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もふもふ帝国建国します。
ああ素晴らしい。
「みなさん!騙されないでくださいませ!!!」
「そうです!アキさんに言い包められてますよ!もふもふ帝国なんて悪そのものです!!!」
ミルナとベルが必死だ。他の子達の目を覚まそうとしている。
というか「悪そのもの」って・・・そこまで言わなくても。
ただそんな説得は無駄だ。うちの子達は「特別扱い」に漏れなく弱いんだから。
「完全勝利。」
「駄目ですわ!そんなの駄目ですわ!」
「うるさいぞ、おっぱい。もふもふ帝国はおっぱいでは人権は得られんぞ?」
「だからおっぱいおっぱい言わないでくださいませ!ミルナ!ミルナですわ!」
「ミルナの為にもふもふ帝国改めおっぱい帝国にするって言ったら?」
「おっぱいは素晴らしいですわ!!!」
うん、凄まじい手のひら返し。さすがミルナ。っていうかそれでいいのか。大体そんな下品な国、ミルナくらいしか所属しないぞ。
「最低だな、ミルナ。見損なったぞ。」
「なんでですの!?」
涙目になりながらアキの肩を掴みガンガン揺すってくる。
「ごめんって。ほら、よしよし。」
ミルナの頭をそっと撫でてやる。そろそろ本気で泣きそうだ。
「うー・・・もうおっぱい言わない?」
「言わない言わない。」
「大きいの好き?」
でもその質問はやめようか。それを肯定したらミルナは喜ぶだろうけど、一部が絶望する。特にエレンあたりが。余計な火種を増やさないように。
「おっぱいあってもなくても好きだから。ミルナはミルナだから。」
「な、ならいいですわ・・・!」
ミルナがギューッと抱き着いてくる。
こういうところは普通に可愛い。普段から変に暴走せず、こうやって甘えてくれればいいのに。
とりあえずは上手く誤魔化せた。
もふもふ帝国の事も有耶無耶に出来たし、大体計画通りだな。
「待ってください!みなさん!このままだと本当にモフモフが増えますよ!!」
「おい、ベル・・・」
待て。余計な事を言うのはやめろ。せっかくその辺を曖昧にしたんだ。もふもふ帝国を「悪くないかも」という態度をリオナやセシル達が取った以上、獣人の使用人が増えても文句は言えない。そういう方向で話を纏めたんだから余計な茶々をいれないで欲しい。
「うるさい!黙っててください!」
「だって・・・」
「だ・ま・れ!」
「あ、はい。」
怖い。というかさすが王女。有無を言わさぬ圧が凄い。
「みなさん!アキさんの計画はもふもふ帝国は悪くないかもって思わせる事です!そしたら獣人の使用人が『多少』増えても文句言えませんよね!それがアキさんの狙いなのです!!本気でもふもふ帝国とかいうふざけた国を作る気はこの人にありません!モフモフを増やす理由を正当化する為の隠れ蓑です!」
糞が。この王女、全部バラしやがった。
「このままアキさんの好きにさせると際限なく嫁を増やしますよ!」
待て、それは違う。さすがにそれだけははっきり否定したい。
「嫁は増やす気ない!」
「はい。『嫁は』ないんですよね?それはわかってます・・・でも!獣人は増やす気でいると!そう言う事ですよね!」
ビシっとアキを指差し宣言するベル。
「くっ・・・罠か・・・」
「ちょっと!?違いますよ!罠ではないです!むしろそこもちゃんと否定してくださいませんか!?そしたらこの話は今すぐ終わっていたんですけど!?」
ベルが何してくれるんですかと睨んできた。
ああ、なるほど。どうやらベルはベルで上手く話しを纏めようとしてくれていたらしい。嫁も獣人も増える事を否定すればミルナ達は一応納得する。納得した上で「ユキの頼みを断る事は出来なかった。だから使用人が増える」的な方向に持っていきたかったのだろう。
だがそんな試みは無駄だ。嫁の癖にアキの性格を全く分かっていない。
「はっはっは!諦めろ!俺はモフモフが大好きだ!」
「威張るとこではないです!モフモフ以外の事にも興味を持って!!!」
「ベルは俺に死ねと言うのか!」
「言ってません!!!もっと他に感情的になるところがあると言ってるんです!大体なんですか!リオナさん、エリザさん、セシルさんといった素晴らしい獣人女性がいるんですよ!!何故もっと欲しがるんですか!!!」
反論できるならしてみなさいとベルが睨みつけてくる。
「そうね、どうなの?アキ君?」
「そうですね、どうなんですか。」
「私、信じてるよ?」
あれ?おかしいな。味方につけたはずのエリザ、セシル、リオナがいつの間にかベルの隣に立っている。仁王立ちしながらこっちを睨んでいる。いつの間にそっち側に移動したんだ?
「えーっと?」
「可愛らしく首を傾ても誤魔化されません!早く答えなさい!」
どうやら正直に言うしかないらしい。
他の子達も助け船を出してくれる気は一切ないようだ。
「わかった。怒らないで聞いて欲しい。」
「はい。怒るとは思いますが聞きましょう。」
余計言い辛くなったんだが。
「そういう脅しはよくないと思うんだ。」
「は・や・く。」
ベルが完全に「王女モード」に入っている。
怖い。
「獣人はもっと欲しい。」
そう言った瞬間、部屋の温度が氷点下になった・・・気がした。
「へぇ?なんでです?」
ベルがゴミを見るような目だ。
地味に傷つくんだぞ、その視線。
「だって・・・」
「だって?」
「狐!」
「・・・・・・は?」