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「うん、それはやめよう。簡潔に頼む。」
まだ先も詰まってるしな、ここはさくさくお願いしたい。
「むー・・・わかりました。」
不承不承ながらも頷くベル。
「で、ベルはどうなの?今日まで一緒にやってきてどうだった?」
「そうですね、私の理由は単純です。説明するまでもないかもしません。」
ベルが今更聞くんですかといった表情で見つめてくる。
確かにベルに関してはそうかもしれない。一緒に過ごした時間が一番長いのは誰かと聞かれたら、それは間違いなくベルだ。魔獣の事、国の事、ユーフレインの事と何かとベルを頼る事が多い。でもそれはベルに頼むと色々と円滑に事が進むのだから仕方ない。まあ彼女が王女で、権力を持っているから当然の事ではあるが。
そう言う理由から、アキはベルといる事が必然的に多くなる。だからベルが何を考え、何を想っているのかは何となくはわかっているつもりだ。
つまり彼女が今話そうとしている理由も想像がつく。おそらくアキと一緒にいた事で起こった魔獣問題や国の運営についてだろう。
「そうだな、でも一応教えてくれ。」
「わかりました。私の場合・・・アキさんとの出会いはエスぺラルドの図書館でした。アキさんは私に気付いていなかったようですが、初めてアキさんを見かけたのはそこです。」
アキがエスぺラルドに初めて来た時、図書館で魔獣の事を調べていた。ベルが言っているのはその時の事だろう。
「そして初めてアキさんとお話したのは闘技大会ですね。闘技大会で活躍するアキさんを見て、是非お会いしたいと思ったので。」
「そうだったな。」
「はい。それからはアキさんもご存知の通り・・・アキさんの事が気に入ってずっと一緒にいるというわけです。えへへ・・・」
そう言って嬉しそうにはにかむベル。
「あ、うん、それはわかってるけど・・・」
アキが聞きたいのはそう言う事ではなく、ベルと一緒に今日まで色々やってきたが、それについてどう思っているのかだ。彼女が自分の事を慕ってくれているのはそれはもう身に染みてわかっているのだから。
「いえ、わかってません。」
「え?どういう事?」
「アキさんが考えているのは・・・私がアキさんと一緒にいて、魔獣問題を解決できそうで嬉しいとか、この国の行く末が見えましたとかそう言う事ですよね?」
「え、まあ、うん、そう言う事かな?」
アキといる事でこの国の行く末なんて見えるとは思わないが、まあ有り体に言えばそう言う事だ。ベルがアキについて来たことで、王女としてのベルにどんな影響を及ぼしたのかが知りたいのだ。確かに魔獣問題の解決には尽力しているが、ユーフレインの事だったりと余計な問題を持ち込んだりもしている。一概にはアキの行動がこの国にとってプラスに働いてるとは言い切れないだろう。王女としてその辺りをどう思うのか、聞いてみたい。
「それが勘違いなんです。確かにエスぺラルドの王女としては、魔獣問題が解決に向かっているのは嬉しい事です。ユーフレインの問題もありますが、全体的にこの国はいい方向に向かっていると言えるでしょう。全てアキさんのおかげです。」
「俺だけのおかげじゃないと思うけど、ありがと・・・」
こうして面と向かって礼を言われるのはちょっと照れ臭い。
「でも・・・そんな事はどうでもいいんです!」
ベルが拳を握り締めながら力強く叫ぶ。
「え?」
「どうでもいいんです!私にとって国なんて二の次なんです!」
何かもの凄い事を言い出したぞ、うちの王女。
「なんでだよ。」
「・・・です。」
「え?なんて?」
「・・・ぼれなんです。」
急に声が小さくなり、ボソボソと何かを呟くベル。
「え?」
「ですから・・・ひ、一目惚れなんです!初めてお話した時、アキさんの知識に興味があったとかいいましたけど・・・半分嘘なんです!そう言う気持ちもあったのは本当ですけど、アキさんに一目惚れしてたから会いたかったんです!図書館でアキさんを見かけた時・・・この人しかいない、そう思ったんです!」
まさかの理由だった。その可能性は流石に微塵も考えていなかったぞ。というよりアキは別に一目惚れされるような外見をしていないから当然だ。そもそも過去に一度もそんな事をされた事はなかったしな。
「お、おう・・・っていうかそうなの?」
「は、はい・・・だからアキさんが国の為に色々してくれるとか・・・は正直二の次なんです。勿論その事に感謝はしてます!でもアキさんと一緒にいれて嬉しい。それが私のとって何より大事なんです。」
うーん、これは今までで一番小恥ずかしいかもしれない。面と向かって一目惚れでしたとか言われるのは嬉しいけど、こういう時、どんな顔をすればいいのか全く分からない。
だがとりあえずベルの主張はわかった。アリアと理由は違うが、気持ちはアリアと一緒で、アキといられるだけでいい、他の事は二の次というわけか。さすがにベルに一目惚れされたとは思ってもいなかったので驚いたが、理解はした。
「ありがと・・・嬉しいよ。」
やっぱりベルのような子にそんな事を言われるのは普通に嬉しい。
「あ、は、はい・・・こ、これからもよろしくお願いします・・・」
滅茶苦茶恥かしい事を言ったと気付いたのか、ベルが顔を真っ赤にしながら俯く。
「こちらこそ・・・」
自分で聞いておいてなんだが、気まずい。だがそもそもこんな理由が返ってくると思ってなかったんだから仕方ない。「国が~」とかそういう真面目な話をされると思っていたのに。
うん、こういう時は次だ。ささっと次に進もう。
「よし、えーっと・・・あとはエリザ、エリス、ルティア、イリアだな。出会った順でいくとエリスとエリザからか・・・」
「うむ、承知したのだ・・・!」
「わ、わかったわ。」