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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十章 音楽祭
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21

「と、とりあえず次はアカリだ。メイ、アカリの種族は?」


 これ以上スズに話しかけても逆効果だろう。スズもミヤビもまだ心を開いてくれていないしな。まあ会って数十分しか経ってないし当然か。こればかりは時間をかけて懐いてもらうしかなさそうだ。


 それより最後の使用人候補であるアカリについてだ。彼女はアリアのような黒色の髪と瞳をしている。そして当然彼女も獣人。ただスズ同様、種族はよくわからない。スズやミヤビとは違った感じの獣耳がついており、尻尾は・・・ない。まあ無いのかセシルのように見えないだけなのかはわからない。


 ちなみにセシルも兎だから当然尻尾はある。見た事はないけど。なんでも服の下にもふもふの丸い尻尾があるらしい。それを聞いた時、勿論触らせてくれと必死にお願いしたのだが、「絶対駄目です!変態さんですか!?」と怒られた。でもいつか絶対モフってやる。


 まあセシルの事はさておき、気になるのはアカリの種族だ。


「はい、アカリは熊人族です。」


 おお、なるほど・・・熊か。


 ミヤビとはまた違った丸みを帯びたもふもふな耳。言われたらわかる、あれは確かに熊だ。そして・・・熊なら間違いなくセシルのように丸い尻尾があるに違いない。


 うん、悪くない。これは採用するしかないだろう。


「メイが面倒みてくれるだろうし、3人とも雇おうと思う。」

「は、はい!その辺は安心してください!」


 メイが任せてくださいと力強く宣言する。


 まるで本当の姉妹のようなだ。4人を見ているとそう感じる。そしてメイはそんな可愛い妹が心配なのだろう。だからここで一緒に働こうと誘って今日来たに違いない。


「アキ様、私もおります・・・!」


 ミコトが「忘れないでください」と少し拗ねたような表情を浮かべている。


「わかってる。ミコトもこの3人からしたらお姉さんだ。メイと2人でしっかり面倒を見てあげて欲しい。」

「はい・・・!」


 アキが期待している事を伝えると、嬉しそうに返事をするミコト。


「でも・・・ミヤビ、スズ、アカリはそれでいいのか?」


 メイと勝手に話を進めてしまい、肝心の彼女達の意見をまだ聞いていなかった。メイは大丈夫ですと言っているが、もしミヤビ達がうちで働きたくないというのであれば、当然雇うつもりはない。まあアキとしてはいて欲しいが、本人達が希望していなら、無理強いは出来ないだろう。


「恥ずかしいのはわかる。でも働きたいか働きたくないかだけは返事してくれないかな?」


 アキは改めてミヤビ達に尋ねる。威圧感を与えないよう、出来るだけ優しい口調で。


 ちなみにミルナ達は後ろで笑いを必死に堪えている。まあ自分でもこんな声色が合わないのはわかっている。わかっているが・・・あいつらはあとでしばく。何かむかつくし。


「どうかな?」


 だがそれでもまだ恥ずかしいのか、俯いて黙ったままの3人。


「ミヤビ、スズ、アカリ・・・返事はちゃんとしなさい?」


 メイもフォローしてくれた。


「う、うん・・・メイお姉ちゃん・・・」


 スズが擦れるような声で呟く。


 その様子を見ていると、彼女達が本当に人見知りなんだとわかる。しかしこんな子達がいるとわかっていたらミルナ達を同席なんてさせなかった。大勢の知らない人に囲まれて、相当に居心地が悪いに違いない。さすがに全員で来るのはやりすぎたかとちょっと反省だ。ただここまでの人見知りはさすがに想定外。下手したらうちのルティア以上だ。


 しかしこれは過去に何かトラウマでもあったのだろうか?そうでないとここまで極端にはならない気がする。後でちょっとメイに聞いてみるとしよう。


 まあ人見知りになった理由はともかく、これ以上アキが話せ話せと急かしてもしかたない。彼女達が話す勇気が出るまでのんびり待つしかないだろう。


「あ、あの・・・!ア、アキ様!」


 そして数分後、スズが意を決したように口を開く。両手をギュッと胸の前で握りしめ、必死に声を絞り出している・・・といった感じだ。


「うん、なに?」


 アキも出来るだけ優しい声で返事をする。


 おい、そこ、笑うな。


 しかし・・・うん、メイがこの子達を「可愛いんです!」と言っていた理由がよくわかる。庇護欲というのだろうか?なんか守ってやりたい、彼女達を見ていると、そんな不思議な気持ちになる。


「わ、私もメイおねーちゃんと働きたいですっ・・・!」

「うん、わかった。」


 こんな真摯に頼まれたら断れないだろう。まあメイがお墨付きを出している時点で断る理由なんてないのだが。


「ア、アカリです!私もお、お願いしますっ!」

「ミヤビです!私も・・・!」


 スズに触発されたのか、アカリとミヤビも立て続けに返事をする。


「うん、これからよろしくね。」


 3人ともアキのところで働きたいと言ってくれた。これなら雇うのになんの問題もない。面談も無事これで終了だ。まあアイリスの思惑通りの事が進んだのはなんか癪だが、可愛い獣人を5人もゲットできたのだから文句はない。


 むしろ大勝利と言えよう。


「やっほい!」


 つい喜びが声に出てしまった。


「こらっ!!なにが『やっほい!』ですか!これから女子会するのでアキさんはシッシッです!さっさとどこかへ行ってください!」


 虫を追い払うかのように、ベルが手であっちへ行けと言ってくる。まあ喜びを口に出してしまったのは確かに反省すべき点だとは思う。ただ・・・


「・・・俺の扱い酷くない?」

挿絵(By みてみん)

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