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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十一章 故郷巡り
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30

「アキさん、あちらに見えるのが資料館ですわ。」


 ミルナが前方を指差しながら教えてくれた。


 宿を出て、馬車に乗り移動する事数十分。どうやら目的地に到着したらしい。


「へえ、立派な建物だな。」


 馬車の窓からミルナが指差す方に目を向けると、白い建物が見える。どこかの神殿ではないかと見間違うくらいに立派な建物だ。領主館があれだけ派手だったのだから、資料館も同じように金ぴかかと思ったのに、全然雰囲気が違う。領主館はただただ派手だったが、資料館は荘厳と言った感じだ。


「アキさん!今、『領主館は金ぴかだったのにおかしいな?』と思いましたわね!」

「え、あ、うん、思ったけど。」

「ですわよね!あれと一緒にしないでくださいませ!資料館は私が監修したんですのよ!」


 ああ、そうだった。この資料館はミルナの監修だった。さすがにミルナがあんな趣味の悪いデザインを許すはずがないか。


「ちなみにミルナが監修してなければどうなってたんだ?」

「えー・・・そ、そうですわね、普通の資料館になっていたかと思いますわよ?」


 ミルナが気まずそうに呟く。


「なるほど・・・初期のデザインは領主館並みに派手だったんだな?」


 そしてそれをミルナが必死に止めたと言う訳だ。


「仕方ないではないですの!お父様は派手好きなんですもの!!!」

「うん、まあそうだろうな。」


 もしかしてミルナが監修した理由・・・これ以上レインバースに派手な建築物を増やさない為、仕方なくやっただけではないだろうか。


「お父様の趣味がアレな事は領民の方々も重々承知で・・・皆さんが私に『もうあれはやめてくれ!』と必死に懇願してきたんですの。ですので私が先陣を切って監修したんですわ!」


 なんかミルナは偉そうに言っているが、別にミルナが率先して監修したわけではないようだ。あのぐーたらなミルナがそんな意欲的に仕事するわけないのでおかしいとおもったが・・・そういうことらしい。


「ミルナは家でだらだらしていたかったのに、仕方なく仕事をしたと?」

「ええ、そうなんですわ!お父様がもう少しまともな感性を持っているなら私は家でごろごろ・・・って何を言わせるんですの!?」


 うん、やはりミルナはミルナだった。


「ミルナがダメ人間だと改めてわかったところで、早速資料館へ行くか。」


 それだけ言い残し、アキは馬車から降りる。


「「「はーい!」」」


 エレン達も元気よく返事をし、アキの後をついて来る。


「ま、待ってくださいませ!?私は駄目人間ではありませんわ!そこだけは否定・・・ってアキさん!アキさん!おいてかないでくださいませ!!!」


 そして涙目になりながら追いかけてくるミルナ。






――1時間後


「いかがでした?レインバース領の歴史は?」

「結構ちゃんとしてたな。勉強になったよ。」

「ふふ、それはよかったですわ。」


 そんなこんなでレインバース領の資料館を1時間くらいかけて見て回った。


 いきなりこんな大所帯でお邪魔して迷惑ではないかと心配したが、ミルナがいたおかげで、全てがスムーズに進んだ。


 まず、ミルナが資料館に入ると、すぐに館長が飛んできた。そしてアキ達が大所帯だと知ると、すぐに資料館自体を貸し切りにすると言ってくれたのだ。正直そこまでする必要はないと思ったが、うちにはベルがいる。変に騒ぎになるよりはましだと思い、ありがたく館長のお言葉に甘える事にした。


 その後、館長には外してもらい、ミルナの案内で資料館見学がスタートした。貸し切りのおかげで、のんびりとこの街の歴史を勉強する事ができた。


 ちなみにこの街の歴史だが、掻い摘んで説明するとこうだ。


 数百年前、ミルナの祖先である初代レインバースがこの地を開拓した。同時期にエスぺラルド王国が誕生。そしてその際、初代国王からこの地を下賜され、それ以降レインバース家がこの領土を守り続けている。


 この街に着いた際、ミルナに説明された通りだ。


 この資料館には、当時の資料らしきものが色々と展示されており、開拓からレインバース繁栄までの歴史がわかるようになっていた。


 ただ・・・それは最初の1/5くらいで、あとはセラストリアがどれだけ偉大な功績を残したかが大々的に宣伝されていただけだった。ミルナも恥ずかしそうに「ここから先は見ないでくださいませ、身内の恥ですので・・・」と後半の展示室をアキ達に見せないよう必死に止めてきた。というかそんな嫌なら監修した時点で止めればよかったのにと思ったが・・・まあセラストリアが押し通したのだろう。


 ただ、セラストリアがレインバース繁栄の為にやって来た事は色々と勉強になった。ミルナは身内の恥だと言うが、結構ちゃんと領主をやっているのが伺えた。


 一例をあげるなら、観光業。これはどうやらセラストリアの代から始めたことらしい。あとは海産物の生産、この地の気候に適した農作物の栽培。セラストリアが相当色々なことに力を入れていたのがわかる。ちなみにミルナ曰く、セラストリアの代でこのレインバース領はかなり繁栄したらしい。先代に比べ、徴税の額が数倍にまで跳ね上がったのだとか。


 つまりレインバースをここまで繁栄させたのは間違いなくセラストリアの手腕だと言える。資料館に展示されている資料は誇張されているわけではなく、全てが史実という訳だ。


「ミルナの父親はかなり優秀な領主だとわかったよ。」


 領主館の金ぴか趣味だけは一生理解出来る気はしないが、セラストリアが領主として有能なのはわかった。


「そうですわね・・・派手好きの趣味さえなければ言う事ありませんのに・・・」


 溜息を吐きながらミルナが呟く。


 どうやらミルナも同じことを考えていたらしい。


「とにかく色々と勉強になった。これで自分の領地も何とか出来そうな気がしてきたよ。」

「ふふ、それはよかったですわ。」


 とりあえず資料館見学はこれで終わりだ。次はどこへ行くとしようか。

挿絵(By みてみん)

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