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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十一章 故郷巡り
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 それからもクライスがしきりにアイリーンベル王女歓待パーティーやら、ミルナミア帰還晩餐会などをを勧めてきたが、全て丁重にお断りした。かなりしつこかったが、最終的にクライスは渋々と引き下がってくれた。まあベルやミルナが絶対にいりませんと言ってくれたのが決め手だったのだろう。


 そんなクライスを振り切り、アキ達はやっと部屋まで辿り着いた。


「おー、ミルナの言う通り絶景だな・・・」


 宿の部屋の窓から外を眺めると、レインバースの街が一望できる。そして右手には大海原が広がっていた。


 海に浮かぶ街、レインバース。本当に綺麗なところだ。


「ふふ、アキさんに気に入って貰えて嬉しいですわ。」


 故郷を褒められたのが嬉しいのか、ミルナが楽しそうに笑う。


「しかしこっちも・・・本当に凄いな。」


 改めて宿の部屋を見渡す。


 凄いの一言だ。


 何が凄いって、まず広い。ありえないくらいに部屋が広い。もう宿で一部屋借りるとか言うレベルではなく、普通に屋敷を1つ借りている感じだ。まあそれもそのはず。この宿は4階建てらしいが、その最上階のフロア全てが1つの客室という扱いらしいからな。


 そして部屋の内装。こちらもかなり豪華だ。ただ決して金ぴかで派手だったりはしない。上品な調度品が上手く配置されており、とても気品のある豪華さだ。どこかの領主館とは雲泥の差だとだけ言っておく。


「あ、お部屋も気に入りました?実はこの宿の内装は私が考えたんですの!」


 どうやらこの宿はミルナの監修らしい。だがそう言われて納得した。確かにこの上品な豪華さはミルナが好きな雰囲気だ。まああくまで「豪華」にするとしたらだが。当の本人の私室はもの凄くシンプルだし、本来はそういうのが好みなのだろう。


「いいセンスしてると思うよ?」

「ふふ、アキさんにそう言って貰えるなら頑張った甲斐がありましたわ!」


 ともかくのんびり出来そうな宿でよかった。まあミルナはそう言う意味でも「おススメ」と言ったのだろう。


「さて・・・」


 それよりこれからどうするか。


 すぐにミルナの実家に行ってもいいのだが、今到着したばかりだ。もう少しのんびりしたいという気持ちはある。


「アキさん!ではデートへいきましょう!おススメの場所をご案内しますわ!」


 ミルナが是非是非と言ってくるが、さすがにそれはない。


「いや、行かないから。実家に行かないといけないだろ?」

「べ、別に実家はついででいいですわ!デート!アキさんとのデートの方が大事ですもの!そうですわ!アキさんとのかけがえのない時間を過ごす方が大切ですもの!」


 なんかミルナが綺麗事を言って煙に巻こうとしている。これはどう考えてもデートに連れ出してそのまま有耶無耶にしてしまおうという魂胆だ。ここまで来て諦めの悪い・・・どう足掻いても実家には行かなきゃいけないのだからいい加減諦めればいいのに。


「デートも大事だけどミルナのご両親への挨拶も大事だから。」

「そ、それはそうですが・・・!」

「だからいい加減諦めろ。」

「うぅ・・・はいですわ・・・」


 やっと観念したようだ。


「まあ俺がついてるから大丈夫だ。」

「は、はい・・・!」


 なんだかんだでアキはミルナの味方だ。もしミルナが両親と仲違いする事になっても、アキはミルナの意思を尊重する。それがどれだけ倫理的に間違っていようが、ミルナを支持する事にしている。アリアやベルが「アキさんは絶対」というように、アキもそうなのだ。


「じゃあ少し休憩したら行こうか。アリアとセシルは一緒についてきてくれ。」


 2人は従者的な立ち位置として連れて行く。一応侯爵になったわけだし、側仕えの1人もつれていないと不味いとベル達に言われたのだ。そう言う意味での適任者はやはりアリアとセシルだろう。


「はい、お仕えさせて頂きます。」

「わかりました!」


 アリアとセシルは喜んでと頷いてくれた。


「あとベルには頼みがある。」

「え、私ですか?」


 不思議そうに首を傾げるベル。


「うん、ベルじゃないとダメなんだよね。」


 大丈夫だとは思うが、万が一ミルナの両親との話がこじれた時の為の手は打っておきたい。それをベルにお願いしたいのだ。


「はい、それなら喜んで。」


 よし、これで残るはソフィー達。


 だが正直彼女達にして貰う事はない。


「ソフィー達はどうする?留守番していてもいいし、観光してきてもいいよ。」


 アキが聞くと、ソフィー達は一瞬だけ目を交わし、頷き合う。


 そして代表してソフィーが答える。


「私達は留守番してますー!」

「多分暇だぞ?留守番でいいのか?」

「お出掛けはしたいですけど・・・アキさんがいないならつまらないですー!」

「いや、そんな事はないだろう。」


 さっきもミルナが言っていたが、レインバースは冒険者向けの観光業に力を入れている。つまりソフィーやエレン達にはうってつけの場所だ。


「いいのよ。せっかく観光するならアキと行きたいの。わかりなさい、そのくらい。」

「そうそう、そう言う事だね。」

 

 エレンとリオナが口を揃えて言う。


 ちょっと照れ臭いが、そう言われるのは普通に嬉しい。


「ちなみにエリスもそれでいいのか?」

「ん?私はなんでもかまわないぞ。まあ海岸で訓練とかしたいと思わなくもないけど・・・別にそれは後でアキとすればいいのだ!」


 うん、それは普通に遠慮したい。訓練は大事だとは思うが、せっかくのんびり旅行に来ているのだから今日くらいはゆっくりさせて欲しい。


「そ、そうか・・・」

「うむ!あの海岸は筋力を鍛えるのにうってつけなのだ!アキ!期待するのだ!」


 さすが戦闘狂。海が綺麗とかそういうのではなく、まずは訓練効率に目が行くらしい。最近はすっかり女の子らしくなったエリスだが、やっぱりバトルジャンキーなのは変わらないようだ。

挿絵(By みてみん)

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