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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第二十八章 国家会議に向けて②
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今日の話はこれで終わりだな。


「じゃあ今日は解散。」


 使用人の件も上手くまとまったし、めでたしめでたしだ。


 明日はアキが貴族になる日。平民として過ごすのは今日で最後。ある意味一つの転換期と言えよう。ただ感慨深い・・・とは全く思わない。何故なら貴族になったところでアキの日常になんら変わりはないからだ。今まで通りミルナ達と騒いで楽しく過ごすだけ。まあ周囲の注目を浴びて面倒事に巻き込まれる事は増えるかもしれないが、それは今更だ。そもそもミルナ達を側に侍らせている時点で目立ちまくりだし、加えてアキもミルナ達もSランク冒険者。今更注目度が少し上がったところでなんの問題もないだろう。

 

「「「「はーい!今日もお疲れ様!」」」」


 アキの解散宣言を聞いたミルナ達がそれぞれの言葉で労ってくれる。なんか最近は1日の終わりに「お疲れ様」とアキを労うのが彼女達のマイブームらしい。よくわからないブームが蔓延していて困る。


 あと何故かここ1週間はミルナ達が滅茶苦茶甘えてくるようになった。いつも通り「お話」という名の説教は毎日のようにされるが、それ以上にスキンシップが多い。ところかまわずアキにくっついてくる。何故だろう?


「ではアキさん!今日は誰と添い寝しますかー!」


 ソフィーが「はいはい!」と手をあげ、思い出したかのように聞いて来る。


「んー?」


 今までアキは気が向いた時しかミルナ達と一緒に寝たりはしなかった。だが1週間くらい前からは必ず誰かと一緒に寝るようにしている。というかさせられている。くだらない事で喧嘩にならないよう、添い寝ローテーションを組んだんですとドヤ顔でミルナ達に説明されたのもその時だ。


 まあ少し前にセシルやエリザの部屋に頻繁に遊びにいって泊まったりしていたせいなのだろう。獣人組の部屋へ遊び行く事が多かった事もあり、ミルナ達にとってはそれが不服だった。そして彼女達なりの平和的解決を模索したところ、ローテーションという結果に落ち着いたというわけだ。


 まさかとは思うが・・・甘えてくるようになったのはこれが原因か?でも一緒に寝るようになったくらいで甘えてくるようになったというのはちょっと不可解だ。アキはミルナ達を抱いたわけでもない。ただ添い寝しているだけだ。


「だから今日は誰と寝るんですかー?」

「え・・・俺が選ぶの?」


 ローテーションはどうなったんだろう。


「はい!さすがに10日1回だと寂しいです。だから1週間に1回はアキさんが選ぶという事になっているんですー!選ばれたら・・・ぐふふ・・・」


 なるほど、理解した。普通にローテーションを組むだけだと、10日1日しかアキと寝れない。だが1週間に1回「アキが選ぶ日」を設定する事により、アキに選ばれたら10日で2回目のチャンスがあると言う訳だ。


 やたらと最近アキに甘えてくる理由は間違いなくこれだな。アピールして自分を選んでもらおうという腹積もりなのだろう。


 よくそんなしょうもないことを思いつくと呆れるが・・・冷静に考えれば凄く合理的なシステムではある。


「なるほど、面白い案だ。」


 まあこのローテーションやら寝る権利やらのやり取り自体が非常にどうでもよくてくだらない事ではあるが・・・とりあえずそれはおいておこう。


「はい!で今日はどのソフィーを選びますかー!」


 うん、選択式ですらないな。ソフィー一択じゃないか。


「ソフィー!抜け駆けは駄目ですわよ!!!」

「うるさいです!ミルナさんはあっちでおっぱいでも揺らしていてください!」

「ちょっと!?どういうことですの!?このお馬鹿エルフ!」

「お馬鹿じゃないですー!ちょっと残念なだけですー!」

「私だって揺らしたくて揺らしてるわけじゃないんですのよ!!!」


 ミルナとソフィーがギャーギャー言い争いを始めた。


 何ていうか・・・内容が薄っぺらい。それはもうペラッペラだ。まあそんな頭の悪い喧嘩が彼女達らしくて微笑ましいけど。


「とりあえずあいつらは放っておくとして・・・俺が選べばいいんだよな?イリアも数に入ってるのか?」

「え!?は、入ってないよ!」


 まあそれはそうだろう。10日でのローテーションと言う事は、そもそもイリアは数に入ってない計算だ。というかむしろこれに参加していたら今すぐ婚約者認定してやるところだ。


 だがここは敢えてイリアにするとしよう。彼女に対しては少し強引に行った方がいいと考えていたところだ。それにミルナ達と同じ扱いをすると宣言した以上、イリアに拒否権はない。彼女もその扱いを承諾したわけだしな。


「じゃあイリアで。」

「な、なんでかな!?私は選択不可なんだよ!?」

「駄目です。もう決定しました。」

「えええええ!?」


 どうしていいのかわからず、アワアワしているイリア。「ほんとに!?」とか呟きながら右往左往している。


 その隙にそっと近寄り、イリアをお姫様抱っこする。


 どうせ言葉で説得しても押し問答が続くだけ。時間の無駄だ。


「じゃあみんなおやすみー」

「「「「おやすみなさい!」」」」


 イリアを選んだ事に対しては誰も文句はないようで、特に反対意見は出なかった。


 多分そういう取り決めでもあるのだろう。「アピールは自由、でもアキの決定に文句を言うのは禁止」とかいう決まりがある気がする。


「ええええええ!?ほ、ほんとに!?ほんとに私なのかなああああ!?」

「そうだから諦めろ。」

「ふええええええ!?」


 腕の中でジタバタ暴れるイリアを落さないようにして、さっさと自分の部屋へと連れていく。


 そしてそのままベッドに放り投げ、イリアを抱き枕にしてその日は寝た。


 ただ往生際の悪いイリアは「ダメだよ!」「そういうのはまだ早いと思うんだ!」とかジタバタ抵抗してきた。まあ最終的には諦め・・・というか騒ぎ疲れて寝てしまったが。まあこのささやかな抵抗はイリアの照れ隠しだろう。純粋な筋力で言えば、ずっと冒険者や観察者として活動をしていたイリアの方が上。本気で逃げようと思えばいつでも逃げれたはずだ。


 この世界の人間は基本的に強い。戦いが身近にあるせいか、地球でのほほんと暮らしていたアキとは比べ物にならないくらい、敏捷性、筋力、動体視力などの能力値が高い。つまり抵抗しながらも逃げなかったイリアは、なんだかんだでアキの事を受け入れてくれているという事だ。嫌よ嫌よも好きのうちとかいうやつだろう。


 ちなみにイリアは柔らかくていい匂いがして最高の抱き心地だったとだけ言っておく。

挿絵(By みてみん)

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