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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第二十九章 国家会議
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「どうした?」

「あの子達のことについてよ。」

「うん、だからあれがこの世界の乙女なんだろ?女子力なんだろ?」

「そんなわけないわよ!普通の女の子はお洒落やお買い物の話をするわよ!あの子達と一緒にしないで!この世界の女の子もアキ君の世界と一緒よ!」


 地球の文化に興味があったのか、エリザも色々とアキが持ってきた資料やら本を読み漁っていた。だからアキの言う「女子力」が何を指しているのかちゃんとわかっているらしい。


「・・・え?」

「な、なによ!なんでそんな変な物を見るような目で私を見てるのかしら!」


 ただエリザが言うとあまり説得力がない。


「魔法にしか興味がなくて、お洒落やら恋やらに無頓着な26歳の猫さんはどこの誰だっけ?」

「う、うるさいわね!最近は興味あるんだから!」


 まあ確かに最近のエリザは服装をやたらと気にしている。可愛い服を着たり、綺麗なアクセサリーを身に着けたりしている事が多い。さすがにどこぞの駄エルフのようにアキに感想を聞きに来たりはしないが。


 兎にも角にも、この猫は最近お洒落に目覚めたようだ。この前、魔法学院を訪れた時、エアル達も言っていた。「最近エリザ学院長が可愛いんです」と。すっかり女らしくなって、生徒達は驚いているらしい。


「そうだな。最近、可愛くなったと思うぞ?」

「そ、そうでしょ!恋する乙女は可愛くなれる不思議な魔法があるのよ!」

「・・・それ魔法学院の学院長が言っちゃ駄目なセリフだと思うけど。」


 そもそも魔導士が「恋という魔法にかかってるの☆」とか言っては駄目だと思う。


「い、いいでしょ!別に!!!」

「26歳・・・」

「にゃー!!乙女に年齢は関係ないの!ひっかくわよ!!ふしゃー!!!!」


 耳や尻尾の毛を逆立て、威嚇してくるエリザ。


 全く怖くない。


「ごめんごめん。それよりエリザ、明日なんだけどな・・・」

「フーフー・・・」

「落ち着け。エリザに頼みがあるんだけど。」


 とりあえず威嚇しているうちの猫を落ち着かせる。恋する乙女が魔法にかかってるとか今はどうでもいい。


「フーフー・・・え?な、なにかしら?私に頼み・・・?」

「うん、明日エリザの実家に行くぞ。母親に挨拶したいから連れてってくれ。」


 元々アキはエリザに用事があると言ったのはこの事だ。彼女の実家はミレーの王都であるレスミアにあるらしいが、さすがに詳しい場所までは知らない。それに母親に挨拶するのだから、エリザにも来て貰わないと困るからな。


「に、にゃんでよ!?」

「なんでって・・・母親に挨拶をしたいからだよ。」

「いいわよしなくて!ふしゃー!」


 また威嚇してきやがった。しかも今回は威嚇される意味がわからない。さっきはアキがちょっといじめ過ぎたかもしれないが、今回は親に挨拶をしたいと言っただけだ。


「この前言っただろ・・・」


 そもそもこの事は既に先日話した。そしてその時は渋々ながらも了承してくれた。


「そ、そうだけどやっぱり駄目!」

「なんで?」

「にゃでもよ!!」


 何故そこまで嫌がるのだろう。エリザの話を聞く限り、それ程悪い母親のようには思えない。むしろ女手一つでエリザを育て上げた立派な女性だ。


「じゃあエリザとは結婚できないな・・・」

「にゃんで!?」


 さっきから「にゃんで」しか言ってないな、この猫。


「だって結婚する時はちゃんと親御さんに挨拶するのが道理だろ?俺の世界ではそうだったけど・・・ベルフィオーレは違うのか?」

「ち、違わないけど・・・!でも!挨拶しない場合もあるわよ!」


 確かにそう言う場合もある。だがそれはエレンのように両親がいない場合だ。エレンは既に両親を亡くしているからな。ちなみにエリスも孤児だが、拾ってくれた今の両親は健在らしいので、その人達には会いにいくつもりだ。


「両親がいないならな仕方ないけど・・・でもいるなら会うべきだろ?」

「で、でもアリアさんの両親には会わないじゃない!」


 それはアリアが既に親と離縁しているからだ。アキとしては会ってもいいと思っているが、アリアが二度と顔も見たくないと言っているので、その意思を尊重した。まあ彼女がどんな目に遭ってきたかは聞いているからな。


「エリザは母親と険悪な仲なのか?」

「な、仲良しよ・・・」

「じゃあいいだろ。」

「うー・・・」


 そんなに嫌なのか。ただエリザの雰囲気を見ている限り、ちゃんとした理由がある訳ではなさそうだ。恥ずかしいとかそんな感じの理由だろう。


「会いたくない理由を説明して俺を納得させられるなら会わなくてもいいけど?」

「そんなのないわよ・・・」

「じゃあ会わせてくれないなら結婚はなしな?」

「にゃー・・・」


 耳と尻尾を悲しそうに垂れ下げるエリザ。


 この言い方はちょっと卑怯な気がするが、これが一番効果的だ。


「エリザはそれでいいのか?」

「いやよ。」

「じゃあちゃんと挨拶に行こうな?」

「うん。」

「よしよし、いいにゃんこだ。」


 ぽんぽんとエリザの頭を撫でまわす。


「に、にゃんこじゃない!もん!」


 口を膨らませながら拗ねるエリザ。だがまあとりあえずは実家訪問を了承してくれた。しかしここまで母親に会わせたくないとか、一体どんな理由なんだろう。母親と仲が悪いとか、碌でもない親でない事はわかっている。


 どんなしょうもない理由なのか・・・明日が楽しみだ。

挿絵(By みてみん)

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