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「さて・・・じゃあそろそろ明日の会議に備えてちゃんと打ち合わせしようか。」
気まずい空気も薄れた事だし、今日の本題に入るとしよう。
いよいよ明日は待ちに待った4ヶ国会議。まあ別に待ってはいないが、気分的にはやっとこの日が来たかという感じがする。会議が終わればベルフィオーレは本格的に魔獣制度を廃止する方向に動くになるだろう。とはいえそれで「はい、終わり」とは行かない。ベルを含め、各国の王族は忙しくなるだろうし、アキもベルの側でその手伝いをする約束だ。
だがとりあえずは一区切り。
会議が終わったら多少は時間が取れるはずなので、ミルナ達の故郷へ行ったりする予定だ。あと・・・約束した通り、彼女達をお手付きにしなければいけない。正直まだミルナ達にそんな事をする度胸は沸かないが、約束した以上、しないと不味い。何が不味いってアキが躊躇しようものなら今度こそミルナ達に襲われる気がする。いや、あいつらは確実に既成事実を作りにくる。だから男のプライドが粉々にされないよう、覚悟を決めて自分から手を出すしかない。
まあこの問題ついては一旦先延ばしにしよう。今考えても仕方ない・・・と自分に言い訳しておく。それより大事なのは明日の会議の話だ。
「でも打ち合わせ?って何をすればいいんですの?私達、明日はお留守番ですわよね・・・?」
ミルナがちょっと悲しそうな表情で呟く。
「まあ会議にはベルと俺以外は参加出来ないだろうな。」
「そうですわよね・・・」
「そう気落ちするな。頼みたい事があるからな。」
「え?そうなんですの?資料の確認だけではなくて?」
勿論資料の確認はしてもらうつもりだ。だがお願いしたい事は他にもある。
しかしそこの駄エルフに金髪剣士、「資料」と聞いた途端嫌そうな顔をするなよ。大体事前に入ってあっただろうに。少しはエレンやリオナを見習え。最年少の2人が「頑張るね!」とやる気を出しているのだから年上としての威厳を少しでも見せて欲しいものだ。
まあそれはさておき、資料の確認以外でミルナ達には頼みたい事だが・・・
「ベルに頼んでアイリス女王陛下に許可をもらっておいたんだが、ミルナ達も王宮についてきてくれ。」
「え!?いいんですの!?」
ミルナが目を見開いて顔をグイっと近づけてくる。
「・・・そんなに嬉しいのか?」
「もちろんですわ!!」
「そ、そうか、それは何よりだ。」
やはり留守番が相当嫌らしい。というかこの子達はいつなん時でも物理的にアキの側にいようとしてくる。まあアキとしては美人がいつも隣に居てくれるのだから文句はないのだが、そこまで一緒にいてよく飽きないものだと感心してしまう。
「で、でもアキさん、王宮へ行けるのは嬉しいんですが・・・私達はそこで何をすればよろしいんですの?」
「ああ、特に何かをする必要はないんだけど・・・一言で言うと俺の護衛だな。ベルの事で絡まれそうだし。」
本来の意味での護衛ではない。平和なベルフィオーレでなんていらないからだ。ただどっかの国の王子に絡まれ、揉める未来しか見えないので、ミルナ達にはすぐに駆けつけられる場所にいてもらいたいのだ。
「なるほどですわ!それなら私達にお任せくださいませ!しっかりアキさんをお守りしつつどっかの馬鹿王子をボコボコにして差し上げますわ!」
戦闘なら任せてくださいとにっこり微笑むミルナ。笑顔は女神なのに言ってる事が物騒すぎる。
「うん、ボコボコにはしなくていいからね。」
多分、間違いなく、リオレンドの王子にはベルの事で絡まれるだろう。罵られたり、嫌味くらいは言われたりするかもしれない。だがこちらから手を出したりしたら余計ややこしくなりそうなのでボコボコは絶対に却下だ。
「でもアキさんを貶すような人にはお仕置きが必要ですわ!そうですわよね!みなさん!」
「ですー!生きてる価値ないですー!」
「そうね!今回はミルナに同意するわ!ぶっ殺してやるんだから!」
「ま、まあ・・・うん、そうかなー・・・?」
うちの美少女達は何故こんなに暴力的なのだろう。しかも今日はエレンやリオナまでが便乗している。まあアキの為に怒ってくれているのはわかるので、あまり文句は言えないが。
「とりあえず暴力は禁止で。」
「「「「そんなー!!!」」」」
暴力を禁止したくらいでこの世の終わりのような顔をしないで欲しい。平和的解決を望むのは普通だろうに。
「そんなに暴れたいなら今度魔獣討伐行こうな?」
「はぁ!?そう言う事じゃないわよ!!!」
「そうか。じゃあ行かなくていいんだな?」
「そ、それは行くわよ!連れて行きなさいよね!」
いつも通りエレンはツンデレさんだ。うちは今日も平和だな。