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「うん、あれだ・・・かわいい。」
ソフィーの水着は上下別々のセパレートタイプ。色は薄緑で、ソフィーが普段愛用している私服と同じ色をしている。
「えへへー、よかったですー!」
アキが褒めると嬉しそうに飛び跳ねるソフィー。
まあ喜んでくれるのはいいんだが、その度に胸がたゆんたゆんと揺れる。ミルナほどではないがソフィーも豊満な胸の持ち主だ。そう言う意味でも目のやり場に困る。それにそれがなくともソフィーはスタイル抜群。すらっとした長い足、ほどよく引き締まった腕やお腹。冒険者稼業をしているおかげだろう、無駄な贅肉が一切ない。一言で今のソフィーを表すなら、誰もが振り向く最高の女だ。
「似合ってるよ。」
「えへへー、嬉しいですー!」
「でもソフィーは恥ずかしくないのか?」
水着を着ようと言った時、セシルやリオナは恥ずかしそうにしていたが、今のソフィーにそんな様子は微塵も感じられない。むしろ堂々とし過ぎているくらいだ。
「なんでですー?」
不思議そうに首を傾げるソフィー。
「リオナ達は水着なんて嫌だって言ってただろ?」
「そういやそんな事言ってました。でもこれ、普段の格好とそんな変わらないですよー?エレンってこんな格好してません?」
うん、アキもそう思う。特にエレンの普段着なんかは水着にパーカーを羽織ったような格好だし、正直変わらないと言えば変わらない。ただソフィーに関してはかなり露出度が上がったと言える。
「でもソフィーはそこまで足やお腹を出したりしないだろ。」
「そうですけど、別に恥ずかしくはないですよー?アキさんになら見られても平気ですしー。」
そんなことより早く遊びましょうと急かすソフィー。
どうやら恥ずかしいとかそういう細かい事はどうでもいいらしい。
「恥ずかしいとか考えてる暇あったら遊びましょー!せっかく海に来てるんですから遊ばないと損ですー!」
いかにもソフィーらしい考えだ。
「そうだな、いくか。」
だがその考えにはアキも賛成だ。
「はーい!アキさんを独り占めですー!」
「独り占め?え、ミルナ達は?」
そう言えば突撃して来たのはソフィーだけ。ミルナ達の姿がない。
「はい!着替えたけどやっぱり恥ずかしいってリビングでウジウジしてますー!」
なるほど、完全に吹っ切れているのはソフィーだけらしい。
だがさすがに「そうか、じゃあ2人で遊ぶか」という訳にはいかない。
それにソフィーは今、全員ちゃんと水着に着替えていると言った。
「つまりミルナ達がいるリビングへ行っても問題ないんだな?」
「ないですよー?でもそんな事しないで私と遊びましょー!」
ソフィーはミルナ達が恥ずかしがって引き篭もっているのをいいことに、アキと2人きり海デートをしようという魂胆らしい。
「それも悪くない・・・けどせっかくだから皆で遊ぼうな?」
「むー・・・でもまあ、それもそうですねー。では・・・いきましょー!」
ソフィーはなんだかんだで聞き分けがいいから助かる。よく暴走する事にさえ目を瞑れば、ソフィーは清純美少女エルフだ。まあ問題なのはその暴走がソフィーの行動の9割を占めている事だが。
「アキさん早くー!こっちですー!」
「はいはい、今行くって。」
リビングの方へと駆けていくソフィーを足早に追いかける。
しかしこの勢いでリビングに突撃して本当に大丈夫だろうか。正直エレンあたりにボコボコにされそうな気がするんだが。
「だがいざいかん。」
エレンに殴られようが、ベルやセシル達に罵られようが、うちの子達が水着を着ているのだ。そんなエデンのような場所があるのだから男としては行くしかないだろう。
――バーン!
リビングの扉の前に着いた途端、ソフィーが扉をおもいっきり開け放つ。
アキとしては、万が一着替え中だった時の可能性を考え、先にソフィーに入ってもらって様子を見てもらおうと思ったのだが・・・さすがソフィー、躊躇のかけらもなかった。
「ミルナさんー!エレン!リオナー!」
そして止める間もなくリビングへ飛び込むソフィー。
「え!?ソ、ソフィー?どうしたんですの!?」
「なによ!?どうしたのよ!」
「ソフィー?なんか嫌な予感がするんだけどどうしたの・・・?」
驚くミルナとエレン、そして不安そうなリオナの声がリビングから聞こえてくる。
「ふふふー!アキさんをつれてきましたー!」
「「「・・・はい?」」」
そう言ってソフィーは一旦リビングから出てきたかと思えば、手を掴まれ、無理矢理リビングの中へと押し込まれた。
「みんな、きたぞ!」
正直まだ心の準備が出来ていなかったが、こうなった以上はやけくそだ。アキもソフィーの真似をし、気合を入れて叫んでみる。
「「「・・・」」」
ミルナ達は何が起こったのか理解出来なかったらしい。笑顔のまま氷のように固まっている。
そしてしばしの沈黙の後・・・
「きゃああああ!アキさん!なんで!なんでいるんですの!!!」
我に返ったミルナは水着姿を隠そうと、必死に手で胸や足を隠そうとしているが、正直まったく意味がない。むしろ余計エロく見えるからやめて欲しい。
「ア、アキのばか!なんでくるのさ!!!」
「アキさん!の、覗きは感心しませんよ!」
「ふえええ、見ないでくださいいいいいい!」
ミルナに続いてリオナやベル達も顔を真っ赤にして叫ぶ。
だがうちの子達が水着で狼狽する姿は悪くない。むしろ最高だ。
「うむ、良い眺めだな。」
――ドーンっ!!!
アキがそう呟いた瞬間、何かに思いっきりタックルされた。
痛い。滅茶苦茶痛い。
一体なんだと思い下を向くと、銀髪のツインテールが見えた。
エレンだ。
「へ、変態!この変態!ってこっち見るな!変態!ぶっころしゅ!!」
「あ、今『ぶっころしゅ』って言った?噛んだ?ねえねえ噛んだ?」
「うっさい!!!死ね!今すぐ死ねええええ!ぶっころすうううう!!!」
その後アキは予想通り、エレンにボコボコにされた。そして余計な揚げ足を取った分、いつもの3割増しで痛かった。だが悔いはない。エレンの「ぶっころしゅ」は可愛かった。