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「げへへ、今日はついてるぜ・・・!」
「ああ、こんな良い女とヤれるんだからな!」
「ヒャッハー!」
エリスとエリザを連れて歩ていたらいきなり囲まれた。下卑た目で3人組の男達がこっちを見ている。
ああ、めんどくさい。
ちなみに何故こんな状況になっているのかというと・・・
遡る事数分前、シズの家から引き上げたアキ達は徒歩で自分の屋敷へと帰っていた。馬車を出すとシズは言ってくれたのだが、徒歩で数分だからと断った。
それがいけなかった。油断した。
この辺は貴族街なので治安はましなほうだ。だがそれでも悪いものは悪い。見た目麗しいエリスやエリザを連れていてトラブルに巻き込まれないわけがなかった。
先日ユキを出迎えに行った時や送り届けた時も徒歩ではあったが、あの時はルティアに警戒レベルを最大まで上げてもらっていたし、アキも索敵魔法で周囲を探っていた。そして人との接触がないように注意を払って行動していたので、こういったトラブルは起きなかった。
だが今は違う。
アキは索敵魔法を展開していないし、ルティアにもそこまで警戒させてなかった。ある程度警戒はしてくれていただろうが、ユキの時ほどではなかったはずだ。それにユーフレインは夕方から夜にかけて極端に犯罪が増える。闇夜に紛れ・・・とか言うやつだ。
つまり完全に油断していた。
「アキ・・・ごめん・・・失敗した。」
「大丈夫だよ。」
今にも泣きそうな顔で姿を見せたルティア。
そんなルティアをそっと撫でてやる。
「ん・・・ありがと。」
ルティアが気持ちよさそうに目を細める。
しかしルティアが普通に姿を見せるとは・・・うん、重症だな。
いつもなら呼ばないと出てこないし、出て来た途端アキの背中にくっついてくる。どんな危機的状況でもだ。だがそれをしてこない。
それ程までに落ち込んでいるらしい。
「でも失敗した・・・反省・・・」
「どこが?なんで?」
「ん・・・実は・・・」
ルティアの話によると、アキ達にちょっかいをかけようとした連中は実際には7~9人程いたらしい。まあ全員が徒党を組んでいたわけではなく、複数のグループが同時にアキ達に目をつけたとの事だ。そして目の前にいるのが残った1組。他は既にルティアが始末してくれたらしい。
「なるほど?」
アキの知らぬところでルティアがあっさり汚れ仕事をしている事にはちょっと納得がいかないが・・・まあそれはさておき、じゃあ何故ルティアは落ち込んでいるのだろう。ある程度というか大半の暴漢は始末してくれているし、それでも十分に凄いと思うんだが。
「中途半端・・・アキの影失格・・・」
「そ、そうか?」
「ん。」
どうやら完全に暴漢を始末出来ず、アキに迷惑をかけたのがルティア的には許せないようだ。何とも完璧主義者のルティアらしい。
「いやいや、そんな事ないぞ?ルティアはよくやってくれた。」
「ん・・・」
まだルティアが落ち込んでいるのでもっと慰めてやりたいところだが・・・それよりも目の前の連中をどうにかするのが先だろう。まあこいつらについては今更説明するまでもない。見ての通りだ。
「そこの美人のねーちゃん達をおいてけば命くらいは助けてやるぜ!!!」
「おい、それよりあのちっちゃい子どこから出て来たんだ?」
「そんなのどうでもいいだろ!俺はあの子にするぜ!グフッ!俺が先だからな!」
「ああ?相変わらずの幼女趣味かよ。好きにしろ。俺はあの猫がいい。」
「ちっ、幼女に年増がいいとは・・・相変わらず趣味わりぃやつらだ。」
「うるせえ。喧嘩せずにすむだろうが。」
「クク、まあ確かにな。俺はあの金髪美人ちゃんにするか・・・」
あ・・・こいつらは今、言ってはならない事を言った。
このままだとルティアとエリザがキレる。絶対にキレる。
「アキ君。ちょっとあいつらぶち殺してくるわ。」
「ん、ころす!」
違った。もうキレてた。
とりあえず飛び掛かっていきそうな2人を抑える。
「ふしゃー!アキ君!離しにゃさい!」
「滅殺!」
「やめなさい。」
「だって!としにゃ!としにゃって言ったの!!!」
「幼女じゃない!私はぼんきゅっぼんのレディ!」
「あー、はいはい、そうだな。」
エリザ、微妙に言葉が猫になってるぞ。なんだそれは、可愛いじゃないか。あとルティア、さらっと嘘を吐くな。それはただの願望だ。まあ凹んでいたルティアが怒りで復活したからいいけど。
「さて、どうするかな・・・?」
こうしてアキが止めている限りエリザとルティアが突っ走る事はないが・・・このままいつまでも睨み合ってるわけにもいかない。まあ連中を始末する事は決定だが、どう動くのがいいだろうか?