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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第二十九章 国家会議
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34

「今日はそろそろ終わりにしませんか?」


 時刻は既に夜。日もすっかり沈んでしまった。まだまだ議論する事はあるが、腹も空いてきたし、これ以上会議をしても効率が悪いだけだろう。それに一通り説明すべき事はしたし、アキがこの場にいる必要性はもうない。


「ええ、十分です。あとはアキさんから頂いた資料を参考にしつつ、私達で進めますね。」


 アイリスにそう告げられる。


 どうやら後はアキ抜きでやってくれるらしい。概ね予想通りの展開だ。アイリス達はアキを国政に巻き込むのを後ろめたいと言っていた。だからこの会議で議論の切欠だけ与えれば、あとは彼女達だけで進めてくれると思ったのだ。


「ありがとうございます。何かありましたら言ってください。」

「ええ、その時はお願いします。」


 ベルフィオーレはもうアイリス達に任せる。アキの役目はユーフレインを何とかする事だ。まあベルの手伝いである程度ベルフィオーレにも関わる事にはなるだろうが、表立って動く事はないだろう。そもそもベルはまだ王女。国王であるエルミラが健在である限り、国は彼が中心となって動かしていくはずだ。


「では私はそろそろ失礼しますね。」


 アキは軽く挨拶をして、会議室から出て行こうとする。


 ミルナ達の事を随分と待たせてしまった。オリハルコンのデモンストレーションを行う際、護衛を頼んだだけで、その後はずっと放置。絶対退屈しているだろう。早く連れて帰って構ってあげなければ拗ねられそうだ。


「はい!帰りましょう!」


 ベルが嬉しそうに腕を絡めてきた。


「あれ?ベルは帰っていいのか?」


 まだエルミラ達は議論をしていくような事を言っていたが、王女であるベルは帰っていいのだろうか。シルヴィやステラは残るようだが・・・


「当然です。私は特別なんです。アキさんと一緒にいるんです。」


 ドヤ顔でそう語るベル。


「あ、うん、そうなんだ・・・」


 まあベルがいいと言うなら何も言うまい。それにベルも今日はずっとアキのサポートをしてくれていた。会議中は無駄口を叩く事もなく、アキが会議を円滑に進められるよう、甲斐甲斐しく世話をしてくれた。さすがに疲れただろう。連れて帰ってちゃんと労ってやるとしよう。


「ええ!?ベルさん帰っちゃうんですか!?」


 ステラが立ち上がり、大声で叫ぶ。


「はい、ステラさん、さようなら。」

「冷たい!冷たいです!」


 うん、また始まった。


 会議中はステラもベルも静かだったのに、一区切りついた途端、こうなるらしい。しかしこの展開・・・デジャブだ。となると間違いなくあの王女も出てくる。


「あら、アキ?私を置いて帰るの?寂しいわ・・・」


 シルヴィが顔を手で覆いながら、涙声で悲しそうに呟く。


 やはり出てきやがった。しかもわざとらしい。絶対嘘泣きだろう。


「帰るよ。さようなら、シルヴィ。」

「酷いわ・・・私とは遊びだったのね?」

「遊んだ覚えすらないが。」

「会議が始まる前、あんなに愛を語り合ったじゃない。」


 シルヴィと愛を語り合った覚えなどない。まあ会議前のアレはシルヴィと「遊んだ」と表現出来なくもないが・・・


「さっきまでちゃんと王女しててかっこよかったのに・・・」


 会議中、ずっと真面目な王女をしていたシルヴィには正直感心した。ベルも、ステラも、シルヴィも、優秀な王女なのだとすぐにわかった。それなのに何故、会議が終わると3人共こうも残念になるのか。


「あら、惚れた?」

「惚れてはない。優秀な王女様なんだと感心しただけだ。」

「惚れてもいいのよ?」

「それは断ると言っただろう。俺はベル一筋。王女はベルだけで十分だ。」


 会議前も似たようなことを言ったが、改めてはっきりとお断りしておく。ただこの王女、何を言っても正直無駄な気がする。何故ならシルヴィには正論が通用しないからな。


「断るのを断るわ。」


 やはりシルヴィには何を言っても無駄だ。


「よし、帰る。」


 こういうタイプは相手にしないのがきっと一番だろう。


「ま、待ちなさいよ。」


 慌てた様子でアキを引き留めてくる。


 どうやらシルヴィの事は無視するのがやはり一番効果的のようだ。


「なに?帰りたいんだけど。」

「わ、わかったわよ・・・ところでアキはリオレンドに来る予定はないのかしら?」


 この王女、全くわかってない。帰ると言っているのに、何故新たな質問をするんだ。しかもこの質問に答えない限り、帰すつもり何てないのだろう。


 無視して帰ってもいいが・・・別に隠すような事でもない。


 ここは正直に答えるとしよう。


「あるよ。俺の嫁の1人がリオレンド出身でね。近々挨拶に行く予定だよ。」


 四大国会議と音楽祭が終わったら、ミルナ、ソフィー、リオナの故郷を巡る予定だ。どの順番で行くかはまだ決めていないが、リオレンドはリオナの故郷。間違いなく行く事にはなる。何よりリオナの故郷はもふもふだと言っていた。これは絶対に行かなければならない。そう、絶対にだ。


「ふ、ふーん?来るのね?じゃあその時は王都に寄りなさい。」

「えー?」


 リオナの話によると、彼女の故郷はリオレンドの田舎。王都からは馬車で数日の距離にあると言っていた。だから王都に立ち寄るつもりは正直なかった。リオレンドの王都に知り合いなんていないしな。


「なんでそんなに嫌そうなのよ!?」

挿絵(By みてみん)

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