表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第二十八章 国家会議に向けて②
632/1143

3

「それでお金の事だけど・・・」


 アキが取れる行動は2つ。1つはこっそり国庫に金を戻し、ユキを上手く誤魔化す。2つ目はユキに正直に話し、金を返す。まあどちらにするにせよ、まずは金を用意するところからだ。ただベルフィオーレの通貨はいくらでも用意できるが、ユーフレインの通貨は持ち合わせがない。つまり何かしらの金策をする必要がある。もしくは金や銀といった換金できるような貴金属を用意するかだ。


「そういや・・・ルティア。」

「ん?なに?」


 アキが呼ぶと、スッと姿を見せるルティア。


「ユーフレインも国ごとに通貨が違ったりするのか?」


 ベルフィオーレは四ヶ国とも通貨は違う。エスぺラルド金貨、ミレー金貨・・・と国が発行しているそれぞれの貨幣がある。だが基本的に貨幣価値が1:1なので、エスぺラルド金貨1枚とミレー金貨1枚の価値は同じなのだ。だからどこの国へ行っても、エスぺラルド金貨のままで買い物が出来る。つまり両替する必要がない。というか流通している金貨は各国のものが混ざりあっていて、もはや区別する必要すらなくなっている。


 ユーフレインではどうなのだろうか。


「ん、違う。」

「ちなみに貨幣価値は?」

「ユーフレインはそれも違う。」

「なるほど。つまりエヴァグリーン金貨1枚が他国の金貨では5枚だったりするみたいな事なんだよな?」

「そう。」


 ルティア曰く、ユーフレインでは貨幣に使われている金、銀、銅の純度が各国で違うらしい。それによって各国の貨幣価値が決まるのだとか。


「わかった、さすがルティアだ。ありがとな。」

「ん!」

「アキさん、今の話と今回の件に何の関係が?」


 ベルが首を傾げる。


「ユキに金を返すのに他国の国庫から拝借するのもありかなと?」

「こら!!それ本末転倒でしょう!同じことの繰り返しじゃないですか!!!」


 また怒られた。どうやら他国の国庫から金を拝借してユキに返すと言う案は駄目らしい。まあこれは最終手段なのでやるつもりはなかったが。


「冗談だ、わかってる。ベル、ちなみにエスぺラルド金貨の純度は?」

「え、当然100%ですけど・・・」


 まあそうだろう。そしてエスぺラルドだけでなく、ミレー、サルマリア、リオレンドも同じく100%のはず。そうでなければ貨幣価値が1:1:になったりしない。


「純度100%なら貴金属としてこっちの金貨をユーフレインに持って行くって手もあるんだよね。」


 エヴァグリーン王国の貨幣はベルフィオーレの約10倍の価値がある。エスぺラルド金貨1枚=エヴァグリーン金貨10枚。つまりエヴァグリーン金貨の純度は約10%程度と考えられる。ベルフィオーレの金貨であればアキはいくらでも用意できるし、悪くない案ではある。


「確かに・・・」

「でもそれをするとこちらの世界の金貨の流通量が減るよね・・・全体からしたら微々たるものかもしれないけどさ。」


 ただあまり好ましいやり方ではないだろう。


「そうですね・・・貨幣の流通量は各国でそれぞれ管理してるので・・・」

「だよね。まあ会議で各国にお願いすればなんとかなりそうな気もするけど・・・俺が屋敷買う為に使った金だしね。」


 そもそも流通量を変化させたくない。そう言う理由でベルフィオーレの貴金属を持って行くのも却下だ。ベルフィオーレの物を何も考えずユーフレインへと移動させるのはあまり好ましくない。まあこの程度の量で何かしらの変化が両世界に起きるとは考えにくいが、何が世界に悪影響を及ぼすかの因果関係が明確に分からない以上、不用意にやるべきではない。そう言う意味ではアキ達自信も「紛れ」と言えなくもないが・・・これはまあしょうがないだろう。


「ではやはりユーフレインでお金を稼ぐしかないですよね?ハンター依頼をして稼ぎますか?私はお手伝いできませんが・・・」

「んー・・・それでもいいけど、時間がかかり過ぎるのがネックなんだよね。」


 いくらハンターIVの依頼が高額とはいえ、そんな高難易度の依頼がポンポンあるわけではない。アキが屋敷を買う為に使った金を稼ぐには最低でも1~2ヶ月はかかるだろう。ユキに理由を説明すればそのくらい待ってはくれそうではあるが・・・最善手とは正直言い難い。


「ではどうします?」

「まあユキやシズに『お金欲しい』って言えばくれる気がするんだよね。」

「そうですね、アキさんが頼めば普通にくれそうです。私ならいくらでもあげちゃいますもん。」


 確かにアキが頼めばベルなら絶対に断らない。むしろいくらでも用意してくれるだろう。というか国ごと差し出してきそうで怖い。


「だけどこれもいい案とは言えない。俺の都合で2人に迷惑かけられないしね。」

「そうですかね?私の国に魔獣を嗾けてきて多大なる迷惑をかけてくれたんですから・・・私としては慰謝料替わりにそれくらい要求してもいい気がしますけど。」


 ベルの言う事は一理ある。だがそれはユキやシズがやった事ではない。その責任を2人に追及するのはちょっと道理が通らないだろう。


「それにユーフレインがやったからといって、ベルフィオーレが同じ事をしていい理由にはならないだろ?どこかで負の連鎖を断ち切らないと歴史は繰り返すと思うんだよね。だから穏便に済む方法がいいんだけどね・・・」

「えっと・・・そんなスケールの話でしょうか?ただの金銭のやり取りでは?」


 話が壮大過ぎるのではとベルが首を傾げる。


「ほら、何が怨恨の切欠になるかわからないし。」

「まあアキさんがそう言うのなら私は従うだけですけど・・・。それで、結局どうするんです?」

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ