19
シズと別れ、ミルナ達が待つユーフレインの屋敷へと帰ってきた。
なんだか長い1日になりつつあるが、残すところはあと1つ。
そう、ユキへの報告だ。まあ報告というか謝罪というか・・・兎にも角にも金を返しに行かないと1日が終われない。その為に今日は積極的に動いたんだしな。
とはいえ正直これが一番面倒だ。ただ行かないわけにもいかないので、腹を括って行くとしよう。
「じゃあベル、行くか。」
「ええ、ちゃんと怒られるといいです。ふふ、アキさんが私達以外の人に怒られるのは・・・正直少し楽しみです。」
ベルが楽しそうにくすくすと笑う。
「この性悪女め。」
「ちょっと!?性悪とか言わないでください!!!」
ベルが不貞腐れた顔でぷりぷり怒っている。
だが人が怒られるのを見て楽しむとか性悪でしかないだろう。アキは何も間違ってない。まあベルの性格の悪さは今に始まった事ではないので一旦おいておこう。
「ごめんごめん。」
とりあえずベルを連れてユキのところへ転移するとしよう。
「えへへ、しょうがないですね、アキさんは。許してあげます。特別ですよ?」
アキが謝ると、一転してベルが笑顔でツンツンと頬を突いて来る。
うん、ちょっと鬱陶しい。
ちなみにベルがこれ程までに上機嫌の理由、そしてさっきからミルナ達がベルに一言も文句を言わないのは・・・今回の同行者がベルと決まっているからだ。
というよりユキに会いに行く時の同行者は基本的にベルにするとアキが決めた。何故ならユキは王女だ。その王女と対等に話せるのはやはり同じ王女であるベルしかいないと言う事で、アキがベルに頼んだのだ。
まあもちろんミルナ達がそれを素直に「わかりましたわ!」と納得するわけはない。アキの必死の説得により不承不承ながらも納得してくれたと言った感じだ。今も般若のような顔でベルを睨んでいる。「あの腹黒陰湿王女・・・死ねばいいのです・・・調子に乗ってやがります・・・」とか呪いのような呻き声が聞こえるのは気のせいだろうか。うん、気のせいと言う事にしておこう。
ちなみにミルナ達を説得するのに労した労力は・・・思い出したくもないので割愛させてもらう。ただ一言うなら、うちの子達は怖い。
「ミルナ、ソフィー?」
「なんですのぉ?」
「なんですかぁ?」
いってきますの挨拶をしようと思っただけなのに、「私達不機嫌なんです」オーラ全開だ。隠す気すらないらしい。
「いってくるね?」
「ふーん?勝手に行けばいいんじゃないですの?どうせ私達はいらないこですもの(チラッ)」
「そうですー。私達はいらないこなんですー。(チラチラッ)」
なんというか・・・こいつらはこいつらで鬱陶しい。「私達不機嫌なんですから今すぐ甘やかしてくださいませ」とチラチラこっちを見てくるのが非常に鬱陶しい。
面倒だ。無視しよう。
「よし、ベル、行こうか。」
「はーい!」
ベルが満面の笑顔で抱きついてきた。
そしてミルナとソフィーから溢れ出る殺気。
火に油を注ぐのが上手いな、この王女。
「とりあえずミルナ達、バイバイ。」
「「ふぇ?」」
間抜けな声を出すミルナとソフィー。
「いや、ベルフィオーレへ送り返すぞ?」
ユキの私室へ転移する前にミルナ達を全員まとめてベルフィオーレへと送り返しておく。何故ならユーフレインの屋敷は不用心だし、今日はもうユーフレインに用はない。というかユキのところでの用事が終わったら直接ベルフィオーレに帰るつもりだ。ミルナ達をこっちの屋敷で留守番させておく必要は何一つない。
「「えぇ!?」」
2人は当然アキが甘やかしてくれるものだと思っていたらしい。
見上げた根性だ。だが甘やかすわけないだろう。あんな見え見えなやり方に引っ掛かるとでも思ったのか?そもそもこの子達の相手をしていたらきりがない。下手したら夜が明ける。
「達者でなー。バイバイ。」
当然有無を言わさぬ強制転移だ。
「何でですの!?納得いきませんわああああ!」
「アキさんー!!ちゃんと!ちゃんと甘やかしてくださいいいい!!!」
ミルナとソフィーの断末魔が聞こえた気がする。というかあいつらは欲望に忠実すぎる。あそこまで来ると逆に尊敬できるレベルだ。それに毎日毎日よく飽きもせずにアレが出来るものだ。そう言う意味でも凄い。
ちなみに他の子達は呆れ顔で「またあとでねー」と手を振っていた。