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異世界の観察者  作者: 天霧 翔
第四章 殺意
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8

 エレン達が冒険者協会を飛び出した頃、レオの想像通りアキは10人程度の連中に門の外に連れてこられていた。


「てめえ、覚悟はできてんだろうな!」


 1人の男が叫ぶ。

 何もしてないんだけどなとアキは思う。


「何かしたっけ?」


 事実、ミルナ達と一緒にいて自分の事をしていただけで彼らに何かをした覚えなどない。


「なめてんじゃねーぞ。弱い癖にミルナミア達と一緒にいるだろうが!」


 やっぱりそれしかないかとアキは心の中で苦笑する。ヘイトが十分に高まっていたことはわかっていたし、1人で歩けば絡まれるのもわかっていた。しかし本当に実行するとは後先を考えないどうしようもない連中だ。確かに美女と歩いているような男がいたら羨むだろう。でも普通は何かをしようと思わない。何故ならその人には彼女が気に入る何かがあって、自分には無いだけだ。何かしたところで何も変わらない。ボコボコにしたからその女が手に入るのか?入るわけがない。普通の人間ならわかるはず。


「一緒に居たっていっても、彼女達がそう決めたんだよ。」

「うるせえ、ソフィアルナちゃんは俺のとこにいるべきなんだよ!」


 別の男が叫ぶ。


 今こうなっている以上、彼らの思考なんて考えてもしょうがない。ミルナ達は必ず来る。それまで話を長引かせ、死なないようにすることが最優先事項だ。


「そうなんだ、で、ちなみに俺はこれから何をされるの?」

「お前はいまから俺らに嬲られてから殺されるんだよ!」


 なるほど、すぐに殺す気はないらしい。やはり多少いたぶって気持ちをすっきりさせてから殺したいのだろう。面倒ごとを避けるなら今すぐに殺すべきなのにと思うアキ。だが嬲って貰えるのであれば、アキとしてはその方が都合がいい。うちの子達が駆けつけるまでの時間稼ぎが出来る。


「でも俺を殺したとして、ソフィー達は君達のものになるのかな?」

「ああん?喧嘩売ってんのか!」

「売ってるのはそっちでしょう?」

「てめえ!」


 いけない、つい売り言葉に買い言葉で火に油を注いでしまった。


「いや、悪い。単純に気になってね。」


 アキの疑問に今度は別の男が答える。


「なるに決まっているだろ!俺らが目を覚まさせてやるんだよ!」


 なるわけないだろ、と心の中で突っ込むアキ。そんな事で女性が手に入るんなら世の中常に世紀末だ。


「やっぱり強い男じゃないとだめなのか。」

「当たり前だろ!覚悟しやがれ!いつもミルナミア達といちゃいちゃしやがって……許さねえ。」


 逆恨みもいいとこだ。まあそう思うように仕向けたのは自分なのだが。とりあえず適当な会話をギリギリまで続ける為、アキはのらりくらりと会話をする。


 同時にアキは彼らを観察する。10人中8人の実力はたいしたことはないだろう。おそらくDランク魔獣レベルだ。問題は残りの2人。後ろに立っている長髪の男はC、その横に立っている禿の男はBからAくらいの実力者だと思われる。Dランクの連中は短剣が3、剣が2、大剣が3。Cランクの長髪は大剣。一番の実力者である禿は短剣と剣の二刀流ということが武器からわかる。飛び道具がないのは助かるなと思うアキ。前衛職しかいないのであれば、全員がまとめてかかってくることはあり得ない。おそらく1人1人が交互に攻撃してくるだろう。


 それに「アキの事を嬲る」と言っていたので、まずは低ランクの数人で攻撃してくるはずだ。そしてやばそうなときは後ろの高ランクが出てくる手筈だろう。昨日ミルナ達と手合わせをしたのは実はこの為だ。Aランク4人相手だったからいい予行練習になった。


 とりあえずアキの実力を見せるのは不味い。最初から本気で来られたらすぐに体力切れになり殺される。いくらミルナ達Aランク4人の攻撃を防御出来ると言っても、肝心の攻撃がアキには出来ない。つまりこの連中に対しても防御は出来るだろう。ただ倒す事が出来ない。結局アキが助かるにはミルナ達の到着を待つしかない。体力切れになる前にミルナ達が到着すればアキの勝ち。先に体力が切れたらアキの負けだ。


 だからどれだけ彼らに時間を使わせるかが勝負の分かれ目になる。アキをいたぶってくれるのであれば、彼らに悟られない程度に攻撃阻害魔法を使いつつ致命傷をさけ、防御しつつもわざと攻撃を食らう。防御に必死に専念しているように演技すれば、弱いと屑だと判断してある程度の時間は嬲ってくれるだろう。アキはそう予測する。なら彼らが自分で遊ぶのに飽きないよう必死に演技してやろう。相手が自分に望む姿を演技するのは得意だ。地球で18年間もやって来た。


「おい、もうおしゃべりはいいだろ、やろうぜ。もう我慢できねえ。」

「えー。せっかくだしもう少し話そうよ。」

「うるせえ!立場わかってんのか!」


 そろそろ会話で引っ張るのも限界か。


「わかってるよ、イチャイチャしてるのが羨ましいんだろ。ミルナ達は可愛いしね、気持ちいいぞ?」


 敢えて逆上させて攻撃を単調にさせる。


「てめえ!殺す!」

「おい、まずは遊んでからだ。」


 男達が武器を抜く。後ろに居る高ランクは動かない。まずは低ランク8人のようだ。アキも短剣を抜く。これはエレンの予備の短剣だ。彼女から借りっぱなしになっている。ガランから今日受け取ったアキ専用の武器である太刀や脇差はおいてきた。今ここで使うつもりはない。


 1人の短剣持ちが切りかかってくる。アキは水弾で少しだけ牽制しつつ軌道をずらし、短剣で防御する。この程度は余裕だが、表情は必死に防御している振りをする。


「くっ……」

「おいおいあの程度の攻撃を防ぐのがやっとかよ。ぷっ、だせえ。」


 男たちが笑う。予定通り、侮ってくれているようだ。アキは風魔法で体の周りに空気の壁を展開する。これで当たったとしても威力はかなり落ちるので致命傷にはなりにくい。あとは集中力を途切れさせずに水弾と短剣で防御に徹するのみ。


 それから15分程、アキは必死に防御する振りを繰り返す。時には転んだり、苦しんだり、かすり傷を負って痛がったりして相手にいたぶっているという感覚を与える。おかげで攻撃は単調だし、集中力や体力もたいして使っていない。


「ぷっ、見ろよ泥だらけだぜ。こいつ。」

「マジ弱え、なんでこんな奴にソフィアルナちゃんが懐いてんだよ!」


 このままいけばいいんだが、そろそろ飽きてくるはずだ。そうなると多分本気で殺しに来る。そこからが勝負だ。


「もうよくね?さっさと殺してミルナミア達に報告しようぜ。きっと喜んでくれるぜ!」

「そうだな、そろそろマジで殺るか。」


 男たちの剣先の雰囲気が変わった気がした。ミルナ達はあと15分はかかるだろう。ここから15分持たせないといけない。ある程度魔法がばれてもいい、とりあえず防げ。あと15分。


「死ね!」

「おらああ!」


 2人が同時に斬りかかってくる。エレンに比べればゴミのように遅い。アキは水弾を本気で放ち、軌道と攻撃のタイミング大きく変える。その間に後ろに飛び、攻撃を回避。アキが避けたのを見て、別の方向から1人突進してくる。剣筋を見切り短剣と風魔法で軽い壁を作り防御。相手には短剣で防いだように見えるはずだ。前にエレンと手合わせした時に使った技だ。だが休む間もなく次がくる。回避、防御、回避。それをひたすら繰り返す。魔素の補充である呼吸を忘れない様に。躱す。防ぐ。


 さらに10分程経った頃、ついに業を煮やした高ランク冒険者2人が叫ぶ。


「てめーら、遊んでもいい加減にしろや!さっさと殺せ!」

「やってるんだけどこいつが無駄にしぶといんだよ!」

「じゃあ俺らにやらせろや、お前らは邪魔だから下がってろ。」

「あ、ああ。わかった。」


 さて、ここが最後だ。この長髪と禿の攻撃を5分ちょっといなせればミルナ達が来てくれるはずだ。5分か……きついな。エレンとレオ相手に5分持たないからな。よくて2,3分。少し会話で引き延ばせないものか。


「あんた達は強いのか?」

「後ろの連中に比べればな。」

「参考までにランク教えてくれよ。」

「ふん、こいつがC。俺がAだ。」


 CとAらしい。Cは大した問題じゃない。問題はやはり禿のほうだ。Aランク。ミルナ達以外のAランクを見るのは初めてだし今後の参考に出来ればと思うのだが、この禿はどの程度の実力なのだろうか。


「Aってミルナ達しかしらないんだけど、おっさんの方が強いのか?」

「当たり前だ!女に負けられるかよ!」


 大した事ないなと思うアキ。おそらく実力はミルナ達と同等かそれ以下。そうでなければああいう発言はしないはず。「わからないな、同じくらいじゃないか」などと言われたら多分間違いなく強い。ただどのみちAランクに変わりはないので油断はできない。


「すぐ終わらせてやるよ。覚悟しろよ。」


 そういって禿は剣を抜く。短剣は使わないらしい。長髪も慌てて自分の大剣を構える。アキの最後の攻防が始まる。

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