくだから今日はここに泊まろうか。」
満点の星空に夜の海。まさに絶景。ここで過ごせるのならそうするべきだ。それに夕食後に移動するのは面倒だしな。
「ふふ、そうですわね。このお屋敷、お風呂も凄いんですのよ?」
「そうなのか?」
風呂好きにはその一言で十分だ。尚更この屋敷に泊まらなければならなくなった。
「ええ、お外にあるんですの。海や夜空を見ながら入れますわ。」
「おお、露天風呂か。温泉なのか?」
最高だな。それに露店風呂はマリミアの温泉街以来だ。
「ごめんなさい、さすがに温泉ではありませんわ。」
「それは残念。」
それでも海を見ながら入る風呂は格別だろう。
「今夜はここに泊まろう。アリア。」
「はい。お風呂の準備をしてまいります。」
「悪いな、いつも。」
温泉でないなら、風呂に入る為にお湯の準備をしなければならない。ベルフィオーレでは地球のように蛇口を捻ればお湯がでてくるわけではないからな。だからうちではいつもアリアやシャルが大量のお湯を沸かして風呂を沸かしてくれているのだ。
「いえ、それが私のお仕事ですので。」
アリアは嬉しそうにそう言うと、踵を返して屋敷の中へと入っていった。
「さて・・・」
これでじきに風呂に入れるだろう。
それに丁度その間にしなければならない事もある。
「デザートの用意・・・するか。」
「「「「まってました!!!」」」」
嬉しそうに叫ぶミルナ達。
そう、しなければならない事。それはミルナ達にデザートを出してやる事だ。
ご飯の後に必ずデザートを用意しないと、ミルナ達に滅茶苦茶文句を言われるからな。よくあれだけ食べた後にまだ食べられると感心するが・・・まあデザートは別腹なのだろう。