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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十章 音楽祭
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「今日で暫くお別れなんだからスキンシップするのは当然だろ。な、ミコト?」


 アキが朝っぱらからミコトをもふもふしていた理由はこれだ。ミレーを去る前に少しでも新しく雇った使用人達と打ち解けておきたかったからだ。断じて狐をもふもふしたかっただけではない。


「え?あ、はい、そうですね?」


 首をコテンと傾げながらとりあえずといった感じで同意してくれるミコト。


「そう、このもふもふにはちゃんとした理由があったのだ。」

「『あったのだ』ではありません!普通にお話したりするだけでいいでしょう!大体ミコトさん以外にはしてないじゃないですか!!」


 アキは正当性をアピールしたのだが、セシルが兎耳をピンっと立て、再び怒鳴ってくる。


 まあ確かにセシルの言う通り、こうやってもふもふしているのはミコトだけ。というか人見知り3人もふもふ娘はまだアキにあまり近寄ろうとはしてこないんだから仕方ない。少しずつ心は開いてくれているようだが、もふもふへの道はまだ遠いのだ。まあメイに関しては、頼めばOKしてくれそうな雰囲気ではあるが、3人娘のお世話で忙しそうなのでアキが遠慮している。


「大丈夫、他の子達もいつかちゃんともふもふする!!」


 だが安心して欲しい、メイやミヤビ達の事もちゃんと愛でる予定だ。


「そう言う意味で言ってるのではありませんからああああ!」


 お話になりませんとセシルが頭を抱える。その隣でリオナやエリザも「やっぱりアキは病気だよ、変態だよ」と溜息を吐いている。


 しかし病気とか変態とか・・・失礼だな。


「まあ・・・しばらくお別れだし、許してくれ。」


 ミコトのもふもふの尻尾を撫でながら呟く。


 しかしこの尻尾は本当に素晴らしい。もふもふで、毛並みもよく、手触りも最高。一生抱きしめて生活したい。やはり狐はいいものだ。


 とにかくミコトの尻尾の事はさておき、今日ミレーを発つ事は一応ミコト達には話してある。そもそもアキの拠点はエスぺラルド。このミレーの屋敷はあくまで別荘のような場所。だからここを管理するメイド達が欲しかった。


 これをミコト達に説明した時、ちょっとだけ残念そうな表情を浮かべていた。


 何故だろうと不思議に思っていたら、アリアが理由を教えてくれた。どうやらメイドとしては主人の側で仕事する事がなによりの名誉で、最高の幸せなだとか。アキとしてはてっきり雇い主が近くにいないから気楽に仕事が出来ると喜ばれると思ったのだが・・・どうもその辺の考え方が根本的に違うようだ。


 ミコト達の理由とは違うが、アキとしてもミレーを去らなければいけないのは残念だ。勿論「もふもふ出来なくなるから」という理由ではない。ミコト達を雇ったのはたった数日前で、もう留守にしなければならないのが残念・・・というか申し訳ないのだ。雇って数日ということは、一般企業で言えばまだ研修期間。つまりアキがやっているのは、研修期間中に上司が「あとよろしく。俺、当分いないから」と言うのとなんら変わらない。さすがに無責任にも程があるだろう。


 ただアキが留守にする事についてアリアからは「彼女達はメイドです。ご主人様であるアキさんがそんな事気にする必要はりません」と言われたし、ミコト達も「大丈夫です。ご主人様がいないのは寂しいですが、お仕事は問題ありません」と納得してくれている。


「はい・・・そうですね。」


 アキの呟きにどこか寂しそうに返事をするミコト。


「悪いな、ミコト達を雇ったばかりなのに。」

「い、いえ!ご主人様が謝る事ではございません。私達の事はお気になさらないで大丈夫です。あ・・・でも偶にはお顔を見せて頂ければ・・・嬉しいです。」


 ちょっとだけ上目遣いでお願いしてくるミコト。


 狐はやはり可愛い。


「ぐぬぬ・・・あの狐・・・!あざといです・・・!!」


 そんなミコトの様子を見たセシルが何か言っている。


「そうかしら・・・?セシルさんといい勝負よ?」

「だねー・・・セシルが2人いるみたいかな・・・」


 どうやらエリザやリオナからしてみたらセシルも十分に「あざとい」らしい。


 まあそれはともかく、ミコトの言っている「偶には顔を見せろ」についてだ。


 これでもアキはそこそこに忙しい。ユーフレインの事もあるし、領地の内政も待っている。だが正直なところ、顔を見せようと思えば別に毎日でも来られる。転移魔法を使えばいいだけだからだ。


 ただその事はミコト達にはまだ話してない。というか話すべきか迷っている。これ以上この魔法の事を広めるのは得策ではない。今でもミルナ達、ナギやジーヴス、そしてエルミラやアイリス達と結構な人が知っているしな。


「ねえ、アキ君。例の事・・・話しておいた方が良いと思うわよ?」


 するとアキの考えを見抜いたのか、エリザが口を開いた。

挿絵(By みてみん)

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