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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十一章 故郷巡り
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「セシル、とにかく水着を着てみないか?」


 ダメ元で頼んでみる。万が一という事もあるからな。


「ふぇ!?き、着ませんよ!!!」

「水着がないのを心配しているのか?なら大丈夫だ。ないなら俺が作ってやる。」


 水着くらい、多分作れる。それに最悪アリアに頼めば何とかなりそうな気もする。


「そういう心配はしていません!アキさんは破廉恥です!変態さんです!」


 兎耳をピーンと立てながら首を横にブンブンと振るセシル。


 だが破廉恥とは失礼だな。


「俺の世界では泳ぐときはあれを着るのが普通なんだが?変態は失礼だろ。」

「そ、それはそうかもしれないですけど!!!」

「じゃあ着るよな?」

「・・・えっと・・・」

「俺は水着姿の兎を待ちわびているんだ。」

「・・・せん!!!絶対着ませんからあああ!!!」

「何故だ。全世界が待ち望んでいるのに。」

「そんなの余計嫌ですから!騙されませんからね!絶対!絶対着ませんからね!!」


 セシルが顔を真っ赤にしながら叫ぶ。


「残念。あと一押しが足りなかったか・・・」

「あはは・・・アキ、一押しっていうより説得方法が間違ってるからね?」


 リオナが呆れ顔だ。


「え?どこが?」

「うん、もういいかな。アキに説明しても無駄な気がするし・・・」


 そう言ってリオナは深い溜息を吐く。


「ん?じゃあリオナが着るって事でいいのか?」

「なんで!?着ないよ!?そう言う意味で言ってないのわかるよね!?」

「俺は水着姿の狼を・・・」

「それもうさっきやった!やったやつ!」


 同じこと繰り返さないでよねとリオナが叫ぶ。


 だがアキとしては何とかしてうちの子達に水着を着てもらいたい。


 まあ男としては当然の望みだろう。


「じゃあ俺が着たらリオナは着る?」

「えっ・・・アキは着るの・・・?」

「まあ泳ぐ時は水着を着るのが普通だと思ってるしな。」


 むしろアキの中ではそれが常識だ。というか地球で暮らしていた人間なら誰もがそう認識しているだろう。


「そ、そうなんだ・・・んー、まあ・・・アキが着るなら・・・いいけど・・・」


 リオナがぼそぼそと小声で呟く。


 よし、とりあえず言質は取った。


「当然セシルもな?」

「私もですかああああ!?」

「当然だろ。勿論ベル達もだ。」


 今のやり取りを聞いていたであろうベル達の方を見る。


「わ、わかりました・・・アキさんがそうおっしゃるなら・・・」


 ベルは頬を少し赤く染め、小さく頷く。


「まあ俺達しかいないんだからいいだろ。」

「あ・・・そっか。うん、それなら・・・いいかな?」


 リオナの表情が少し明るくなる。やはりリオナは他人に肌を見せるのは抵抗があるのらしい。ただミルナとかソフィーが抵抗するのは正直よくわからない。


「ミルナ、エレン。」


 喧嘩していて話を一切聞いていなかったであろうそんな2人に声をかける。


「なんですの!」

「なによ!」


 もの凄い形相で睨みつけてくるミルナとエレン。美少女が台無しだ。


「2人は水着、どう?」

「着ませんわよ!?」

「はあ!?嫌よ!」


 やはりアキの話なんて一切聞いていなかったらしい。


「じゃあ水着は着ないんだな?」

「当然ですわ!」

「当たり前でしょ!」

「ふーん?俺は着るし、リオナやセシル達も着るのに?じゃあ2人だけ仲間外れだな。俺達は海を楽しんでくるから2人は仲良く砂浜で遊んでるといいよ。」


 敢えて煽ってみる。この2人には懇切丁寧にお願いするより、こうやって挑発する方が効果的だ。まあちょっとわざとらしかった気もするが。


「なっ・・・!ちょっと待ちなさい!わ、わかったわ!わかったわよ!着るわ!着ればいいんでしょ!そしてミルナだけ仲間外れにすればいいのよ!」

「ちょっとエレン!アキさん、私も着ますわ!私は喜んで着させていただきますわ!エレンは嫌々なので私の方が素敵ですわよね!!!」

「ミルナ!!あんた喧嘩売ってるのね!!!」

「うるさいですわ!お互い様ですわ!!」


 うーん、なんというか本当にこの2人はチョロいな。


 まあ面白いからいいけど。


 とにかく、これで全員水着は着てくれるだろう。


「アリア、水着作るの手伝って。」


 ただ水着を着ると決まったのはいいが、それの準備をしなければ。さすがに全員分をアキ1人で作るのは無理だ。スリーサイズも聞かなきゃいけないし、ここはアリアの手を借りたい。うちのメイドなら「スリーサイズ?当然把握しております。」くらいは言いそうだしな。


「はい、わかりました。」

「ちなみにみんなのサイズは・・・」

「当然把握しております。」


 うん、やっぱり。


「あ、生地の準備とかもまかせていい?」

「はい、全てお任せください。」


 さすがだ。うちのメイドに万事抜かりはないらしい。


「とりあえず海に到着したらとりかかろう。」

「わかりました・・・あ、アキさん、もうすぐ到着するみたいですよ?」


 アリアがそう言うと同時に馬車の速度が落ちた。


 どうやら丁度到着したらしい。


 いよいよ海だ。バカンスだ。今回は本当にただの遊びだし、面倒な事は全部忘れて楽しむとしよう。

挿絵(By みてみん)

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