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結局ミルナ達の喧嘩が終わるまで30分程かかった。まあ喧嘩と言ってもいつものじゃれ合いだ。喧嘩するほど仲がいいという奴だな。
「うんうん、みんな仲良しで俺は嬉しいよ。」
「アキさん、目が腐ってるのでありませんか。私達のどこが仲良しに見えるのですか。」
やれやれとアリアが溜息交じりに呟く。
うん、わかってる。そもそもこの子達が仲良く出来るとは未来永劫思えない。そんな事はわかってる。だけどその言い方は何かムカつく。それに目が腐ってるはさすがに酷くないか?
「まあ・・・いつも言ってるけど程々にな。」
「わかってますわ。ここにいる誰か1人が欠けてもアキさんは悲しみますもの。みんなそんな事は当然わかってますわ。」
ミルナがくすくすと笑う。
まあ仲良くはないが、お互いがお互いを「アキの大事な人」だと認め合っていると言ったところだろう。それならもう少し歩み寄って友達くらいして欲しい物だ。
「なら仲良く・・・」
「それは無理ですわ。」
当然と言わんばかりの顔でアキの言葉を遮るミルナ。
やっぱり仲良くするのは即答レベルで無理らしい。
「それよりアキさん。」
「どうした、ベル?」
「お金の調達方法は決まりましたが・・・ユキさんへの説明はどうするのです?」
「ああ、そっちか。」
ユキに正直に話すのか、適当に誤魔化すのか決めてなかったな。ただこっちについては正直考えるまでもない。アキの中ではもう既に決まっている。
「正直に話して謝るよ。怒られるだろうけど、変に隠すよりはいいだろう。」
ユキに隠して嘘がバレた時の方が最悪だ。せっかく築いた信頼関係がなくなってしまう。それなら正直に話して怒られた方がましだろう。
「ふふ、そうですね。それにユキさんなら『其方だから特別に許すわ、でも今回だけだから!』とか言って許してくれると思います。」
そうだろうか?さすがにそう簡単に許してはくれないと思うが。強かなユキの事だ、見返りに何かしらの手伝いくらいはさせられる気がする。
「無理だろ。流石に何かしらの要求はしてくると思うぞ?」
「・・・」
「どうした?そんなきょとんとした顔をして?」
「いえ・・・アキさんってそう言えば馬鹿でしたね。」
ベルが呆れた表情を浮かべている。というか何故悪口を言われたんだろう。オブラートに包むどころか、面と向かって馬鹿とか言われたんだが。
「酷くない?」
「酷くないです。馬鹿に馬鹿って言っただけです。そんな事よりこれからどうするんですか。剣の製作依頼?それともユキさんに謝罪に行きますか?」
そんな事とか軽く流れたんだが。なんか納得いかない。
「剣の製作依頼はもうした。だからこの後受け取りにいくよ。その後シズに渡しに行こう。多分夕方までには全部終わるだろうから、夜にユキのところへ謝りに行く。そうすれば今日1日で全部片付くだろ。」
まだ昼前だし、時間的にも余裕がある。
「あら?アキさん、拗ねてます?」
「いや別に。」
「ふふ、お可愛い事。私に馬鹿って言われたから拗ねてるんですね?」
くすくすと楽しそうに笑うベル。
鬱陶しい。ベルが執拗にアキを弄ってくる。いつもいじめるからその仕返しか?まあ自業自得だと思わなくもないが・・・ベルの弄りを甘んじて受け入れるのはなんか癪だ。
「ふむ、久々にアレをやるか・・・」
「・・・え?」
――フサァ・・・
そうアレと言ったらアレだ。ベルの下着召喚。
これをやるのは実に久々だ。転送・召喚魔法を覚えた頃はしょっちゅうやっていたのに、最近はすっかりご無沙汰になっていた。初心忘れるべからず。
「ちょ!?いきなり何してくれてるんですか!!!」