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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第二十八章 国家会議に向けて②
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「アキさんはこの国の王位について少し思い違いをしているみたいですね。」

「え、どういうこと?」

「はい、アキさんは国王の子供が王位継承権を持ち、エスぺラルドの場合は私ですね、その子供が王になる。そう言う認識ではありませんか?」


 その通りだ。それが一般的な君主制国家の在り方ではないだろうか。


「そこが違うんです。説明が難しいですが・・・この国の王位は確かに世襲制です。でも完全にはそうとは言えません。そもそも王位継承権は王子や王女でなくとも得る事が可能なんですよ。国に多大な貢献をした者、王子や王女と婚姻を結んだ者がその一例ですね。そして次期国王は継承権を持つ者の中から現国王が指名するのです。」


 どうやらエスぺラルドでは王家の血筋でなくとも王位継承権を得る事が出来るらしい。なるほど。まあそう簡単に得られる物ではないだろうが、ベルの言いたい事は理解できた。


「つまりベルが俺のところへ嫁に来ても、王位継承権はなくならない。そしてベルの婚約者である俺も王位継承権を得る事になると?」

「はい、次期国王はエスぺラルド家でなくとも問題ないのです。まあさすがに即位するとなったらエスぺラルドの性は継ぐ事になりますが・・・」


 ベルが嫁に来てアイリーンベル・シノミヤになったとしても、王位継承権はなくならない。そしてもしエルミラがベルを女王とすると決めた場合、アイリーンベル・エスぺラルド女王陛下となり、アキは彼女の王配になる。そう言う事か。


「だからベルは嫁に来られるんだな。」

「ええ、そう言う事です。ちなみにアキさんが王配になる可能性は限りなく0に近いです。王になる可能性の方が遥かに高いんですよ?」

「なんで?」


 どういう事だろう。アキが王配になる可能性がほとんどないと言う事は、ベルが女王になる可能性が無いと言う事になる。それはおかしな話だ。なんせベルは王位継承権第一位の王女だ。


「ふふ、簡単な言です。王配が妻を何人も持つ訳ないでしょう?」


 ああ・・・もの凄く納得した。


 女王が夫を複数持つならわかる。だがその夫である王配が側室を持つ意味はないだろう。いや、意味がないわけではないだろうが、あまり聞かない。


 そしてアキはミルナ達とも間違いなく結婚する。つまりベルは、アキに嫁ぐと決めた時点で、女王になる気はさらさらなかったと言う事だ。


「最初からそのつもりだったな・・・?」


 やられた。


 この王女、求婚してきた時点でアキを王にする気だったのだろう。


「ふふ、腹黒王女ですから。」

「はぁ・・・まあいいけどね?」

「でもアキさんが王になるかはまだわかりませんよ?お父様はまだまだ子供が欲しいそうでルベルシアお母様や側室のお母様方と頑張っていますから。私も弟や妹が欲しいので・・・結構期待しているんですよ。」


 だから少し気が早いですよとベルがくすくす笑う。


 しかし側室をちゃんと『お母様」と呼ぶあたり、ベルは本当にいい子だな。彼女からしてみれば赤の他人のはずなのに、ちゃんと家族扱いしているのだから。


「じゃあ時期国王には俺かベル、これから生まれてくる王子か王女、又はその子らの配偶者、がなる可能性が高いんだな?今のところ他に王位継承権を持ってる人はいないの?」

「はい、いません。」


 どうやら王位継承権を今現在持っているのはベルだけのようだ。


「なるようにしかならないか。」

「ええ、今から気負ってもしょうがないですよ?でも正直に言うと・・・アキさんが国王になる可能性は高いと私は思っています。アキさんは私が降嫁してまで一緒にいたいと思った優秀な男性です。お父様が第二子、第三子を授かったとしてもアキさんより優秀だとは思えませんもの。」


 気負うなとか言っておきながらプレッシャーかけるんじゃない。


「とにかくだ、俺が王になる事になったらエスぺラルドを名乗ればいいんだな?」

「そうですね。ただアキ・エスぺラルドではなくアキ・シノミヤ・エスぺラルドになるかと。昔の家名を捨てる必要はありませんから。あくまでエスぺラルドを冠して頂くだけです。」


 そうなのか。どうやらベルフィオーレの王位は地球の風習とは少し違うようだ。色々と勉強になるな。いまいちピンとこないが・・・まあ郷に入っては郷に従えだろう。


「じゃあちゃんと家名は決めないとな・・・」


 当然ミルナ達の案は全部却下だ。


「アキさん、もう決まってます。」

「はい?」

「ですよね、みなさん。」

「「「「うん!シノミヤ!」」」」


 ミルナ達が声を揃えて宣言する。


「・・・?」


 どういう事だ。この子達はシノミヤに変わる家名を考えていたんじゃなかったのか? 何故既にシノミヤで決まっているんだ?


「元々それしか選択肢ないんですよ。私もミルナさん達もシノミヤじゃないと嫌なんです。アキさん本来の家名を変えるなんてありえません。」


 最初から議論のする必要なんてなかったという事か。これは素直に嬉しい。

 

 だだ腑に落ちない。最初から決まっているなら、何故ミルナ達は「家名を考えよう会議」なんて茶番をやり始めたんだ。


「じゃあさっきまで騒いでいたのはなんだったんだ・・・?」

「もちろんただの茶番ですわ!!!」


 ――スパーン!


「アキさん!なんで叩くんですの!!!」


 くだらない事をするからだろうが。何が「茶番ですわ!」だ。


 勿論ミルナだけでなくベルやアリア達も全員引っ叩いておいた。

挿絵(By みてみん)

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