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エレンは走る。皆から抜け出して1人で必死に走る。アキの元へ走る。
「間に合え、間に合え、間に合え。」
エレンは呟きつつ、アキから貰った短剣を握りしめて走る。
アキの事は気に入っている。いや、大好きだ。いつも自分の事を構ってくれる。遊ばれたりはするけどいつも優しくて、いつも側にいてくれる。エレンの目が綺麗って褒めてくれるアキが大好きだ。
でも1つだけ気に入らない事があった。それは弱い事。戦闘が弱いのは別にいい、エレンが鍛えるから別にどうでもよかった。ただ街中で何を言われてもヘラヘラと笑って怒らないアキは弱い男だと思った。怒らないなんて情けないって思った。
「でも違った。アキは強いのね。」
エレンは間違っていた。弱くてヘラヘラしていたわけじゃない。本当にどうでもよかったんだ。エレン達に嫌われてないならそれでよかった、他人はどうでもよかった。それを聞いた時エレンは自分が情けなかった。アキは強い。強いと知った。周りから馬鹿にされて、罵られて、軽蔑されても気にしない強い人だと知った。
「私なんかよりずっと強い。ずっとずっと。」
弱いのは自分の方だ。馬鹿にされたら怒って、食ってかかって、気にしないなんて出来なかった。いつも自分の為に怒ってばっかりだった気がする。
「そうだったわ、アキは私達の為にだけ……本気で怒ってた。」
その事を今思い出すなんてほんと馬鹿だ。エレンは自分が馬鹿で馬鹿で悔しかった。でもきっとアキにそれを言ったら「そんなことない」と言って優しく撫でてくれるだろう。
もうなんでもいい、余計な事を考えるのは辞めた。大好きなアキを助けて思いっきり抱き着いてやるんだから。
「見えた!」
エレンの視線の少し先に数人の人影が見える。間違いなくあれだろう。エレンは最後の力を振り絞って地面を蹴る。
「アキ、アキ、アキー!」




