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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十一章 故郷巡り
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「アキさん!私も!私にも教えてください!!!」


 泳ぎを教える約束をアリアにしたら、ベルが猛烈にアピールしてきた。まあこの展開は予想していた。泳ぎを教えるとかいうイベント、ベルが逃すはずがないからな。ただこれは普通、逆な気がする。男が手取足取り美少女に教えたいから「俺が俺が!」という展開になるはずなのに、うちは女性陣が「私も私も」だ。


「はいはい、ベルもな。セシルとエリザもそれでいいか?」


 当然ベルだけでは済まないのはわかっている。というか多分全員教える事になりそうだ。


「はいー!」

「え、ええ?そうね?お願いしようかしら?わ、私は一応泳げるけどね?」


 セシルは嬉しそうに耳をピーンと立て、エリザはすまし顔で答える。


「泳げるならエリザは必要ないな?」

「そ、そんな事ないわ!アキ君は教えたいんでしょ!だから教えさせてあげるのよ!感謝しなさい!!!」


 やたらと偉そうなエリザ。


「エリザ・・・泳げないんだな?」

「お、泳げるわよ!!!」


 尻尾を逆立てながら叫ぶエリザ。だが目が泳いでいる。


「で?本当は?」

「ち、ちょっとだけ苦手・・・でもしょうがないでしょ!猫人族なんだから!!!」


 別に泳げない事くらい、恥ずかしい事ではない。というか何故この猫はいつも1回見栄を張るのか。


 しかし猫人族が泳ぐのが苦手なのは初耳だ。一般的に猫は水が苦手というが、そう言う事なのだろうか。


「猫は水が苦手なんだな?」

「ね、猫じゃないわよ!!!ふしゃー!」


 やっぱりこの猫はいちいち可愛い。


「アキさん、獣人族は基本的に水が苦手なんです。リオナさんのような狼人族はそうでもないみたいですが・・・」


 エリザを揶揄っていたら、セシルが教えてくれた。


 どうやら水が苦手というのは獣人族の習性らしい。ただセシルやエリザは風呂には喜んで入っている。あれはまた違うのだろうか。


「風呂はいいのか?」

「当然です!獣人族は綺麗好きなんです!っていうか乙女なんですからね!」


 セシルが頬を膨らませながら文句を言ってくる。乙女に「風呂は嫌いなのか?」は禁句だったらしい。


 とりあえず風呂と水が苦手なのは関係ないようだ。


「悪い。つまりリオナは狼人族だから平気という事か?」

「はい。でも水が平気というだけで泳げるかは知りませんけど。」


 犬は犬かきが出来ると言うが、狼も似たようなものなのかもしれないな。うちの狼はどうなんだろう・・・と海で遊んでいるリオナを探す。


 いた。


「あれは泳いでる・・・のか?」


 海からちょこんと顔を出し、何かをしているリオナがいた。ただ泳いでいるというにはあまりにも進みが遅い。まあ気持ちよさそうにしているし、溺れているわけではなさそうだ。つまり・・・あれは犬かきならぬ狼かきをしているのだろう。


「・・・うちの狼にも教えてやるか。」


 正直あれはあれでなんか可愛いが、リオナにもちゃんとした泳ぎを教えるとしよう。ちなみにソフィーやエレンも「水遊び」をしているだけで特に泳いだりはしていない。


「みんな泳げないんだな。」


 やはりセシルが教えてくれた通り、ベルフィオーレの海水浴とはただの水遊びだったようだ。まあこの世界で生活していくにあたり、泳ぐ必要なんてないのだろう。一般人は街からほとんど出ないしな。まあ冒険者は魔獣退治の依頼を受け、旅はするが・・・ミルナ達は海中に魔獣はいないと言っていた。つまり泳ぐ技術なんて必要ないのだろう。


「そんな事ないですよ。泳げる人もいるとは思います。まあ・・・少ない事に変わりはないですけど。そもそもこの世界はアキさんの世界のように娯楽が発達しているわけではありませんから。」


 むしろアキの世界が異常なんだとセシルが言う。


 それはアキも同感だ。正直地球の人々があれだけ娯楽に力を入れているのは本当に凄いと思う。どれだけ余暇を快適に過ごせるかに命をかけている人もいるくらいだ。地球で暮らしていたアキですら感心するのだから、ベルフィオーレの人達からしたら信じられない事なのだろう。


「まあ・・・いい機会だ。みんなも泳げるようになろう。」


 泳ぎは遊びと言えば遊びだが、泳げるようになっておいて損はない。いざという時、役に立つ技術だしな。


「アキ。」


 急にルティアに声を掛けられた。どうしたのかとルティアの方を見ると、どこか不機嫌そうに頬を膨らませている。


「どうした、ルティア?」

「アキ。私は泳げる。」


 どうやらルティアは泳げるらしい。アキが「うちの子達は全員泳げない」と一括りにした事が気に入らなかったようだ。


「そうなのか?」

「ん。めちゃ早い。えっへん。」


 誇らしげにそう言い放つルティア。


「じゃあ後で競争するか?」

「する!しょうぶ!」


 これで泳ぎを教えるのとは別の楽しみが出来た。それにルティアが泳げるのなら、ベルフィオーレの泳ぎがどういうものか知る事が出来る。面白い泳法なら、むしろアキの方が教えてもらいたいしな。


「じゃあそろそろ泳ぐかー」


 浜辺でだらだらしているのも悪くないが、いい加減ソフィー達、海で泳いでいる組が、痺れを切らして文句を言いに来そうだ。そうなる前に泳ぎに行くとしよう。


 アキは椅子から立ち上がり、早速海へと向かう。


「「「はーい!」」」


 ベルやセシル達もタタタとアキの後をついて来る。


 さて、ベルフィオーレの海をうちの美少女達とおもいっきり楽しむとしよう。

挿絵(By みてみん)


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