表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第二十八章 国家会議に向けて②
682/1143

53

 イニステラ城へ到着すると、すぐさま衛兵がユキのいる謁見の間へと案内してくれた。どうやらユキがちゃんと通達してくれていたようだ。まあユキの「私を楽しませなさい!」催しに参加しまくっていたから、城の兵士やメイド達には顔をすっかり覚えられていたというのもあるだろう。


 アキ達は謁見の間に足を踏み入れる。


 王座にはいつも通りユキが氷のような表情を浮かべながら座っていた。ただどこっかよそよそしい雰囲気・・・というか空気が張り詰めてピリピリしている、そんな感じだ。多分、いつもはいない貴族達がいるからだろう。彼らは扉から王座へ続く赤い絨毯を囲むようにして左右に立っており、アキ達に品定めするかのような視線を向けてくる。とてもではないが居心地が良いとは言えない。


 シズ以外でこの国の貴族達を初めて見たが・・・これは確かにユキが苦労しそうだ。まあアキが感じた第一印象なので、勝手な偏見ではあるが・・・どいつもこいつも碌な人間じゃないように見える。


 そもそも今日の集まりはユキによって開かれている。つまりアキ達の事はユキが招集したというのは少し考えれば誰でもわかるはず。そんなアキ達を訝しげな目で見ている時点で駄目だろう。例え不満に思ったとしても、その感情を表に出してはユキに不敬だと言われてもおかしくはないのだから。


(変な目で見てこないのは・・・シズの父親であるフォルティスくらいか・・・?)


 シズの父親がいる事には驚いたが、軍の元帥であればこの場にいてもなんらおかしくはない。確かフォルティスは公爵、つまりフォルティス・アーベントロイト公爵だったはずだ。


(・・・ん?シズもいるじゃん。)


 そんなフォルティスの隣にシズが立っていた。すぐにシズがいると気付かなかったのは、彼女がドレスを着ていていつもと雰囲気が違ったからだろう。


 綺麗だ。


 落ち着いた薄紫色のドレスがシズの黒髪によく似合っている。


(あ、こっち見た。)


 シズが小さく手を振っている。


 ただシズには申し訳ないがさすがに振り返す事は出来ない。


(でも何でシズがいるんだ?)


 周囲の貴族達を見る限り、妻子を連れている貴族は他にいない。おそらくここにいるのは有爵者だけだろう。つまりその家の当主のみだ。


(もしかして授与式に参加したくて無理矢理ついて来たのかな?)


 シズらしい行動だ。まあ気持ちは嬉しい。


 あとで礼を言っておくとしよう。


(あ、ユキのお兄さんもいるな。でもなんであんなとこに・・・?)


 王子である兄も参加するかもとユキは言っていた。だが何故か貴族達の後ろの方に立っている。王子だからユキの隣に座るなり立つなりすればいいのに・・・何故あんなところにいるんだろうか。


(もしかしてユキの指示か?)


 彼女は兄を辟易しているからあの扱いなのかもしれない。もしくは兄が勝手に参加しているかだ。どちらにせよ・・・これは国家会議が終わったらあの兄妹仲を本格的に改善する必要がありそうだ。


(さて・・・とりあえず玉座の前まで行って跪けばいいんだっけ?)


 ベルフィオーレでも謁見の経験はあるが、いつも無礼講だったので、ここまで物々しい雰囲気での謁見は初めてだ。一応昨日ユキと打ち合わせした際、簡単な礼儀作法は教えてもらったので、無礼を働く心配はないが。


 アキはミルナ達を引き連れ、ユキの前までゆっくり丁寧に歩いて行き、静かに跪く。


(ミルナ達は大丈夫かな・・・)


 彼女達の方をチラッと横目で見る。


 ベルはさすがだった。平然としていて緊張した様子もない。だがミルナは少し頬を引き攣らせており、エリスも同様だ。こっちの2人は少し緊張しているらしい。


「シノミヤ・アキ。面を上げていいわよ。」


 ユキが静かに呟く。

挿絵(By みてみん) 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ