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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十一章 故郷巡り
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「アキさん、あれってなんですの?」


 ミルナが首を傾げながら聞いてくる。


 海で遊んだらお腹が空く。そして海での飯といえばバーべーキューだ。ベルフィオーレにそう言う風習があるのかはわからないが、ミルナ達はきっと気に入ってくれるだろう。なんたって食いしん坊な子達だからな。好きなだけ肉が食えるのだから大喜びしてくれるはず。


「ちょっと変わった夕飯をやるぞ。」


 アリアには事前に肉や野菜の準備を頼んでおいた。後もちろん魚介類もだ。せっかく港町にいるんだから魚介類を食べないのは勿体ない。アキとしては魚介類だけでもいいのだが、肉がないと滅茶苦茶文句を言う子達がうちにはいるからな・・・


「はい、アキさん、準備は万全です。」


 アリアがいつそんな準備をしたのかはわからない。彼女もずっと海で遊んでいたのだから、そんな時間はなかったはずだ。


「さすがだな。」


 だがもうその辺は考えるのは諦めた。アリアが準備出来たというのなら、準備出来たのだ。それでいい。そもそも「いつ、どうやって」をアリアに聞いたところで、意味がないからだ。


「はい、メイドの・・・」

「嗜みなんだろ。知ってる。」


 この答えしか返ってこないからな。


 もうアリアの七不思議という事にしておこう。


「アキさん、最後まで言わせてください。」


 アリアが不機嫌そうな目で睨んでくる。


「ええ・・・」


 なんでもアキが「何故?どうやって?」と質問して、アリアが「メイドの嗜みです」と答えるまでが、彼女の中でのメイド道らしい。


 まったくをもってよくわからん。


「ごめんなさい?」

「はい、次からは気を付けてください。」


 なんで怒られたのかわからないし、納得がいかない。だがアリアとメイド道について議論しても勝てる気が微塵もしないので、やめておこう。


「とりあえず・・・みんなご飯にするぞ!」

「「「「わーい!!!」」」」


 アキが宣言すると、嬉しそうにはしゃぐミルナ達。


「でもアキさん、お食事はどこなんですか・・・?」


 ベルが不思議そうに聞いてくる。


「いつもと違うって言っただろ。」


 普段は料理された食事が並んでいるが、今日は違う。まずは自分達で肉や魚を焼くところからだ。


「何をするんですか?」

「うん、バーべキューだ。」

「ばーべきゅー・・・ですか?」


 可愛らしく首を傾げるベル。


 ベルの反応を見るに、この世界にバーべキューはないらしい。まあ外で肉を焼いて食べるのは、冒険者であれば野宿の時にするはずなので、ない事はないだろう。ただそれは野宿だから仕方なくそう言う食事をしているだけ。娯楽ではない。


「うん、俺の世界では娯楽の1つだったんだぞ。」

「そうなんですね!ちょっと楽しみです!」

「みんなでわいわいやるから楽しいと思う。アリア・・・食材はどこだ?」


 アキが聞くと、アリアがあちらですと、浜辺に設置されているウッドデッキのような場所を指差す。するとそこにはいつ準備したのか、大量の肉や野菜、そして海の幸が並べられていた。グリルにもしっかりと火が入っており、いつでもバーベキューを始められる状態だ。


 ・・・というか本当にいつ準備したんだ。


「俺のメイドは最高だな。」

「はい。」


 アキの言葉に嬉しそうに微笑むアリア。


 彼女にとっての最大級の褒め言葉がこれだ。美人や可愛いと褒めても、喜んではくれるが、反応がいまいち。こうして「メイドとしての仕事ぶり」を褒めるのがアリアは何より喜ぶ。


「それでアキさん・・・肝心のご飯はどこですの?」


 お腹が空きましたわとミルナ。


「そうよ!早くご飯にしなさいよね!お腹すいたんだから!」


 エレンもミルナに同調するように叫ぶ。


 しかし何故そんなに偉そうなのか。


「いや、だからあそこにあるだろ。」


 アリアが先程指差した食材をアキも指差す。


 するとミルナ達は唖然とした表情を浮かべる。


「え・・・?あの、アキさん、怒ってますの・・・?」


 ミルナが恐る恐る聞いてきた。


「いや?別に?」


 この子は何を言っているのだろう。というか何故いきなりそんな話になったのかわからない。


「で、では私達のお夕飯はどこにあるんですの?」

「だからあそこにあるだろ。」

「アキさん!ごめんなさいですー!私が悪かったですー!」


 今度はソフィーが土下座せんばかりの勢いで謝ってきた。


「ア、アキ?その・・・いつもご飯を作らせて悪いとは思うわよ・・・?うん、でもその・・・あまり苛めないで欲しいわ・・・怒ってるなら謝るから・・・」


 そしてエレンも申し訳なさそうに呟く。


 だが本当に意味が分からない。


「いや、だから怒ってないって。さっきから何の話だよ。」

「だってあれは生肉ですわ!リオナならともかく、私は生肉は食べられませんわ!アキさん!せめて火を、火を通してくださいませ!」


 ミルナが必死だ。


「なるほど。」


 だが、理解した。


 どうやらあの肉をそのまま食わされると思ったらしい。


「ちょっとミル姉!?私も生肉は食べないよ!?」

「え、食べないの?」

「アキまで!?当たり前でしょ!食べられるわけないよ!」

「狼なのに?」

「狼人族!狼じゃないってば!!!」


 リオナならいけるのでは?と一瞬思ったが、そうでもないらしい。


 ちなみにうちの兎や猫も駄目なのだろうか・・・とセシルやエリザの方をチラッと見る。


「こっち見ないでください!無理!無理ですから!!!」

「そうよ!私は猫人族なんだから!ちゃんとしたご飯を与えなさい!」


 やはり駄目らしい。


 しかし「ご飯を与える」とか完全にペット目線なんだが・・・それでいいのか、エリザ?


「安心しろ、あのまま食べろとか言わないから。バーべキューっていっただろ。」


 とりあえず誤解を解くとしよう。


「アキさん、だからその『バーベキュー』ってなんですか・・・?」


 早く教えてくださいとベルが痺れを切らした顔で言う。


「ああ、俺の世界の娯楽・・・というのはさっき言ったよな?バーべーキューってのは、肉や野菜をこの場で焼いて、好きなように好きなだけ食べる事だ。綺麗な景色を見ながら食事を楽しむ方法の1つなんだよ。」


 簡単にバーベキューの仕組みをミルナ達に説明してやる。


「「「「えー・・・・」」」」


 アキの説明にもの凄い嫌そうな顔をするミルナ達。


 大喜びするかと思ったら・・・大不評だった。しかし正直そこまで嫌そうな顔をされるとは思わなかった。何故だろう。

挿絵(By みてみん)


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