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紆余曲折はあったが、とりあえず無事ミレーの屋敷で使用人を雇う事が出来てよかった。
ちなみにミコト達は住み込みで働いてくれるそうだ。別に通いでもいいと言ったのだが、孤児院出身のメイ達には帰る場所はないと言われ、ミコトには住み込みで働いてこそ一流のメイドになれるのだと力説された。ミコトが第二のアリアになりそうな気がするのが少々心配だが・・・まあ住み込みで働て貰う分にはアキとしては別段問題はない。彼女達がそれを望むならそれでいいだろう。
「ではアキ様、私達は早速お仕事に入らせて頂きます。あと格好なんですが・・・」
「あ、そうだな。なにか制服のようなものを用意しようか?」
言われて気付いた。使用人になってもらうのだからそれ相応の服を用意しなければいけないだろう。うちのアリアは何故かメイド服を持参していたし、シャルも同様だった。ジーヴスやナギは奴隷商のサラが用意してくれたので、そもそもアキが制服を用意しなければいけないという認識がすっぽり抜け落ちてしまっていた。
「あ、女王陛下が下賜してくださったメイド服があるんですが、よろしければそちらを使ってもいいでしょうか?」
アイリスが既に準備してくれていたらしい。今回は何から何までアイリスの手のひらの上だな。まあ助かるからいいけど。
「うん、いいよ。」
「ありがとうございます。それでは何かありましたらいつでもお呼びください。」
そう言ってミコトやメイ達は一礼し、部屋から出て行く。
「アリア。」
「はい、わかってます。既に一通り説明はしてありますが、念の為に今日1日は付きっきりで様子を見ようと思います。私にお任せください。」
アリアに任せておけば何の心配もない。あとはミコト達が仕事に慣れればミレーの屋敷は完全に任せられる。なんとか音楽祭が終わって帰るまでにはそこまで持って行きたいものだ。
「うん、頼んだ。」
「ありがとうございます。」
そう言ってアリアは嬉しそうに微笑み、ミコト達の後を追うように部屋から出て行った。
「さて・・・アキさん、これでミレーでの用事は音楽祭だけですよね?」
ミコト達がいなくなったタイミングを待っていたかのようにベルが尋ねてくる。
「うん、そうだね。」
てっきりミコト達に関する事で説教でもされるのかと思ったが、どうやら違うらしい。まあそれはもう十分されたか。
「で、でもアキさんの参加は最終日ですよね?明日と明後日は・・・何をするんですか?」
ベルの様子がどこかおかしい。何か不自然だ。
これは・・・あれだな。デートをしろと遠回しに要求しているのだろう。まあものすごく分かりやすかったので、考察するまでもなく、すぐに気付いたが。それに昨日はエリザとデートしたわけだし、他の子達にも言われるだろうなと覚悟はしていた。
「あー、デートするか?」
「はい!!!」
アキが提案すると、ベルが満面の笑みで返事をする。
「ずるいですわよ!私も連れて行ってくださいませ!!」
「ですー!私もしたいですー!」
すかさずミルナとソフィーが「私も私も」と全力でアピールしてくる。
「わかったわかった。じゃあ明日はベル、ミルナ、ソフィーで行こうな。」
なんかもの凄く騒がしそうなメンバーだが、偶にはそういうのもいいだろう。
「仕方ないですね。ではソフィーさんとミルナさんが一緒でも我慢します。」
「はぁ!?それはこっちのセリフですー!性悪王女と一緒でも我慢してあげます!」
「なんですって!」
「なんですー!」
ベルとソフィーが頭を付き合わせて睨み合っている。ミルナもどこか不満気な顔をしているし、こいつらはほんと仲がいいんだか悪いんだかよくわからん。
「あれはほっといて・・・エレンとリオナは明後日一緒にいこうね?」
羨ましそうにミルナ達を見ていた2人にも声を掛ける。
「・・・!し、しょうがないわね!い、いってあげてもいいわよ!!」
口ではそう言ってるものの、滅茶苦茶笑顔のエレン。相変らずのツンデレだ。
「エレン、そこは素直に行きたいって言おうよ・・・」
そしてそんなエレンに呆れ顔のリオナ。
うん、明後日はこの2人だからのんびり出来そうだ。屋敷にいると割と騒がしかったりもするが、いざデートするとなると、エレンもリオナも大人しいからな。
「あ、でもエレン、リオナ、お昼過ぎまででいいか?」
1日デートしたいところではあるが、まだ他の子達もいる。エレンとリオナには申し訳ないが、半日だけにして貰いたい。
ちなみにミルナやベル達に1日時間を割いているのは・・・多分永遠と言い合いをしていてデートにならないからだ。おそらく半日くらいはそれで時間が潰れる気がするしな。あの子らの相手をするには1日くらい時間を取っておかないと、面倒な事になる。
「え、あ、うん、いいわよ?」
「うん、いいよ。」
嫌な顔一つせず、承諾してくれる2人。
この物分かりの良さ。ミルナ、ソフィー、ベルとは大違いだ。この3人に「半日だけね」とか言ったら間違いなくぶーぶー文句を言われる。
「アキ君、今回私はパスするわ。昨日独占しちゃったしね。」
「そっか、ありがとな、エリザ。」
そしてこの猫も良い猫だ。さすがに2日で全員と遊ぶ時間は取れない。それをわかってエリザは遠慮してくれたのだろう。
「ふふ、当然よ。おねーさんだもん。」
まあこの一言で全て台無しだが。
「セシル、エリス、ルティアは明後日の午後な?」
「はい!」
「うむ!」
「ん!」
3人とも嬉しそうに頷く。
しかしルティアがいつの間にか隣にいる。さっきまでいなかったのに、いつの間に出て来たんだろう。まあルティアの名前を挙げれば勝手に出てくると思ってルティアの事は呼んだんだが。
「あの、アキさん・・・アリアさんはどうするんです?今ここにいないから誘われないとか可哀そうです。」
アリアが数に入ってないですよとセシルが申し訳なさそうに尋ねてくる。ただもちろんアキもそれはわかっている。ただアリアに関しては考えがある。
「ああ、アリアは別に誘おうと思ってるから大丈夫。音楽祭の最終日、アリアに付き添ってもらおうと思ってね。」
多分音楽祭参加の当日は色々と手伝いが必要になる。メイドであるアリアなら一番の適任者だろう。だからデートがてら、彼女に音楽祭の手伝いをして貰うつもりだ。
「なるほど!それなら大丈夫ですね!」
納得したのかうんうんと頷くセシル。
「うん、だから大丈夫。さて、それより音楽祭でどんな音楽を流せばいいか決めたいんだけど・・・みんな選ぶの手伝ってくれる?」
今日の予定はもうない。まだ昼過ぎなので今から出掛けてもいいが、ここ数日はちょとばたばたしていたし、ミルナ達と雑談でもしながらゆっくり過ごすとしよう。
「「「「はい!」」」」