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「酷い目にあった・・・」
前哨戦とは何だったのか。30分くらい好き勝手されたんだが。
「うふふ、アキさんを虐めるのは楽しいですわ。」
「すっきりですー!」
「今日はこのくらいにしてあげるわ!」
まあみんなが楽しめたのなら何より。
「えへへ・・・アキ、ごめんね?」
リオナだけは謝ってくれているが、尻尾が「楽しかった!」ってわっさわっさ揺れている。楽しかったのなら素直に楽しかったって言っていいんだぞ。
「アキさんも楽しんでた事ですし、別にいいでしょう?」
ベルが大袈裟ですねとくすくす笑っている。
確かに楽しかった。そもそもミルナに「襲われた」と言っても別に痛めつけられたわけでも性的に何かされたわけでもない。いつも通りミルナ達にあれこれ文句を言われ、叩かれたりしただけだ。
うん、前言撤回。痛めつけられてはいたな。
ただ暴力という暴力は、頬を抓られたり、頭を叩かれたりするくらいだった。まあ何発かは本気の平手打ちはもらったけども。でもその程度。むしろ叩いたあと「ごめんなさい」とミルナ達は謝ってきたくらいだ。というか謝るくらいなら最初からやらなければいいのにと思ったのは内緒だ。
そして最終的にはミルナ達は抱き着いて甘えて来た。つまり結局はいつも通りイチャイチャしただけ。これがミルナ達の言う「お仕置き」ならなんてことはない。しばきまわすと言うからてっきり木刀かなにかでボコボコにされると思っていたくらいだしな。
「でもなぁ・・・」
「一体何が不満なんですか。」
「不満というか文句というか・・・ミルナの下手糞なエロアピールがな・・・」
「あっ・・・」
全てを察したかのようにベルがそっと目を逸らす。
「ど、どういうことですの!!!アキさん!!!」
ミルナが叫ぶ。
「自分の胸に聞け。」
このおっぱい娘、お仕置きするとかいいながら、無駄にでかい胸を押し付け「いやん、アキさんエッチですわ」とかしょうもないセクシーアピールをしまくってきた。というか説教なんて一切せず、「それ」しかしてこなかった。
あまりにも鬱陶しかったので無視していたのだが、しつこく20回は繰り返しやがった。そして最後は涙目になりながら「アキさん!何故無視するんですの!早く私の胸を揉みしだいてくださいませ!!!」とか訳の分からない事をのたまう始末。
「胸に聞いてもわかりませんわ!説明を求めます!」
そこはわかれ。他の子達は一応真面目に説教してたんだぞ。「王女と聞けばデレデレして!節操なし!」とか「獣人増やすの本当はちょっと嫌なんだから!」とか文句を言ってきていたのに、ミルナだけは「いやん、えっち」と胸を押し付けてきただけ。そもそもいつも通りのイチャイチャに発展したのはミルナがひたすらそう言う事をし続け、他の子達が「ずるい!私も!」ってなったせいだろうが。
「黙れこの爆乳ホワイトエンジェル。」
「だから不名誉な渾名を増やさないでくださいませ!!!それに今下着の色は関係ないですわよね!?」
「うん、関係ないよ?俺はミルナの心が天使のように真っ白だからホワイトエンジェルって言っただけだ。でも慌てるってことは・・・今日も純白なんだな?」
「う、うるさいですわ!!!白々しい言い訳やめてくださいませ!!!」
「白だけに?」
「上手く言わなくていいですわ!?」
「落ち着けホワイト。」
「だからそれ止めてください!!!」
「わかった、爆乳。」
「それもですわ!!!私はおっぱいだけの存在ではありませんのよ!!!」
やっぱりミルナは面白い。
しかし何故ミルナはこうも残念なのだろうか。黙っていれば聖女のような清楚さがあり、落ち着いた雰囲気漂うお姉さん。美人で、気品もあり、一見頼りになるように見える。おっぱいも大きい。
だが蓋を開ければ頭がちょっと残念なポンコツ美女だ。色気があって男なんて思いのままとだと思い込んでいる痛い子。まあ実際滅茶苦茶色気はあるし、美人ではあるのだが・・・その「女の武器」の使い方が絶望的に駄目過ぎる。発想がおっさんのアレと一緒だ。
「なんでミルナは頭がぱっぱらぱーなんだろうね?」
「ぱっぱらぱーってなんですの!?今酷い事言われた気がしますわ!?」
言葉の意味は分からないが、雰囲気で貶された事を感じ取ったらしい。
「残念って意味だ。」
「やっぱり貶したんですのね!アキさん酷いですわ!」
「なら少しはポンコツを直せ。」
「無理ですわ!だってこれが私ですもの!!!」
断言しやがった。
でもまあミルナはそれでいいんだけどな。
出会った頃はそれはもう絵にかいたような清廉潔白なお姉様だったミルナ。だがあれはソフィー達を引っ張っていく為、無理して演じていた姿。本当のミルナはお転婆で世間知らずな箱入り娘の残念お嬢様。そんなミルナがアキは好きだ。ダメダメなミルナが愛らしい。
「そうだな、それが俺の大好きなミルナだな。」
「えへへ・・・それならいいんですわ・・・」
一転して花が咲いたような笑顔でミルナが抱き着いてくる。
「そういうところだぞ?文句を言ってたのにちょっと褒めるだけですぐこれだ。あといくら俺がポンコツミルナの方が好きとはいっても誘惑とかは少し自重した方が良いと思うぞ?」
「だ、だって・・・それだと私のアイデンティティが・・・」
捨ててしまえ、そんな個性。
「そ、そうですわ!全部アキさんのせいなんですわ!」
「・・・ん?」
またわけのわからない事を言い始めたぞ。
「アキさんが私を手籠めにしないから悪いんですの!そうに決まってますわ!」
「・・・は?」
このおっぱい娘、本当に何言ってんだ。




