26
「アキさん、呼ばれたので来ましたわ・・・えっと、入ってよろしいですの?」
暫くするとベルに連れられたミルナ達が恐る恐る会議室にやってきた。だがやはり各国の王族達が揃っているせいだろうか、どこか気後れしてしまっている。ミルナ、ソフィー、エレン、リオナ、イリアは緊張しているのか、5人共表情が硬い。
「なんだ、緊張してるのかミルナ?」
「と、当然ですわよ!」
「エレンもらしくないんじゃないか?」
「う、うっさいわね!」
ミルナとエレンがキッと睨みつけてくるが、いつもの迫力がない。
「じゃあ今からイリアが面白い事します。」
「し、しないからね!?ばかなのかな!?」
もの凄い勢いでイリアが迫って来て、頭を引っ叩かれた。
ベルフィオーレの王族達はみんなフランクだからここまで緊張する必要はないのだが・・・まあ仕方ないか。アキも会議が始まるまでは少し緊張していたし、あまり人の事は言えないだろう。ただこういうミルナ達は珍しいのでついつい弄ってしまう。
「セシルとエリスは大丈夫?」
「だ、大丈夫ですよー?」
「平気なのだー。」
セシルは笑顔が少し引き攣っているし、エリスは目の焦点が合っていない。
うん、ダメだな。まあそのうち慣れるだろう。
ちなみにアリアとエリザだけはいつも通りだ。
「アリア、エリザ・・・頼むぞ?」
「はい。」
「おねーさんに任せなさい。」
緊張して本調子じゃないミルナ達のフォローはこの2人に任せおけばよさそうだ。アリアは冷静沈着なメイドだし、エリザは最年長だけあって落ち着いている。
「ちなみにベルから話は聞いてる?」
「ええ、聞いてるわ。」
エリザがゆらゆらと尻尾を揺らしながら答える。
「了解。話が早くて助かるよ。ベル、ありがとな。」
「えへへ、当然です!」
アキに褒められたのが嬉しいのか、ベルの顔がほころんでいる。
王女なのにその顔は少しだらしないぞ。
「それでは・・・リオルグ陛下、彼女達の事を紹介させて頂きます。」
エスぺラルド、ミレー、サルマリアはミルナ達の事は知っているが、リオレンドは知らない。転移する前に紹介だけしておこう。ルティアの姿だけは見えないが・・・まあそれはいつもの事だ。どこかに潜んでいるはずだし、わざわざ呼び出してまで紹介しなくてもいいだろう。
「ふむ、アキ・・・彼女達が先程言っていた婚約者かね?」
リオルグが手を顎に当てながらそう呟く。
どうやら説明するまでもなかったらしい。まあミルナ達のアキに対する態度を見れば一目瞭然か。
「はい、そうです。」
ちなみにエリク王子は苦虫を噛み潰したような顔をしているが、特に何も言ってこない。また突っかかってくるかもしれないと思っていたのでちょっと安心した。一応1回は納得した事だから蒸し返す気はないのかもしれない。先程の様子を見ている限り、感情的な人間だと思ってしまったが、案外理性的のようだ。こういう出会いをしてなければいい友人に慣れていたかもしれないな。
「ふーん?美人揃いなのね?」
そんな事を考えていたら聞き覚えのない女性の声がした。
誰だろうと思い、声のした方へ顔を向ける。
するとそこには薄い紫の髪をした美少女が立っていた。
「これはリオレンド第一王女殿下、どうかされましたか?」
そう、彼女は先程アキに絡んで来たエリク王子の妹、リオレンド王国の第一王女だ。ラベンダー色の肩より少し長い髪、そしてその髪と同じ色の瞳。年齢は17歳くらいだろうか。顔立ちは整っており、まごうこと無き美少女。だが彼女の髪や瞳の色は父親にも母親にも似ていない。祖父か祖母の血を濃く継いだのだろうか。
しかしベルフィオーレの王女は全員美人だ。ベル、ステラ、そしてリオレンドの王女を並べたらそれはもう華やかになる。まあ母親である王妃達も全員美女なのだから当然の事なのかもしれない。
それよりこの王女は一体どうしたのだろう。
今までずっと挨拶以外では言葉を発していなかったのに急に話しかけてきた。
「シルヴィ。」
「はい?」
「だから名前よ!シルヴィアって言うの!」
「それは存じておりますが・・・」
名前はさっき挨拶された時、シルヴィア・リオレンドだと紹介を受けた。さすがに今しがたの事だし忘れてはいない。
「あー!もう!察しが悪いわね!」
「・・・と言われましても。」
「だ、だからシルヴィって呼びなさいよ!」
なるほど、愛称で呼んで欲しいと言いたかったのか。それならそうと言ってくれればいいのに。思わせぶりな態度を取って「察して」とか言われても困る。
「わかりました、シルヴィ殿下。」
「うん、それでいいわ。でも殿下とかつけなくていいわよ。あと喋り方もアイリーンベルやステラベルにしているのと同じで構わないわ。」
それはさすがに断ろうかとも思ったが、ベルやステラの事を先に言われてしまった。ベルは婚約者だからともかく、アキはステラとも気軽に接してしまっている。だから自分とも同じことが出来るだろうとシルヴィは主張しているのだ。
これは断れない。まあ断る理由もないから別にいいんだが。しかしこの世界の王女はどうしてこうも自由・・・というか馴れ馴れしいのだろう。
「シルヴィがそれでいいなら。」
「ええ、いいわ!貴方、話がわかるわね!」
褒めてくれているらしいが、なんか全然嬉しくない。
「それでシルヴィは何か用?」