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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十一章 故郷巡り
784/1143

9

 ――レインバース領主館


「貴様がうちのミルナミアを誑かしたのか!!!」

「違いますわ!お父様!」

「お前は黙っておれ!家出したと思ったら・・・こんな男に騙されておったとわ!」

「だから違うといっていますわ!聞いてくださいませ!!!」


 今、アキはミルナ、アリア、セシルを連れ、ミルナの実家に来ている。


 そして現在、ミルナの父親であろう男性に怒鳴られているのだ。


 何故こんな展開になったのか。説明はいるだろうか。


 まあ一応言っておくと、アキ達がミルナの実家に到着すると、当然のように大騒ぎになった。まず「家出したお嬢様が帰って来た」と使用人が大騒ぎし、それがミルナの両親に伝わる。そして件の両親が登場すると、何故かミルナが開口一番に「この人が私の婚約者ですわ!」とアキの存在をアピールしやがった。


 その結果・・・どういう事になるかは誰もが予想出来るだろう。


「ミルナミア!貴女は男を漁る為に家出したのですね!なんて親不孝な娘なんでしょう!私は悲しいですよ!」


 ミルナの母親であろう女性がミルナに向かって叫ぶ。


「ち、違いますわ!私は冒険者として生きていきたかったので家を出たのですわ!」

「では何故婚約者とやらを連れて今更帰ってきたのですか!」

「そ、それには深い理由がありますの!!!」

「言い訳は許しません!ミルナミア!貴女はあとで折檻です!」

「嫌!それだけは嫌ですわ!アキさん!早く何とかしてくださいませ!!!」

 

 ミルナが涙目で訴えかけてくる。


 正直親子喧嘩に巻き込まないで欲しい・・・と言いたいところではあるが、無関係とは言い切れない。というかずっと喧嘩されても永遠に話が進まなさそうだし、とりあえず全員落ち着かせるとしよう。


「ミルナのお父さん、お母さん、とりあえず落ち着いて話をしましょう。」

「貴様に父親と呼ばれる筋合いはないわ!切り捨ててくれる!」

「そうです!どこの馬の骨ともわからない男にうちの大事なミルナミアを渡すわけありません!お母様なんて呼ばないでください!」


 うん、こうならないよう、アキは「ミルナの」ってつけたんだが、頭に血が上っているミルナの両親にはあまり意味がなかったようだ。


 とりあえずこれはアキやミルナが何を言っても無駄だろう。父親も母親もミルナに聞いていた通りの性格。感情的になりやすく、人の話を聞かない。ちょっとだけミルナに似ている気がする。まあミルナの親なのだから当然か。


 ここは早速用意していた手札を切るとしよう。


「ベル。」

「はい、アキさん。」


 アキが呼ぶと、アリアの後ろからメイド服姿のベルがスッと姿を見せる。


 そう、実はアリアとセシルだけではなく、ベルにも同行をお願いしていたのだ。そして王女だとバレないよう、アリアのメイド服を着てもらっている。一国の王女にメイド服を着させるのはちょっと憚られたが、ベルは「喜んで!」と二つ返事でOKしてくれた。むしろメイド服をベルに貸さなければいけなかったアリアの方が嫌な顔をしてくらいだ。


 ちなみにベルのメイド服姿は滅茶苦茶可愛い。普段は綺麗なドレスばかり来ているからか、よけに新鮮に感じる。まさにギャップ萌えとはこのことを言うのかもしれない。それを本人に伝えたら、満面の笑顔で「では毎日着ますね!!!」と言ってきたので、全力で止めた。さすがに「王女にメイド服を着させる変態趣味」の称号は欲しくないからな。でもあまりに可愛いので、偶に着てくれとだけお願いしていおいた。


 さて、ベルのメイド服姿の品評はともかく、ベルの登場でミルナの両親も話を聞いてくれるはず・・・というのがアキの計画だ。ミルナの話では両親は「貴族」である事に誇りを持っていると言っていた。それなら貴族の頂点であるベルの存在は絶対だろう。


「ふふ、ミルナさんのお父さんにお母さん、落ち着いてください。」


 ベルが上品に微笑みながら語りかける。


「なんだお前は!メイドがしゃしゃり出てくるな!」


 だがミルナの父親がベルを一喝する。


「ミルナミア、貴女が言う婚約者?という方は一応貴族のようですが、使用人の教育も出来ないのですか?やはり碌な男ではありませんね。」


 そしてミルナの母親がアキを貶す。その瞬間、ベル、アリア、セシルの表情がもの凄く険しくなったが、ミルナの両親は気付いていない。


 しかしベルが王女だと気付かないのか。市井の民と違い、さすがに領主であるミルナの両親はベルの顔は知っているはず。いくらベルがメイド服を着ているとはいえ、普通はわかると思うのだが。


「あら、私の事がお分かりにならないのですか?」


 ベルがくすくすと笑う。


 ただ目が笑っていない。いつものベルを知っているからわかる。今のベルは滅茶苦茶怖い。


「使用人風情の事など知る訳ないだろう!」

「ふふ、以前お会いした時とは違い・・・レインバース辺境伯も随分偉くなったのですね。ご無沙汰しております、アイリーンベル・エスぺラルドです。数年振りでしょうか? 」


 淡々と事実だけを口にするベル。


 うん、やはりベルは怒らせると怖いな。

挿絵(By みてみん)

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