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「よし、じゃあ俺達も行くか。」
「はい!」
「いこー!」
エアルとミリーが元気よく合いの手を入れてくれる。
「うん、意気込んでみたけど・・・行く場所決めてないし、レスミアはそれほど詳しくないんだよね。」
つまるところ、全くのノープランだ。エアル達が行きたいところなんて思いつかないし、そもそも思いついたところでエスぺラルドじゃないのでよくわからない。
「えぇ・・・?」
呆れた声をあげるミリー。
だがそんな事言われても仕方ないだろう。
「行き先はエアルとミリーに任せてもいいか?」
「しょうがないなぁ・・・」
やれやれと肩を竦めるミリー。
「任せてください!!おススメのお店いっぱいあります!!!」
一方のエアルはガッツポーズしてやる気満々だ。
そしてそんなエアルの様子を見たミリーは「あ、やば」といった表情を浮かべている。そう言えばエアルは買い物大好きっ子だったな。ミリーは「付き合うだけで疲れる」とか言っていた記憶がある。
「いいよ、エアルの行きたいところへ行こうか。」
ただアキも買い物は好きなので、むしろエアルに付き合うのは吝かではない。
「ち、ちょっと!アキさん!それはやめたほうが・・・」
ミリーが慌てて止めようとしてくる。
「ミリー、俺も買い物は好きだぞ?」
「そ、そうだった!私やっぱり今日はかえ・・・」
後退りながらアキとエアルから少しづつ距離を取るミリー。
だが逃がさん。遊びに行くと決めた以上、絶対に連れて行く。
「ダメ。」
アキはミリーの左腕を掴む。
「駄目です。」
エアルも同じ考えのようで、アキとは反対側の腕を掴む。
「は、離してよ!2人でいけばいいじゃない!」
「えー、ミリーがいないと寂しいなー」
「棒読み!アキさん棒読みだから!」
「うるさい、黙ってついてこい。」
説得するのは時間の無駄だし、面倒だ。もうエアルと2人でミリーを引きずっていく事にする。
さて楽しい楽しい、買い物の時間だ。
「いーやーだー!」
可愛い教え子の断末魔が聞こえるが・・・気にしない。
「いやー、買い物楽しかったな。」
「はい!また行きましょうね!」
結局2時間くらいエアル達との買い物を楽しんだ。
まあ正確には「アキとエアルが楽しんだ」だが。
「あはは・・・お買い物はもう当分いいかな・・・」
ミリーは疲れ果てた顔で渇いた笑い声をあげている。というか死んだ魚のような目をしている。
この通りミリーがダウンしてしまったので、買い物は早めに切り上げ、夕飯を食べに来た。アキとエアルはまだまだ元気だが・・・仕方ない。
「もう少し見たかったのに・・・ミリーはだらしないんだから。」
「買い物馬鹿のエアルと一緒にしないで!?」
「えー、だってアキさんは平気でしょう?」
「アキさんもおかしいの!!」
失礼だな。別になんもおかしくはないのに。エアルと一緒でちょっとだけ買い物が好きなだけだ。まあ以前ミルナ達に似たような事を言われた時、そう返したら、「頭がおかしい」だの散々言われたが・・・
「アキさん、またいきましょうね!」
「おういいぞ、ミリーを拉致って行こうな。」
「はい!」
「なんで!?私いらないじゃん!2人で行きなよ!?」
そうはいかない。当然拉致る。だってその方が面白いし。
「なんで、私達親友じゃないの・・・?」
エアルが目を潤ませながらミリーを見つめる。
「うっ・・・そ、それは・・・!」
いいぞ、エアル。その友情に訴えかけたちょっと卑怯な方法、とてもいい。
もっとやれ。
「ミリーはヒドイなー」
「ちょっとアキさん!どっちの味方なの!」
「当然エアルだが?」
考えるまでもない。エアルとの買い物は滅茶苦茶楽しかった。むしろミルナ達といくより楽しめたかもしれない。エアルは嫌な顔一つせず着せ替え人形になってくれた。こういう知り合いは今までいなかったので、仲間が出来たのはとても嬉しい。
「アキさん、楽しかったですよね!」
「ああ、またミリーを着せ替え人形しなきゃな。」
当然エアルだけでなくミリーも着せ替え人形はさせてもらった。というかエアルと二人がかりで着せ替えしてやった。
「はい!しましょう!」
「なんで!?やだよ!?」
ミリーは嫌がっているが、次回も犠牲になってもらおう。エアルが頼めばきっとミリーは断れないだろうしな。それになんだかんだ文句を言いつつも、ちゃんとミリーはついて来る気がする。