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「よし、えーっと・・・あとはエリザ、エリス、ルティア、イリアだな。出会った順でいくとエリスとエリザからか・・・」
「わ、わかったわ。」
「うむ、では私からいくのだ。」
まずはエリスからしい。
厳密にいうとエリスはベルの前に出会ってはいたが・・・アキと行動を共にするようになったのはベルの後だったはず。まあ別にこの順番じゃなきゃいけないなんてルールがあるわけじゃないし、正直適当だ。
「私は馬鹿だから難しい事はよくわからないのだ。でも一つ言えるのは・・・私はアキと出会えてよかったのだ。」
そう言ってエリスが小さく微笑む。
「まあ俺と出会う前は色々騙され、お金なかったもんな・・・」
「そ、それは言わないでほしいのだ・・・!」
エリスと出会った時、Sランクのくせにお金がなく、極貧生活を送っていたエリス。まあエスタルトの爺さんが親戚として面倒を見ていたから飢え死にする事はなかっただろうが、それでも本人は一文無しだったのを覚えている。
「と、とにかく、私はSランク冒険者ではあったが・・・それだけだった。世の中の仕組みも何も知らないただのアホの子。戦闘しか能のない世間知らずの小娘だったのだ。でもアキに出会って色々教えてもらった。このままじゃ駄目なんだと気付かされたのだ。」
「そうだな。でも今のエリスはそこまでアホの子じゃないぞ?」
確かに昔のエリスはそうだったのかもしれない。まあ今も少しは・・・アホの子だ。だが前ほどではない。むしろエリスから「このままじゃ駄目」という言葉が出てくる時点でもの凄く成長しているのがわかる。
今でも考えるのはまだまだ苦手なようだが、それでも出会った頃に比べると雲泥の差だ。難しい話になるとすぐに現実逃避していたエリスが、今では一度自分でちゃんと考えようとしている。これだけでも凄い事だ。なんせあのエリスが頭を使おうとしているのだからな。
「アキのおかげで考えると言う事を覚えられた。でもまだまだなのだ。」
「じゃあエリスは俺と一緒にいる事で色々勉強出来てるんだな。」
「うむ!もちろんアキとの冒険も楽しいのだ!でもアキといることで自分を見つめ直す事が出来るのが一番嬉しかったことだな!」
これは嬉しい。もちろん一緒にいられるだけでいいというのも嬉しいが、アキといる事により、成長できたと言われるのは一番嬉しいかもしれない。
「そう言って貰えるのは嬉しいよ、ありがとな、エリス。」
「えへへ・・・アキ、これからもよろしくなのだ。」
アキの言葉にエリスは満面の笑顔で答えてくれた。
「いい話だなぁ・・・よし、エリザ、これを越えるの頼むぞ。」
エリスの考えもわかった。となると次はエリザの番だ。
「な、なんでよ!!!今までそういうのなかったじゃない!なんで私の時だけハードルあげるのよ!おかしいでしょ!!!」
「だっておねーさんじゃん。」
いつも「おねーさんなのよ」が口癖のエリザなのだから、ここでもきっと素晴らしい理由を語ってくれるに違いない。
「ぐっ・・・こ、こういう時だけ卑怯よ!!!」
「で?」
早く話せとエリザを急かす。
「わ、私は・・・そう!アキ君といることで成長したのよ!凄いでしょ!」
うん、別に何も凄くないな。というかエリスと同じこと言っているだけじゃないか。しかも何をどう成長したのか言わなきゃ意味がない。
「で・・・?」
「で!?な、なによ!」
「いや何をどう成長したのさ。」
「なんかこう!ググッっと成長したの!!!」
そうか・・・なんかもうこれ以上聞くのが可哀そうになってきた。
「いやほら、魔法の研究が進んだとか、お洒落に目覚めたとか・・・あるだろ。」
「じゃあそれ!魔法よ!あとお洒落!!!」
「・・・じゃあってなんだよ。別に無いなら無いでいいよ。素晴らしい理由があるに違いないとか言ったのは冗談だ。悪かった、ごめん。気にするな。」
まあエリザはアキといる事で、成長するとかは正直ないかもしれない。そもそも彼女は出会う前から魔法学院の学院長だったし、魔法組合の組合長をしていた。女王であるアイリスと交流もあった。つまり彼女はある程度の成功者と言えるだろう。
26歳という若さでここまでの成功を収めているのだから、アキといてもメリットなんてあまりないとは思う。でも彼女はアキといる事を選んでくれた。アキの事を慕ってくれているという理由だけで側にいてくれるのだろうか。もちろんそれならそれでいい。というかそれだけで最高に嬉しい。
ただ、もしアキに何かしらの存在価値を見出しているのであれば知りたい。そう言う意味でエリザやミルナ達に「俺といてどうだった?」と聞いているのだ。勿論無いなら無いでなんの問題もない。
「あ、あるわよ!えっと・・・その・・・!」
「いや、無理しなくて・・・」
「ちょっと待ちなさいってば!今考えるから!!!」
そう言ってエリザがキッっと睨みつけてくる。自分だけ理由がないのは絶対に嫌らしい。別に勝負とかじゃないんだが・・・
「・・・エリザ考えてる間に次にいってもいい?」
「駄目よ!もう少し!もう少しだから待ってなさい!」
結局それからエリザはうんうんと15分くらい唸り続けた。
「・・・うん、そうね、そうよ・・・!アキ君!思いついたわ!今から話すからありがたく聞きなさい!!」
やっとか。待たせすぎだ。しかし本当に愉快な猫だな。ちょっと微笑ましい。