17
屋敷に着いたアキ達はひとまずリビングで一息吐く。
「長い1日だった……でもなんだかんだ良い日になってよかった。」
アキが目を瞑って呟く。もうこのまま寝てもいいかな?と思っていたら頬をつねられる。目をあけると隣に笑顔のソフィーがいる。
「何いい話で終わらそうとしてるんですか?これから私とお話するんですよ?」
とりあえずソフィーが壊れているので軽く頭を叩く。
「ひゃん……痛いですー……。」
「だからその考え方辞めろと言っただろうが。」
「だ、だってー……。」
やれやれとアキは改めて寛ぎなおそうとするが、今度はミルナ、ソフィー、エレンがそれを許さない。
「何言ってるんですの?私ともお話しますのよ?」
「僕もお話があるんだけどな。」
「私もよ、床に座りなさい。」
その後、4人から30分近くたっぷりとお話されたのは言うまでもない。アリアやセシルの事を事細かに説明させられた。そしてさすがに床には座らなかった。
「喉渇いたな。」
「お水をご用意いたしました。」
何時の間に準備したのか、アリアが水の入ったコップを渡してくれる。
「ありがとう、こんなことまでお願いしてもいいものなの?」
「はい、当然です。私はアキさんのメイドですよ?」
アリアは優しく微笑む。気の利くメイドがいるっていいものだなとアキはしみじみ思う。
「あ、私も欲しいわ!」
「私もですー!」
「私にも頂けますか?」
「僕も!お話して喉からから。」
エレン達は早速メイドを有効活用しようとしているようだ。
「え、いやです。」
しかし躊躇する事なくミルナ達の頼みを即答で断るアリア。思ってもみなかった返事に4人は言葉を失っている。アキもまさかの即断には少し驚いた。
エレンがなんとか言葉をひねり出す。
「な、なんでよ!」
「私はアキさんだけのメイドですので。貴女方にお仕えする気は1ミリもございません。まあ……雨水くらいならお出ししますが。」
「はあああ!?いいから早くその水よこしなさいよ!」
「うるさい愛玩動物ですね。アキさんやはりこの愛玩動物達はポイしましょう。疲れているアキさんに30分もくだらないお話するなんて、ポイすべきです。」
アリアが大真面目な顔でぶっ飛んだ事を言ってくる。そしてアキは「なに、俺のメイド何でこんなに毒舌なわけ」と頭が痛くなる。
「アキさん!このアリアとかいうネズミをポイしましょう。そうしましょう。」
「私もソフィーに賛成ですわ、いますぐ生ごみにポイしちゃいましょう。」
ソフィーとミルナがいつも以上の笑顔でアキに提案する。
「誰もポイしません。次そんなこと言ったら全員ポイするから。」
これが全員が静かになる解だとアキは思う。多分彼女達の誰をポイしても誰かが喜ぶ気がする。
とりあえずアキは無理やり話題を変える事にする。
「そういえば、俺がアリア達とお散歩してる時なんかあったの?」
「あ……はい……。」
ミルナが少し気まずそうにして教えてくれる。
「アキさん……。」
ソフィーが悲しそうに呟き、アキ達たちが出て行った扉を見る。誰も口を開かない。黙ったままだ。何を言っていいのかわからない。何を言えばいいのかわからない。全員アキの気持ちがわからなくなっていた。
「ほほほ。悩んでおるのかの。」
沈黙を破ったのはエスタートだ。
「わしからも一言あるぞ。今すぐ出て行ってもらおう。アキが戻ってくる前に屋敷から出て行ってくれ。そして二度と姿を見せるんじゃないぞ?」
「な、なんで……!」
ミルナは目を見開いてエスタートを見る。
「そんな事もわからんおぬしらに説明する気はないわ。」
エスタートは扉を開けて出ていく。だが扉が閉まる直前、エスタートはミルナ達に一言だけ告げる。
「もしわからないのなら今すぐ出ていけ。アキの事はおぬしらが一番知っておろうに。」
最後にそれだけ言い残すとエスタートは今度こそ姿を消した。
そこからミルナ達は4人で一生懸命考えた。アキの事を一番わかっているのは自分達だという爺さんの言葉をヒントに必死に必死に考えた。結論は直ぐに出た。何も難しい事はない、当然の事だった。アキが大好き。ただそれだけ、でもそれが全ての答え。ならもう何をすればかいいなんて明白だった。
結論も出て、ミルナ達はアキが戻って来るのを今か今かと待っていた。その時に気づいた。それはもう4人共酷い顔だったことに。こんな顔でアキに会うわけにはいかないと顔を洗いに行って、部屋に戻ってきたら丁度アキ達がいて……ということらしい。
「全くあの爺ちゃんは本当に余計なことばかりしてからに。」
「でもそのおかげで気づいた事が沢山ありましたので。」
ミルナは両手を胸の前でぎゅっと握りしめる。
「まあ、経緯はわかったよ……。王都に行っても楽しくやろう。とりあえずまたしばらくよろしくね?」
「ええ、でもしばらくで済みますかね?」
ミルナはいつもの様に袖を口にあててくすくすと微笑む。
「今すぐさようならでもよろしいのでは?」
アリアがまた割り込んでくる。
「あんたは少し黙ってなさい!」
エレンとは既に犬猿の仲になりつつあるアリア。
「それよりアキさん、そろそろお休みになられた方がよろしいかと。」
「そうだね、アリアありがとう。」
「いえ、それでは……よ、夜のお勤めも頑張りますね?」
「はああ!あんた何言ってるのよ!」
もうアリアに関しては突っ込み疲れたのでエレンにまかせよう。エレンが顔を赤くして必死に叫んでくれている。ただエレンが何を言っても無視するので、結局アキがアリアの相手をすることになった。
「いや、それメイドの仕事じゃないだろ。ブランにはしてないでしょ?」
「ええ……でもその……メイドがそこまでしたい主人と思ったら話は別です……。」
恥ずかしそうに頬を染めて俯くアリア。
「いや、恥ずかしがるなら言うなよ。」
「い、いえ、大丈夫です。朝のおはようからベッドの中でのお休みまでがメイドのお仕事です。」
「多分絶対違う。」
「安心してください天井のシミ数えてれば終わります。」
「アリア、ポイするよ?」
「い、いやです!」
これでとりあえずアリアは静かになった。ただアリアってこんなぶっ壊れ属性のあるメイドだっけ?まあ……それはどうでもいいとして、残りの4人とまたお話になりそうな雰囲気だ。というかソフィー、ミルナ、エレンがなんかすでにお話する体勢になっている。
「リオナ。」
レオの男装の件はアリアには話してある。アリアなら大丈夫だと判断したし、知ってもらった方が色々と助かると思ったからだ。
「なに?お話する準備できた?」
「お話でもなんでもするからちょっと来て。」
「なに?」
レオを抱き上げて膝に置く。そして頭を撫でる。気持ちよさそうに耳が垂れて尻尾が揺れる。
「アキ……現実逃避はアキらしくないよ?」
「いいんだ、リオナ。とりあえず俺は癒されたいんだ。好きにさせてくれ。」
「しょうがないな、もっと撫でてくれるならいいよ。」
とりあえずお話が始まるまで、レオに癒されておこう。




