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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十章 音楽祭
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10

「それは全然構わないけど・・・どういう比較?」


 少々気恥ずかしいが、エアル達のような女の子に男性の比較対象として使ってもらえるのは普通に嬉しい。


 ただアキの一体どこを比較対象として使ったのかはやはり気になるところだ。


「えっと・・・『アキさんのように強くて頼りになる人じゃないと嫌です』って言ってます・・・」

「いや、別に俺は・・・」


 強くはない。そう言いかけたが、エアルがわかってますとアキの言葉を遮った。


「そうですよね、アキさんはその・・・滅茶苦茶強いわけではないです。エリスさんの方が戦闘経験はあります。エレンさんやリオナさん達とも比べると・・・少々見劣りしますよね・・・?」


 エアルが申し訳なさそうな顔で言う。


 だがその通りだ。アキは確かにSランク冒険者ではあるが、それは地球の知識を用いた特殊な魔法があるおかげ。あとそれに加え、得意の観察と予測によるものだ。これでなんとかミルナ達と渡り合えているだけで、純粋な戦闘能力だけを見ればアキはそれ程強くはない。


 それに最初は観察や予測で多少優位に立ててはいたが、最近はミルナ達もアキとの戦闘にすっかり慣れたのか、段々と通用しなくなってきている。まあ毎日訓練してれば当然か。


「うん、うちの子達は強いからな。」


 まだ負けるつもりはないが・・・いずれは負けるだろう。


「でもさすがにその辺の冒険者よりは強いよね?」


 今度はミレーが首を傾げながら尋ねてくる。


「そうだな。さすがに負けないと思うよ。」


 見知らぬ冒険者相手なら、魔法を使えればまず大丈夫だろう。魔法を封じられても、観察と予測である程度は対応できるはずだ。それにセシル曰く、アキの純粋な剣の実力はBランク上位くらいらしいし、そこそこは戦える。これもエリス達による訓練のおかげだな。


「だよね。ならいいんだけどね?ほら、万が一逆恨みでアキさんが襲われたら申し訳ないし・・・」

「いやまあそれくらいは別に構わないけどね。」


 元教え子達が多少の迷惑をかけてくることくらい可愛いものだ。


「話が逸れたけど・・・なんでそういう比較対象として俺を出したんだ?」


 アキの強さはさておき、本題はこっちだ。


「あ、はい、アキさんはSランク冒険者で、闘技大会でも目立ってました。なので周囲の評価は『アキさんは強い』なのです。」


 なるほど、それはエアルの言う通りかもしれないな。


「でもエアル達は恋人に自分より強い人を求めているのか?」


 ただ彼女達は別に戦闘狂ではないし、恋人にそんな条件をつけるとも思えない。むしろそういうのはエリスが言いそうな事だ。


「あ、そういうのはありませんよ。」


 やはりそんな条件はないらしい。


「だよね。じゃあなんでそんな事を?」

「はい、先ほども言いましたが、しつこい人が多いんです。本気で私達を好いてくれているのであれば、それもある程度は許容できますが・・・」


 チャラい連中が多いと言う事か。


「そもそも俺を引き合いに出したところでそいつらは引き下がるの?」


 自分を引き合いに出すとかやった事がないのでよくわからない。


 まあ当然の話だ。


「アキさんは強くてお金持ちで有名人なんですよ?だから『アキさんのように強くて頼りになる人がいい』って言えば、すぐどっか行ってくれます。」


 うん、金持ちに関しては否定できない。確かに金はあるからな。全部エスタートの爺さんのおかげだが。しかし・・・なんか強力な虫除けスプレーみたいだ。まあ、エアル達の役に立てているのであれば全然構わいないけども。


「でもそれ・・・恋人作る機会、俺のせいで無くなってたりしない?」


 エアルやミリーが「アキより強くて頼りになる人」という恋人の条件を掲げていると広まるのは良い事ばかりとは言えないだろう。確かにしついこい連中は減るかもしれないが、「良い人」と巡り会える機会は間違いなく減る気がする。


「いえ、それでいいんです。私達を本気で慕ってくれているなら、何を言われても諦めたりしないはずです。強くないなら強くなろうと努力するでしょうし、頼りがいがないなら少しでも頼れる人間になろうと努力してくれると思います。それをしない時点で・・・その・・・」

「ああ、うん、わかるよ。」


 努力しない時点で、エアル達に対して本気ではないという事。本当に好きなら何を言われても諦めたりしない。そしてそういう男らしい相手をエアルやミリーは望んでいる。そう言う事なのだろう。


「まー最初はアキさんに貰って貰おうとおもったんだけどねー」


 ミリーがしれっと爆弾発言をする。


「は・・・?」


 さすがにそんな事を言われるとは思わず驚いた。


「え?もしかして知らなかったの?アキさんは歳も近いし、一緒にいて楽しいし、私惚れてたんだよ?あ、もちろんエアルもね?」

「え、あ、う、うん・・・そうですよ・・・?」

「お、おう・・・?」


 そうだったのか・・・というかまったく気づかなかった。確かにミルナ達は「エアルさんとミリーさん、怪しいですわ」と言っていたが・・・まさかそんな事あるわけないだろうと一蹴した覚えがある。だがどうやら間違っていたのはアキで、ミルナ達が正しかったようだ。


 しかしこの気まずい雰囲気、どうしよう。

挿絵(By みてみん)

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