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その後、エリザの案内で魔法学園へ向かった。
学園へ到着すると、程なくアイリスも到着した。簡単に挨拶だけして、ミレーの屋敷で使用人を雇いたい旨をアイリスに説明する。彼女の伝手で使用人を5人程見繕って欲しいと頼んだ。
「わかりました。音楽祭が終わるまでには用意します。」
「ありがとうございます。」
アキ達は音楽祭が終わるまではミレーにいる予定。エスぺラルドに戻る前に使用人の面接し、雇う人を決められるのであれば最高だ。
「えっと・・・獣人でもふもふの使用人を用意すればいいんですよね?アキさんはもふもふが好きな変態趣味だと聞きました。」
「・・・なんで知ってるんでしょう・・・?」
何故アイリスがその趣味を知っているのか。あと変態と言うのはやめて頂きたい。確かにアキはもふもふは好きだが、決して変態ではない。絶対に認めないぞ、これは健全な趣味だと未来永劫主張し続けてやる。
「エリザが言いふらしてましたよ?多分魔法学院の生徒達はみんな知ってるかと。」
・・・この猫、何してくれてるんだ。
「おい、エリザ。」
「ほ、本当のことでしょ!別にいいじゃない!なによ!文句あるの!?」
「いやまあないけど・・・」
エリザのもの凄い剣幕に気圧されてしまった。
この猫、勢いで誤魔化すつもりらしい。だがエリザの言っている事は不本意ながらも事実。真っ向から否定はしにくい。
こうなったら別方向で言い返すとしよう。
「アイリス陛下、それで問題ありません・・・ですが猫、猫獣人の方を中心に集めてください。」
「にゃ!?なんでよ!アキ君!それは駄目よ!?」
「アイリス陛下、あの猫は無視していいです。」
「え、ええ・・・まあアキさんがそれでいいなら猫獣人を中心に手配しますが・・・」
エリザが後ろで「うにゃー!それはだめにゃ!」と頭を抱えて騒いでいるのが微笑ましい。それに最近、語尾に「にゃ」を付ける事が少しずつ増えている。
可愛い。
(半分は冗談です。任せますので上手くお願いします。)
(わかってます。)
エリザに聞こえないようにアイリスに耳打ちする。
リオナやセシル同様、同族が増えるのは本当に嫌らしいので、流石に本気で猫を増やそうとは思っていない。
だがこれで少しは仕返し出来ただろう。
「さてアキさん、頼みたい事はそれだけかしら?」
「はい。」
「では私はこれで失礼しますね。また会議でお会いしましょう。エリザもいい加減落ち着きなさいね?」
それだけ言うと、アイリスは早々に帰っていった。多分30分も話していない。使用人の事を頼んで、会議当日の段取りを少し打ち合わせしただけだ。
「さすがに会議前に呼ぶのは申し訳なかったか・・・?」
きっとアイリスは会議の準備で忙しいはず。今まで開催した事のない4ヶ国による国家会議、そしてミレー最大のお祭りでもある音楽祭も控えている。
これは少し配慮が足りなかったかもしれないな。
「き、気にしなくていいわよ。本当に忙しかったら断ってるわ。」
エリザが言う。どうやら落ち着いたらしい。
「そうか?」
とはいえ国家会議を主催するのはアキだ。その主催者が呼び出したのだから、大事な話かもしれないと時間を割いてくれただけかもしれない。
「多分だけど・・・彼女、そこそこ暇だと思うわよ?」
「そんな事ないだろ。」
「あるわよ。だって会議の進行はアキ君でしょ?資料の準備だってアキ君やベルさん達でやってるじゃない。だから女王陛下は会議の準備なんてほとんどしてないわ。」
会議室の用意や歓待の準備くらいしかしてないはずよとエリザが言う。
「それに彼女は指示を出すだけでしょ?忙しいのは彼女の部下よ。」
「そうか、確かに。」
エリザの言う通り、よくよく考えれば、資料も会議の進行もアキ達の役目なので、ミレー側が準備する事はほとんどない。場所の提供だけだ。
「まあ音楽祭の方は忙しいと思うけど・・・会議の方は大した手間ではないわよ。」
「そっか。じゃあ気にしない事にするよ。」
「ええ、それがいいわ。」
「でもじゃあなんでアイリス陛下は急いで帰ったんだ?」
「んー・・・アキ君はこれからエアル達と会う予定でしょ?それを邪魔しない為じゃないかしら。」
ああ、そう言う事か。魔法学院に呼び出した時点で勘の良いアイリスならその辺りに気付いていてもおかしくはない。
「なるほど、じゃあ雑談してる場合じゃないな。エアルとミリーの授業に早く乱入しにいくか。」
「ふふ、そうね。そうしましょ。」
せっかくアイリスが気遣ってくれたのだから懐かしの我が生徒達に会いに行くとしよう。