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「それで、結局どうするんです?」
ベルフィオーレから貨幣や貴金属は持ち出さず、尚且つシズやユキに出来る限り迷惑をかけないようにして借りた金を返す。つまり残る手としてはユーフレインで金策だ。だがハンター依頼など、時間がかかる物は却下。そうなるとどうするかだが・・・もちろん案はある。
「うん、シズに剣を売ろう。シズのお父さんやお兄さんが俺の剣を欲しがっていたし、買ってもらえばいい。いくらでも出すって言ってたしな。」
シズの家はお金持ちだし、多少ふっかけても大丈夫だろう。そもそも武器の値段なんて言い値だ。
「なるほど!さすがアキさんです!・・・ってあれ?でもそれだとこちらの世界の物を渡す事になるのでは・・・?」
ベルが首を傾げる。
確かにその通りだ。ベルの指摘は間違っていない。
「だから剣の素材となる鉄とかをシズに提供して貰おうと思ってる。それにシズには既に一振りあげてるし、その分の素材もガランにくれてやればプラマイゼロでしょ?」
鉄ならそれほど高価な貴金属でもない。まあガランが打っている剣に使っている鉄はアキが提供しており、その辺の鉄とはそもそも純度が違うのだが・・・所詮鉄は鉄。純度は違えど物は一緒だ。ユーフレインとベルフィオーレで同等の量をやり取りするのであれば世界への影響はさほどないだろう。
「素晴らしいです!さすがアキさんです!」
膝の上に居るベルがべた褒めしながら頬ずりしてくる。大袈裟な反応だ・・・というかなんだこれ。明らかにわざとべた褒めしてアキに甘えてるだけなんだが。
「だから普通に甘えろよ。」
「だ、だって恥ずかしいもん・・・」
プイっとそっぽを向くベル。しかしそれよりもベルがイチャついてくるせいでミルナ達の殺気がやばい。今にも剣を抜いて斬りかかって来そうな勢いだ。まあアキに対してではなくベルに対してだが。
「ミルナ、目が怖いぞ。」
「うふふ、アキさんは黙っていてくださいませ?」
「ソフィー、殺気を放つな。」
「アキさん、どいてください。その王女、殺せないです。」
「エレン、リオナ?」
「うるさいわね!女の戦いに口を挟まないでよね!」
「そうだよ、私は悲しいよ?」
なるほど。ベルが調子に乗っているのが気に入らないらしい。ミルナ達4人だけでなく、アリアやセシルもゴミを見るような目でベルを見ているしな。
「セシル、一応聞くけど・・・」
「無駄です。そこのクソ虫、最近調子に乗り過ぎなんです。」
なんともまあ王女に対して酷い言い草だ。
「しかし俺の兎・・・いつのまにそんな口悪くなったんだ。悲しいぞ?」
「あ・・・!そ、その、違うんです・・・!これは・・・つい!あとアキさんの兎ではありません!!!」
どんなに狼狽していても「兎」の部分だけはちゃんと否定するセシル。
「そうですよ、セシルさん。せめてゴミ掃除と言った方がよろしいかと。」
アリアよ、言ってる事はほとんど一緒だ。というかセシルの口が悪くなったのは絶対お前のせいだろ。
「エリザ、エリス、ルティアも何か一言。」
せっかくだから残りの3人にも聞いてみよう。
「その子には『教育』が必要だとおねーさんは思うわ。」
「そうそう!いつもいつもずるいのだ!」
「ん!滅殺っ!」
やはりこの3人も最近のベルの言動や行動には不満があるらしい。ただルティアだけは言っている事が物騒過ぎるが。
しかしこの状況をよくよく考えると、ベルとアキがイチャイチャしているからミルナ達の機嫌悪いだけなんだよな。
なんというか・・・もの凄くしょうもうない。
フォローしようかとも思ったけど、もう好きにやらせた方がいい気がしてきた。それにうちの子達はアキが何を言っても止まらない気がする。
「ベル、弁明あれば言うといいぞ。多分最後のチャンスだ。」
「アキさん!私、怖いです!いじめられてます!助けてください・・・!!」
ベルがおよよとアキの胸に顔を埋めてくる。
うん、わざとらしい。ミルナ達に喧嘩を売ってるとしか思えない。
「よいしょ。」
とりあえずベルを膝から下ろし、ミルナ達の前にずいっと差し出す。
「・・・あれ?アキさん?」
「この王女はミルナ達の好きにしていいぞ。」
「ちょ、ちょっと!?アキさん!?なにあっさり見捨ててるんですか!私はあなたの大切な妻ですよ!ちゃんと助けてください!!」
無理。というかもう遅い。
「諦めろ、ベル。それよりあっちを見た方が良いぞ。」
「・・・え?」
アキに言われて恐る恐る後ろを振り返るベル。
「うふふ、この期に及んでアキさんに助けを求めようとするとはいい度胸ですわね?同じ『妻』としてお仕置きですわ!!」
「ミ、ミルナさん?目が・・・本気ですよ?」
うーん、怖い。あの目をしたミルナ達にはアキも逆らえない。
「ア、アキさん!!!」
「無理だ、諦めろ。」
「そんなああああ!?」