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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第三十章 音楽祭
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9

「まあ、とりあえずご飯にしよう。で・・・この店は美味いのか?」


 エアルが案内してくれたレストランは大通りから路地を数本入ったところにある隠れ家的な店だった。以前エスぺラルドで爺さんの行きつけの店に行ったが、まさにあんな感じ。そして路地の奥にあるからか、人通りは全くない。店の中もガラガラだ。


 ただ音楽祭でこれだけ街が盛り上がってる中、この客入りで大丈夫なのだろうか。隠れ家的な名店なのかもしれないが、これは逆に不安になる。爺さんのあの店はそこそこ繁盛していたしな。


「ええ、私のおススメです!美味しいですよー!」


 まあエアルが美味しいというなら信じよう。


「アキさん、私も初めて来た時は心配だったけど、大丈夫。美味しいよ。店の立地が悪いからガラガラだけど・・・この店は趣味でやってるらしいしね。」


 なるほど、趣味でやってる店か。それなら閑古鳥が鳴いていてもなんの問題ないな。むしろ人気店になったら困るまであるかもしれない。


「でもエアルはよくこんなお店知ってるね?」

「えへへ、面白そうなお店を見つけたらとりあえず入るのが私の趣味なんです!」


 なんとも買い物好きなエアルらしい趣味だ。


「ああ、そういやミリーの趣味は料理だっけ。そのミリーが美味しいっていうなら間違いないか。」

「お、覚えてくれてたんだね・・・」

「まあ友人であり、教え子であるミリーの事だしな。」

「嬉しいけどプレッシャーだなぁ・・・私が美味しいと思っただけだよ?」


 嬉しいけど不安。そんな複雑な表情を浮かべているミリー。


「そう言われてもミリーの料理は食べた事ないからわからんな。」

「こ、今度作ってあげようか・・・?」

「うん、是非。」

「あ、でもアキさんの奥さん達に怒られないかな?」


 それはない。あいつらは料理をしない、もとい出来ないしな。まあアリアは出来るが。あとはセシル。だが他の子達はてんで駄目だ。一応エレンとリオナは相変わらず頑張って覚えようとしてくれているので今後に期待している。ミルナやソフィー達は・・・言うまでもないだろう。あいつら「私達も料理出来るようになりますわ!」と意気込んでいたのに、早々に「食べる専門ですわ!」と諦めやがった。


「それに俺がミリーの料理を褒めたらあの子達にもいい刺激になるだろ。」

「やっぱりそれ私が怒られるやつじゃないの!?」

「まあそうとも言う。」

「じゃあなし!やっぱ作るのなし!」


 残念。まあ元から作ってもらおうとは思っていないがな。ミリーが恋人ならそれもありだが、彼女はただの友達。不用意なフラグを立てるのは避けたほうがいいだろう。ミルナ達にも「アキさんは油断なりませんわ」とよく言われるし。


 しかし恋人となると・・・エアルやミリーのそうういった話は全然聞かない。Sランク冒険者でミルナ達に劣らぬ美少女。普通に考えて言い寄ってくる男なんて山ほどいそうなものなのに。


「そういやミリーやエアルは恋人いないのか?」

「い、いませんよ!」

「そんなのいないよ!」


 アキの問いかけに間髪入れず食い気味に返事をする2人。


「なんで?」


 というのもベルフィオーレは17~18で結婚するのが普通。エアル達はそう言う意味では丁度結婚適齢期だ。


「なんでって・・・言われても・・・ねぇ、エアル?」

「はい・・・いないものはいませんので・・・」

「いやいや、2人ともモテるだろ?美人なんだし。」

「び、美人なんかじゃ・・・ないよ?」

「そ、そうですよ・・・!」


 アキがそう言うと、2人は少し頬を染め、俯いてしまう。


 たが「モテる」の部分を否定しないと言う事は、やはりそう言う事なんだろう。


「じゃあ言い方を変えよう。なんで恋人つくらないんだ?」


 今度の質問には2人とも気まずそうに黙ったままで何も答えてくれない。


「あ、あの、どんな答えでも起りませんか?」


 しばしの沈黙の後、エアルがチラチラとアキの様子を伺いながら呟く。


「え?うん。」


 怒るとはどういうことだろう。


「えっと・・・その、好意を寄せてくださる方は沢山いるんですけど・・・」

「うん、ちょっとねー・・・」


 エアルに同意するようにミリーが苦笑いを浮かべる。


「碌な連中がいないと?」

「そこまでは言いませんけど・・・心に響かないというか、薄っぺらいというか・・・あ、もちろん気持ちは嬉しいんですけど!」


 エアルが言葉を濁す。


 だが何となくわかった。多分彼女達に言い寄っている連中は2人が可愛いから言い寄って来ているだけで、本気ではないのだろう。本当にエアル達が好きという気持ちが無いからこそ2人の心に届かない。そう言う事なのかもしれない。


「それでなんで俺が怒るんだ?」


 ただこの答えに対して別にアキがどうこう言うような事はない。2人がそう決めたならそれが正しいのだから。


「あ、いえ・・・あまりにもしつこい人が多いのでその・・・」

「うん?」

「アキさんを引き合いに出してるんですよね。ほら、アキさんはこの前の闘技大会でも活躍しましたよね?だからレスミアでは有名なんですよ。」

「なるほど?」

「つまり・・・その、いい比較対象なんです。失礼な話ですが・・・」

「それは全然構わないけど・・・どういう比較?」


 少々気恥ずかしいが、エアル達のような女の子に男性の比較対象として使ってもらえるのは普通に嬉しい。ただアキの一体どこを比較対象としてあげたのかはや気になるところだ。

挿絵(By みてみん)

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