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「わかった。とりあえずミコト、メイ、ミヤビ、スズ、アカリはうちで働いてくれると言う事でいいんだね?」
アキが念の為に確認すると、全員が力強く頷いてくれた。
「ありがとう。じゃあお給金とかお休みの話なんだけど・・・」
正直これは悩んだ。いくら払えばいいのか、どの程度休みを与えればいいのかさっぱりわからなかったからだ。アリアやシャルはちょっと特殊なメイドだし、ナギやジーヴスはアキの奴隷だ。だから正式に使用人を「雇う」となった場合、どのくらいが相場なのか全然知らなかったのだ。
一応ミルナ達に事前に相談したところ、彼女達に以前渡した金額は「やりすぎ」との事。婚約者という立場だからまだ許されたが、ただの使用人に生涯給金をポンっと渡すのは駄目らしい。しかも5000金なんて絶対駄目と念を押された。
結果、ベルフィオーレの平均月収1金に少し色をつけて月5金にした。そして休みは週2日・・・でいいと思ったのだが、これも駄目とアリアに怒られた。うちのメイド曰く、「週に2日も休んだら暇で死んでしまいます!」との事らしい。なんだそれ。まあ正直よくわからないが、アリアがそう言うならという事で、10日毎に1日休みを取らせることにした。
「給金は一ヶ月5金、10日に1回休みという条件でどうかな?」
「・・・えっ!?」
アキが条件を提示した途端、口に手をあて、目を丸くするミコト。メイも同様に驚きの表情を浮かべている。ちなみにミヤビ達はよくわからないといった顔で首を傾げている。
しかし驚くと言う事は条件に納得がいかなかったのだろうか。もしかしたらこれは条件を変える必要があるかもしれない。
「あ、条件悪かった?それなら・・・」
ミルナ達は駄目と言っていたが、やはり給金と休みをもっと増やすべきだったのだ。
「ち、違います!逆です逆!ほんとにそんな条件でいいんですか!?」
それはさすがに好待遇過ぎますとミコト。そして使用人なんて普通は休みなんかないし、給金だって雀の涙ほど出ればいい方なんだと必死に説明してくる。衣食住を主人が保障するのだからそれが当然なんだとか。まあ言われてみれば確かにそうかもしれない。
「アキ様!そんなに私達を甘やかしては駄目です!」
そしてもっと待遇を悪くしてくれと懇願された。もうなんか色々とおかしい。待遇をあげろと直談判されるならまだわかるが、待遇を悪くしろなんて言われるとは思わなかった。
「ダメ。この待遇で嫌なら雇わない。」
そもそもベルフィオーレの「普通」なんてアキは知らない。それにそれくらいは払う価値があると思う子達だと思ったから雇うと決めたのだ。
だから待遇を上げる事はあっても、下げる事はない。仕事ぶりに相当問題があったらその限りではないだろうが・・・アイリスの紹介で来た子達がそんないい加減な仕事をするとは思えない。そもそもこの子達に問題があったら、ミレーの女王であるアイリスの面目は丸潰れだ。うちにはエスぺラルドの王女であるベルがいるし、尚更そう思われる。だから中途半端な人を寄越すはずはないのだ。
「そ、そんな・・・!アキ様どうかお考え直し下さい・・・!」
狐耳をペタンとさせ、この世の終わりのような顔で見つめてくるミコト。
可愛い。やはり狐は最高に可愛い。
「じゃあもふもふさせてもらうからその分って事で。」
「それでも貰い過ぎです!私の尻尾にそんな価値は・・・」
「あるに決まってるだろ!!!」
何言ってるんだ、この狐は。
「・・・えぇ?」
アキの言葉に困惑の表情を浮かべるミコト。そしてメイやミヤビ達ももの凄く微妙な表情をしている。一体どうしたんだろうか。
「アキさん!こらっ!メイドさん達を困らせたら駄目でしょう!」
そしてベルに怒られた。
「え?困らせるような事言ったか・・・?」
「困らせるような事しか言ってません!この変態!」
その後、またミルナ達にたっぷり怒られたのは言うまでもないだろう。何故怒られたのかはいまだによくわからないが。
尚、給金と休みについてはそれがアキのやり方だと言う事で無理矢理ミコト達に納得してもらった。最後の最後まで抵抗はしてきたが、「それだけ皆に期待してるんだよ」って一言で黙らせた。そう言われたら「頑張ります」としか彼女達は言いようがないからな。ちょっと卑怯な気はしたが、別に悪い話ではないので、これで押し通した。




