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さて・・このままエレンを構ってもいいが、まだ夕飯の、そして話の途中だ。
「エレン、まだ夕飯の途中だ。自分の席に戻りなさい。」
「あ、うん・・・わかったわ。」
アキがそう言うと、トボトボと素直に自分の椅子に戻るエレン。滅茶苦茶素直だ。ツンデレはこういうところが可愛いんだよな。
まあとりあえずエレンの事はさておき、次だ。
「じゃあ次・・・リオナ。」
「私?私は勿論アキと出会えてよかったよ!だってアキのおかげでイリアが見つかったんだからね!多分私達だけじゃ見つけられなかったと思うもん!」
自慢の狼耳をピンと立て、そう語るリオナ。
彼女にしては珍しく興奮している様子だ。
「そんな事ないだろ?リオナ達だけでも探せたと思うよ?」
彼女達が冒険者としては優秀なのは言うまでもないだろう。まあ指名依頼やらで偶に失敗はしていたようだが、それでも彼女達だけでイリアの事は見つけられていたと思う。だから正直なところ、アキが茶々を入れた事で余計な事をしてしまったのではないかという気持ちはどうしてもあるのだ。
「うーん、そうかもだけど・・・でも私達だけだったら何年もかかってたと思うんだよね。アキがいてくれたから色んな人と知り合えたし、そのおかげでイリアの情報がわかったんだもん。」
「ああ、まあそうなのかな?」
「そうだよ!」
リオナの言う通り、ベルやエスタートの爺さんと知り合えたのはアキがいたからだろう。特にベルに関しては間違いない。アキがいなかったら間違いなくベルは接触してこなかったはずだ。
そしてベルと知り合えてないとなると、今あるミレーやサルマリア王家との繋がりも当然無いので、イリアがいた立ち入り禁止区域に辿り着くまでにもっと時間を要していたかもしれない。
うん、確かにそう考えると、アキがいたからあっさりイリアが見つかったと言えなくもなさそうだ。
「だからありがとうなんだよ。ただ・・・アキはちょっとモフモフが好きすぎて変態なのが玉に瑕だけど・・・でもまあ獣人の私としては嬉しいし・・・」
リオナが恥ずかしそうにボソボソと呟く。
「変態は余計だ。」
「あははー・・・そ、そうだねー?」
渇いた笑い声をあげるリオナ。
失礼な。
もふもふは世界を救うと言うのに何故それがわからないのだろう。むしろもふもふを好きじゃない連中の方が変態ではないだろうか。
まあモフモフ議論は今じゃなくていい。とりあえず次だ。
「えーっとじゃあ次は、アリアとセシル。」
「私もみなさんと大体一緒です。アキさんについてきた後悔は何一つありません。あのままだったら私は冒険者協会の受付嬢として終わる人生でした。でもアキさんについてきたおかげで色んな事を知り、見る事が出来ました。本当に最高です!」
セシルが兎耳を揺らしながら嬉しそうに笑う。
「そ、それに・・・運命の人にも出会えましたし・・・えへへ・・・」
そして付け加えるように小声で呟く。
「俺も運命の兎と出会えて嬉しいぞ。」
これは間違いなく本心だ。まさに世紀の出会いといっても過言ではない。
「それ!全然!!嬉しくないですから!!!兎人族!せめて兎人って言ってくださいよおおおおお!!!」
うるさい兎だな。アキとしては最大限の褒め言葉を贈ったつもりだったのに。
「はいはい。」
「こらっ!アキさん!!」
「えー、じゃあ次、アリアは?」
「無視しないでくださああああい!!」
「うるさい。この人参あげるから静かにしてろ。」
セシルの皿の上に茹でた人参をおいてやる。
「あ、やった。わーい。」
今の今まで怒っていたのが嘘のように、嬉しそうな顔で目の前に置かれた人参をぽりぽり食べ始めるセシル。チョロすぎる。
ちなみに別に兎人族は特に人参が好物というわけではないらしい。単純にセシルが好きなだけだ。それを知った時、やっぱりセシルこそ兎でいいんじゃないかなと思ったのは内緒だ。
「それで・・・アリアは?」
「私ですか・・・そうですね。私はみなさんとは少し違います。」
アリアはそう前置きをしてぽつぽつと話し始める。