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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十章 音楽祭
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 結局その後、ミルナ達に部屋から放り出された。当然「ここは俺の屋敷で、この子達を雇うのは俺だ」という至極当然の意見は無視された。


 まあ別にそれはいい。アキに代わってミルナ達がこの屋敷のルールについて色々と説明してくれるはずだし、手間が省けるからな。それに女性だけの方がミヤビ達も安心できるだろう。あとアキの「もふもふさせて?」は「結婚してくれ」ではないという事もちゃんと伝えてくれているはずだ。


 だから正直助かると言えば助かる。


 ただ・・・邪魔者のように放り出すのはちょっと酷くないだろうか。それにまだ給金や待遇などの雇用条件の話をしてない。なのに「うるさい、お前はもう用済みだ」と言わんばかりの勢いで追い出された。これを尻に敷かれている状態というんだろうか・・・


 さて、それよりミルナ達があの子達に色々話している間に、これからの予定を確認しておこう。


 四大国会議は無事終了。あれからアイリスやエルミラ達から呼び出しは来ていないので、特に問題は起こっていないと言う事だ。エリザの母親への挨拶も済ませたし、残すところは音楽祭への参加だ。


 色々ばたばたして忘れかけていたが、ミレーに来た当初の目的は、ベルフィオーレにちゃんとした音楽という文化を浸透させる為。会議はそれに合わせて開催しただけだ。以前アキが地球から持ってきた音楽をアイリスに聞かせたところ、彼女はそれに感銘を受け、是非広めて欲しいと言ってきた。アキとしてもそれには大賛成だったのだが、「アキさんが一番詳しいのですからアキさんが参加して広めるべきです」と無茶振りをしてきた。まあ至極真っ当な事を言っているので断れなかったわけだが。


 ただアキとしてはあまり大勢の前で歌を披露するとかしたくないのが本音だ。前も言ったが、アキは別に歌うのが上手いわけではない。そう言う意味ではプロ並みのエレンあたりにお願いしたかったのだが・・・「絶対イヤ。だって目立ちたくないし」と言われた。まあアキも同じ理由で嫌なのだから、エレンにやれと無理強いは出来ないない。


 というわけでどうするかだが・・・今のところまったくのノープランだ。


 一応音楽祭は明日から始まるが、アキの出番は最終日の3日後。まだ少し猶予はある。それまでにどうするか考えなければならない。


 まあそうは言っても方法なんてアレしかない。アキやミルナ達が歌ったり演奏したり出来ないのであれば、生演奏は当然無理。つまりアキが地球から電子タブレットにいれて持ってきた音楽を流す。これしかないだろう。


 ちなみに電子タブレットは今も現役だ。ミルナ達は相変わらずそれで毎日読書や音楽鑑賞に興じている。正直それだけ使われていれば壊れても仕方ないと思っていたのだが、ミルナ達は滅茶苦茶丁寧に扱ってくれるので傷一つ付いていない。むしろアキの方がぞんざいに扱っているくらいで、よく怒られる。「もっと丁寧に扱ってください!壊れたらどうするんですか!!!」と。なんか納得いかないが、言っている事は正しいので反論は出来ない。


 うん・・・嫌な事を思い出してしまった。そしてやっぱりアキの扱いが日に日に雑になっている気がする。まあそれだけ親密になったのだと言えなくもないが。


「とりあえず、音楽祭はその方向でいいかな。」


 あとは何の音楽を使うかだが・・・それはミルナ達と相談して決めればいい。この世界の事はあの子達の方が詳しいからな。


「アキさん、お待たせしましたわ。」

「うん?」


 そんな事を考えていたら、ミルナがアキを呼びに来た。


 どうやら女子会とやらは終わったらしい。


「まだあの子達にお話する事ありますわよね?」

「うん、あったのにミルナ達が追い出したんだろ。」

「そ、それは仕方ないんですの!」


 全然仕方ない事なんてない。まあこんなところで押し問答しても無駄なので、これ以上は突っ込まないが。


「しかしミルナが呼びにくるのは珍しいな。いつもこういう時はアリアだろ?」


 アキの身の回りの世話は基本的にアリアがしてくれる。というかアリアが断固として他の子にはさせないと言った方が正しい。メイドの矜持なのだとか。よくわからないが、そう言う事らしい。


「はい!私がこの権利を勝ち取ったんですの!」


 なんだ、そのしょうもない理由は。


「まさかとは思うが、いつもの争奪戦?」


 メイやミコト達の前でアレをやったのだろうか。


「当然ですわ!!」


 どうやらやっぱりやったらしい。


 というかそんな誇らしげに言う事じゃないぞ。アキですらあの光景にはちょっとドン引きなんだからな。年頃の女子がしょうもない事で必死に睨み合ってる光景・・・うん、ちょっとどころじゃないな。普通にドン引きだ。


「とりあえず、戻るか。呼びにきてくれてありがと。」

「はい。アキさんの事はばっちり説明しておきましたので安心してくださいませ!」


 一仕事終えたと言わんばかりの晴れやかな表情になるミルナ。ただそんな顔で言われると逆に安心出来ない。一体どんな説明をしたのだろう。変な事を言ってないといいが・・・この子達の事だ、間違いなく言っている気がする。

挿絵(By みてみん)

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