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「アキ!これはどうやって焼くのよ!」
「ああ、それは・・・」
「ねえねえ、これであってる?あってる?」
「あってるぞ。リオナは手際がいいな。」
「えへへ、そうかな?」
エレンやリオナは1枚肉を焼く度、「これでいいの?あってる?」って聞いてくる。可愛い。
「アキさん、ちゃんと出来てます?これはもう大丈夫でしょうか・・・?」
「うん、良い感じだぞ。それはもう食べてもいいぞ。」
「はい!いただきます!」
ベルは1枚1枚、一生懸命肉を焼いている。しかも焼き残しがないか、何回もひっくり返し、慎重に確認するので見ていて面白い
「お魚さん焼けました!」
「熱いぞ、気を付けろよ?」
「はふはふ・・・おいしいです・・・!」
どうやらセシルは肉より魚が好きらしい。一心不乱に、兎耳一つ微動だにさせず、魚を焼いているうちの兎の姿は微笑ましかった。
「アキ君!これ!この辺の魚!もう食べていいのかしら!」
「いいけど・・・焼きすぎだろ。」
「い、いいでしょ!ちゃんと全部食べるんだから!」
エリザもやはり肉より魚らしい。まあ猫だから当然か。ただ1匹を大事に焼いていたセシルと違い、5匹くらいを網にのせて豪快に焼いている。
「アキさん、お肉焼けました。どうぞ。」
「悪いな、アリア。」
「いえ、アキさんはミルナさん達のを焼くので忙しいそうですので。」
そしてアリアはアキの世話をしてくれている。アキが好きな肉、野菜、魚を「次はあれが食べたいな・・・」と思った順にちゃんと出してくれる。さすがアリアだ。
こんな感じでみんなでわいわいバーベキューを楽しんでいる。最初はみんな戸惑っていたものの、自分で焼いた食材を食べるのが面白いのか、積極的に参加してくれているので嬉しい。
「やっぱりバーベキューは楽しいな。」
「ええ、思ったより楽しいわ!」
「うんうん、たまにやりたいかも。」
エレンとリオナが同意してくれる。
普段からご飯時は騒がしいが、今日はそれ以上だ。だがこれこそバーベキューの醍醐味。厳かな食事も悪くはないが、みんなでわいわいしながら海を眺めて食べるご飯もまた格別だ。
「・・・アキさん!!!」
急にミルナが叫んだ。
どうしたんだろうと思ったが、きっと肉がなくなっただけだろう。
「あー、はいはい、今追加の肉持って行くからいい子に待ってろ。」
アキはずっとミルナ達、食べる専門組、の肉を焼き続けている。焼いても焼いても食べるから、終わりが見えないのが辛いところだ。あの子達の胃袋はどうなってるんだ。
「違いますわ!!!」
「違うのか?じゃあどうした?」
何故かミルナが必死だ。というか顔が般若のようで怖い。
「こっちは食べているだけで面白くないですわ!!」
「・・・それは知らん。」
まさかの文句だった。「焼きたくない、食べる専門がいい」と言ったくせに、アキがエレン達とわいわい楽しそうにしていたのが気に食わなかったらしい。
「なんとかしてくださいませ!」
「えー、じゃあミルナも一緒に焼くか?」
「それは嫌ですわ!」
無茶苦茶だな。
「じゃあどうしろと。」
「アキさん、ここに来てくださいませ!ここで焼いてくださいませ!」
ミルナがぽんぽんと隣の椅子を叩く。
つまりあそこでミルナの為に肉を焼いて、ミルナを楽しませろいう事なのだろう。
「しょうがないな・・・」
とりあえずぎゃーぎゃーうるさいので、ミルナの隣に移動する。
「ふふ、ではアキさん、次もお肉でお願いしますわ。」
満足気に微笑み、肉を焼けと偉そうに命令してくるミルナ。
さすがにムカついた。
「わかった。」
そう言いながらミルナの肩を掴む。そしてミルナをグッとグリルの方へ押し出してやる。
「え?アキさん・・・何をしているんですの・・・って熱いですわ!」
「さっきから我儘ばっか言いやがって。その胸についた無駄な肉を焼いてやる。」
「待ってくださいませ!?これはお肉ではないですわ!いえ、お肉ではありますけど・・・やめてくださいませ!・・・って今チリって言った!髪の毛!髪の毛が少し焼けましたわ!アキさん!やめてってば!」
涙目になりながらミルナが叫ぶ。
まあほんとに火傷されても困るので、そろそろ離してやるか。
「わかったら黙って食べてろ。」
「うう・・・酷いですわ・・・」
酷いのはどう考えてもミルナだと思う。
「ソフィー達は何か文句あるか?」
「ないですー。それよりお肉くださいー。」
「ないのだ。お肉追加なのだ。」
「ん、ない。お肉なくなった。」
「あ、うん・・・ごめん。」
ソフィー、エリス、ルティアは特に文句はないらしい。というかこっちには脇目もふらず、一心不乱に肉を食べ続けている。この子達はとりあえず食えればなんでもいいらしい。まあそれなら静かでいいんだが・・・それはそれでなんか寂しい。
「「「アキ!お肉!」」」
「はいはい・・・野菜も持ってくるからちゃんと食えよ?」
「「「嫌!お肉!」」」
子供か。